シナプスがグルタミン酸で活性化され、その直後の狭い時間枠でドーパミンが作用した時のみスパインの頭部増大が起き、シナプス結合を強化する。これが学習です。そのための時間枠が人を説得するコツです。日本人はD2受容体が備わっているので、面倒くさい情報をインプットして時間外に報酬を与える下手なやり方でもなんとかなるが、普通はすぐに報酬を明示しない限り説得は失敗する。
ところで、あなたが褒められたと記憶する一番古い体験はなんですか?二番目はなんでしたか?思い出せましたか?きっとそれは今のあなたのセルフイメージになんらかの影響をこれまでずっと与え続けてきたと思います。
不思議だけどそのセルフイメージのとおりのあなたが作られてゆきます。他者との関係もそのようにできています。引き寄せてしまうのです。
ドーパミン情報がD1、D2受容体の両者を伝わって、報酬量の期待がインセンティブ効果としてやる気を高め、報酬の時間待ちはインセンティブ効果を低減してやる気を下げる
労力が必要なときには、D2受容体を介してドーパミンが伝わり、コスト感を抑えてやる気を保つ
人誑(たら)しという人物評価は時に悪く言われますが、人を説得して動かすというのは学習行動と同じであるということを知る人は少ない。見知らぬ相手を意のままに動かすのは催眠術ではないのです。むしろこれまで以上に覚醒した人間が主体的に行動を選択するのです。相手の価値基準を学習行動の原則を通じて転換するのが交渉です。
結論を先に言うと、大切なことは【感動という報酬】を学習に連携させるということです。感動という報酬はなんだろうと考えてみてください。何かを差し上げるということですか?プレゼントは名前を覚えてもらうくらいなら効果的かも知れません。違うんです。どんな相手でも必ず喜ぶことをします。それは【リスペクト】です。教えてあげる、あるいは価値観を転換させる相手へのリスペクトです。この簡単なことが実は最も難しいのです。明らかに相手は目覚めてはいない。しかし目覚めた相手を想像して誠実に臨むのです。なあーんだ😮💨とお思いですね。【リスペクト】実はこれが戦国時代、茶の湯の極意なのです。
よく考えみてください。あなたが先生と呼ばれた人だとしても、実際あなたはどのくらいリスペクトされた実感を体感していますか?多くの人はどんな高位の地位になっても自己重要感の充足に飢えているのです。それはなぜでしょう。人間偉くなるほど知識を持つほどに、個人ではなく肩書きで間接的に呼ばれ会話しています。周りくどく言われることはあっても、あなたを叱ることは全くありません。交渉において相手を否定するときのリスペクトは、つまり相手をうまく叱り、軌道修正させるということです。
通常組織を率いる偉い人に対しては常識人は言説の客観性を装いすぎて、インプットしたい知識だけが先行して、知識と連動した単純な感動であるAHA!『わたしのために言ってくれたのか』という感動を与えることを忘れています。リアルに生身で感動とリスペクトと学習の瞬間という三位一体を共有できなくなるのです。自己重要感の喪失理由がこれです。
これはどんな偉い人にも応用できる、否。偉い人だからこそ、このひとたらしというものは有効であり、ちゃんとした脳神経の科学をベースにしたシナプスの活性化とドーパミン刺激の連鎖の応用技術なのです。リスペクトと情報からもたらされる感動を同時に与えること(客観的には感銘)を忘れてはいけない。そのためにはこの交渉があなたの信念(客観的には確信)に基づくものであることをしっかり相手に伝える言語をもつことです。
一般に、学習が成立する際にはグルタミン酸を興奮性伝達物質とする神経細胞のシナプスの結合強度が変わる(シナプス可塑性)。東京大学大学院医学系研究科の河西春郎教授らの グループは、マウスの快楽中枢である側坐核において、グルタミン酸とドーパミンをそれぞれ独立に放出させ、シナプス可塑性に対するドーパミンの作用を調べた。すると、シナプスがグルタミン酸で活性化され、その直後の狭い時間枠でドーパミンが作用した時のみスパインの頭部増大が起き、シナプス結合を強化することが明らかになった。また、この時間枠は行動実験 において条件付けが成立するために、行動後に報酬を与えなければならない時間枠とほぼ一致した。
本研究により、行動の「条件付け」が起きる分子細胞機構が世界で初めて明らかとなった。
側坐核は、依存症、強迫性障害などと密接に関係するため、本成果は、精神疾患の理解・治療に新しい展望をもたらすと期待される。
スパインの頭部増大が起き、シナプス結合を強化するメカニズム