公開メモ DXM 1977 ヒストリエ

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オプションという資源

2012-05-22 11:56:00 | ドラッカー
 確実性の裏側は不確実性。その確率和は1となる。
 閉じた世界ならばこの数式は正しい。しかし現実社会は閉じていない。つまりリスクは母集団の確率分布がわかっていて計算できるが不確実性は計算できない。だから予想と予想外を足しても1にはならない。
研究開発の秘密/確実性の裏側は不確実性。その和は1となる。閉じた世界ならばこの数式は正しい。しかし現実世界は閉じていない。この秘密に気づけば、あらゆるリスク=不確実性に投資できる権利(オプション)を持ってさえいれば、社会は必ず成長できる。だから研究投資は必要なのです。


 この秘密に気づけば、あらゆる不確実性に投票(あるいは投資)できる権利(オプション)を持ってさえいれば、必ず成長できる。
 フランク・ナイトはこの不確実ビジョンを個々人の決断に関して提出した先駆者である。このビジョンは期待効用仮説などといわれる基礎的効用関数で計算できる世界に限らず、応用できる。
 あり得ないほど稀と思われるが、その判断の常識背景が歪んでいる場合は、ビジョンに基づくオプションは期待値とは関係なく資源と見なせる。

 ベンチャーキャピタルの本来の機能はこのような通常あり得ない世界、新技術の勝利、新営業方法の勝利、新理論の勝利、新社会の勝利、新国家の勝利に投資オプションを集める技能者集団でなければならない。これは危険回避者や危険愛好者に依存しない経済活動とはいえない職能活動である。

 だからベンチャーキャピタルは本来銀行や保険会社が手を出す金融機関の世界ではない。金融は集められた不確実性の集合にオプションをもつだけでよい(実際に投資することもあるけれどもキャピタルコール方式もある)。そのような分業が本来のベンチャーキャピタルとおもう。

 さてベンチャーキャピタルの腐った事業モデルはさておき、今の日本の状況は目に見えないオプション資源を失っている危機にある。この危機に痛みを感じる人はいない。いや痛みを感じる日本人はまだ生まれてもいない。

 ただ過去の惰性による成果に依存していたり、既存法を変えずに無数の似た様な法律や政令で国民の首を絞め、基礎科学には予算を付けず、インターネットの時代に一般医薬品の通信販売を禁止している(高裁は国を敗訴にしたが、国は上告した)など、法を補う意義をはみ出した通達がまかり通る。弱者(低所得者、身体に不自由のある人、過去の経緯で不利な扱いを受けた人々)や僻地(半島の先や山間部、国道から遠いところ)をかざせば予算が降ってくる。産業政策はと言えば、事実上の公務員化策は競争力の無い産業に行き渡っている。税金でリストラし損切りを促進していることで雇用が守られることが、競争社会からの逃避をすすめている。扶養家族だけが増えても当面は幸せであるかの様な幻想をもたらしたのは国富の浪費、過去の遺産で生活するモラールの低下に他ならない。

そういうこれまでの日本のシステムがいったん事故があればどうしようもない場所に大飯に原発をもたらした。

それ以外の国民は決して少数ではない。

政治はまだ生まれていない日本国民を思う事無く、いまここにいる大多数の国民を眠らせ、重大な主人公の交代を隠そうとする。

官僚のなすままにわからない国語を駆使した法文をつくらせ、官僚にしかわからない抜け穴を周到に用意しながら国民を重要な変化から遠ざけてきた。

 よって「まじめな国民」がコンプライアンス遵守の不確実に縛られている。このせいで、これまでにない仕組みや、あたらしくて効率の良い仕組みを始められずに国民の判断が行き詰まっている。一言で言えば日本が生み出した過去の統治システムが良循環投資を生み出さなくなっている。

 しかしこういう目に見えない資源喪失の危機の痛みはだれもを感じていない。日本国の一番の危機はこの資源喪失によって不利益を被るプレーヤー(利害関係者、国益受益者)がいないこと。不確実性を国益ととらえ、その機会喪失を基本法で保護する事で受益者(公的免許者)を創出出来れば日本は変わる。日本の将来のために不確実性のエンクロージャー、誰も困らない誰も痛まない独占を発明しようではないか。
 
++++++++Wikipedia+++++++++
・ナイトの経済学における最大の業績は、著書『Risk, Uncertainty and Profit(危険・不確実性および利潤)』である。ナイトは確率によって予測できる「リスク」と、確率的事象ではない「不確実性」とを明確に区別し、「ナイトの不確実性」と呼ばれる概念を構築した。
ナイトは、不確定な状況を3つのタイプに分類した。
第1のタイプは「先験的確率」である。これは例えば「2つのサイコロを同時に投げるとき、目の和が7になる確率」というように、数学的な組み合わせ理論に基づく確率である。
第2のタイプは「統計的確率」である。これは例えば男女別・年齢別の「平均余命」のように、経験データに基づく確率である。
そして第3のタイプは「推定」である。このタイプの最大の特徴は、第1や第2のタイプと異なり、確率形成の基礎となるべき状態の特定と分類が不可能なことである。さらに、推定の基礎となる状況が1回限りで特異であり、大数の法則が成立しない。ナイトは推定の良き例証として企業の意思決定を挙げている。企業が直面する不確定状況は、数学的な先験的確率でもなく、経験的な統計的確率でもない、先験的にも統計的にも確率を与えることができない推定であると主張した。
そしてナイトは完全競争の下では不確実性を排除することはできないと主張し、その不確実性に対処する経営者への報酬として、利潤を基礎付けた。

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