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ナノサイエンスとナノテクノロジー
名城大学教授
独立行政法人産業技術総合研究所ナノチューブ応用研究センター長
日本電気株式会社特別主席研究員
飯島 澄男
はじめに
自然科学は宇宙の創生から分子・原子さらに素粒子まで,限りなく大きな世界から,限りなく小さな世界を,興味の対象としています。近代科学が始まった20世紀の自然科学における偉大な発見は,DNAとトランジスタであることは広く受け入れられています。トランジスタによる電子・情報化社会の出現,またDNAによる遺伝子治療の実現など,われわれの社会生活に大きな貢献をし,同時に,自然科学・基礎研究の重要性を証明しています。
ナノサイエンスは,20世紀の終わる1980年代から台頭してきた新しい自然科学分野の一つで,文字通りナノメートル領域に関わる諸々の現象を研究対象とし,物理学,化学,物質科学,生物・医学などに関する学際領域の学問体系を指しています。ナノサイエンスの遂行に必要とする技術,またその工業的応用をナノテクノロジーと呼んでいます。ナノテクノロジーの発展とともに,ナノサイエンスの研究と理解が進み,両者は一体となって相乗的に発展しています。ナノサイエンスの研究から得られる成果や知見を基に,新しい産業創生が期待されるに至っています。この動きは日本のみならず世界規模の潮流になっています。
物質を構成する最小単位は,通常,原子ですが,原子を構成する究極の単位を追及していくと素粒子に至ります。素粒子物理学の理論研究では,小林・益川両教授が世界をリードする先駆的研究をされ,2008年のノーベル物理学賞に輝いたことは記憶に新しいところです。
ナノマテリアル
一般に,研究者の研究戦略として「極端な世界・環境」を想定することがしばしば検討されます。例えば,ある物体が,極限の超低温度,超高圧力,あるいは超高磁場下に置かれたとき,その物質の状態がどのように変わるか,などの研究です。同様に,通常の大きさの物体,例えば「金塊」を切り刻んで限りなく小さくすると,究極の大きさは金原子1個になります。そこに至る少し手前で,切り刻むことを止めますと,100個,1000個,10000個からなる金原子集団が得られます。これらの物体は大きさに換算すると「ナノメートル・サイズ」に相当します。ナノサイエンスでは,研究対象とする物体の大きさがナノメートル・サイズであることが特徴です。通常の物体の概念は,「肉眼で見る」ことができる大きさを指し,これを我々は「バルク」と呼んでいます。バルク物体は「数えきれない」ほどの原子から構成されている,といえます。エレクトロニクス・デバイスに使われる「ICチップ」は,その中には数百万個のトランジスタが組み込まれています。これらのトランジスタは肉眼で見ることができない大きさです。この「見えない」一つ一つのトランジスタでも,おそらく10の10乗個の原子からできております。ところが,ナノメートル・サイズの物体では,10の2~4乗個の原子集団ですから,ナノメートル・サイズの物体は,如何に小さな世界であるか想像できます。
物体がこの程度の大きさになると,バルクの物体では生じない特異な物理・化学現象が発現します。これを量子サイズ効果と呼んでいます。
1962年,久保亮五はナノメートル・サイズを有する物体は,バルクのものに比べ,電子エネルギー構造が,離散的になることを理論的に予測し,極微小物体(ナノクラスター)研究の面白さを紹介しました。その後,1980年代に入ると,ナノクラスター生成方法やナノメートル・サイズの「微細加工技術」が進歩し,いわゆる,量子細線や量子ドットを用いた,量子サイズ効果の実験検証がなされるようになりました。今日,この分野は,凝縮系物理学における興味ある研究対象とされ,ナノサイエンスの中心的研究課題となっています。
ナノマテリアルの観測手段―電子顕微鏡
さて,ナノサイエンスで課題となるナノクラスターを研究するためには,まず,それらのナノクラスターを作らなければなりません。その生成は微小になるほど難しくなり,物体によって作成方法を開発する必要があります。これに成功すればその研究の70%は終わった,と言っても過言ではありません。ちなみに,夜空を彩る「花火」の後に発生する煙は,主に金属酸化物ナノクラスターですが,その大きさは二桁近く大きいものです。ナノクラスターの生成に成功した後は,それらのナノクラスター構造体の「原子構造」,すなわち,原子や分子がどのようにつながっているか,を調べる必要があります。物質の特性を調べるためには,原子配列構造を正確に知ることが研究の第一歩です。DNAの分子構造解明にはX線回折法が用いられました。電子顕微鏡も物質構造を調べる有力な手段になっています。
電子顕微鏡は1932年にドイツのルスカによって発明されましたが,当初の電子顕微鏡の分解能は光学顕微鏡と大差はありませんでした。しかしながら,1970年代になると分解能が向上し,結晶物体を構成する個々の原子が直接捉えられるようになり,いわゆる「高分解能電子顕微鏡法」が確立します。実は,進講者の飯島は,この分野のパイオニアの一人でございまして,1970年に米国のアリゾナ州立大学に渡り,その開発で世界を先導してきた経歴をもっています。ナノクラスターの原子構造を調べるにはX線回折法は不十分で電子顕微鏡が唯一の研究手段ということになります。次に紹介する「カーボンナノチューブの発見」は電子顕微鏡の助け無しには得られませんでした。
最新の電子顕微鏡はさらに進化し,軽元素である炭素やボロン原子を見ることが可能になってきました。更に,個々の原子を識別する新しい元素分析技術も開発されています。
カーボンナノチューブ -新しい物質の創出
これまで,ナノサイエンスとナノクラスターについて概観してきました。
ここでは,現在,世界的に話題になっているカーボンナノチューブ(CNT)についてご紹介いたします。結論から申し上げますと,CNTは,1991年,当時,つくば市にある「NEC基礎研究所」で,高分解能電子顕微鏡を用いて材料科学の研究に従事していた飯島によって発見されました。このCNTは,現在,ナノサイエンスの研究で主役を演じており,世界中に大きなインパクトを与えています。また,これが引き金となって,更に新しいナノ物質が次々生み出されています。
炭素材料には,ダイヤモンド,炭,グラファイト(石墨)の3種類があります。いずれも天然に存在する物質です。CNTの基本構造はグラファイトで,炭素原子が「蜂の巣状」に配列したシートが,積み重なった結晶構造をもちます。その蜂の巣状シートを1枚だけ用意し,これを繋ぎ目がないように丸めて円筒形にしたものがCNTです。ただし,この直径は,細いものでは1ナノメートル前後になります。長さはいろいろですが数ミリメートルに達するものもあります。
このサイズになると,通常のグラファイトとは異なる物性を発現するようになります。例えば,グラファイトは電気をよく通し,「金属的」に振る舞いますが,CNTになると,シリコンのようにある条件のもとでは電気を通す「半導体」になります。その条件は,チューブの「太さ」と「らせん」構造の有無によって変わります。したがって,半導体のCNTを用いてトランジスタを作ることができ,その性能はシリコンより優れていることもすでに実証されています。
CNTは「しなやかな」材料であることも,その特徴の一つです。180度折り曲げても電気的特性にはほとんど変化が見られません。機械的強度,特に引っ張り強度が鋼鉄の10倍も優れていることもCNTの特徴です。半導体としなやかさを組み合わせると,「くしゃくしゃに折り曲げられる」フレッキシブル・エレクトロニクス・デバイスを作ることが可能になり,新しいエレクトロニクス・デバイスとして,世界中の企業で活発な研究開発が進められています。CNTは,他にもいろいろ優れた特性をもち,極めてユニークな材料であることがわかってきました。
同じ炭素材料でも,構造や形態の違いにより,特性が変わることが発見されたのは,CNTが初めてです。こうした特性の変化は,従来の物質科学に,全く新しい概念をもたらしたという点で,画期的な発見ということになります。
新発想による新物質創出
ここで,ナノサイエンスが注目されるようになった原因について考えてみます。物体をナノメートル・サイズにまで小さくすると,いろいろ面白い現象が現れることは,理論的に予測されていました。この予測を実験的に実証することが,大きな課題となっていました。例えば,シリコン産業で開発された「微細加工技術」をさらに推し進め,ナノメートル・サイズの構造体を作る試みが盛んに行われました。ところが,数々の本質的な技術の限界に遭遇し,なかなか突破することはできませんでした。
この限界を超えて,ナノ構造体生成に成功したのがCNTということになります。CNTの作成では,「微細加工技術」を全く使わずに,比較的容易にナノ構造体を作ることに成功してしまいました。最初の方法はアーク放電法です。2本の炭素電極の間でアーク放電を起こし,炭素を蒸発させて,再凝縮させる生成プロセスを調整して,CNTを生成するものです。炭素原子が「自ら」チューブ状に並ぶ,ということが新しい手法です。その後,レーザ蒸発法や炭化水素ガスの熱分解による方法などが開発されています。
微細加工技術による方法はトップダウン方式,われわれのCNT生成法はボトムアップ方式と呼んでいます。トップダウン方式の限界を乗り越える方法が,ボトムアップ方式ということになり,現在,ボトムアップ方式は,ナノサイエンスの研究には欠かせない技術となっています。
ナノ構造体では,構成原子の数が少ないので,全ての原子配列(原子の位置)を知ることができます。このことは,構造体のモデリングが容易になります。すなわち,凝縮系物理の最新理論とそのコンピュータシミュレーションにより,CNTの電気的特性やその他の物性を正確に予測することができるようになりました。理論と実験との対比から,ナノ構造体の理解が進み,同時に,理論自身の限界や精度についても議論が深まっています。理論と実験が相補的に発展し,結果として,凝縮系物理学に大きな発展があった,ということになります。新しい学問発展の一つの好例ということになります。
終わりに
カーボンナノチューブという新しい物質が発見され,いろいろな分野にインパクトを与えてきました。まず基礎科学の発展に大きな貢献がありました。物質構造の超微細化と新構造の創出による新しい物性の発現は,既存の物質科学に,全く新しい概念をもたらしました。ナノチューブの発見による新物質(ナノ構造物質)概念は,炭素物質に限らず他の物質においても多数発見され,ナノサイエンスの研究領域は益々拡大しています。
カーボンナノチューブの魅力は,基礎科学の分野に留まらずナノテクノロジーとして,フレッキシブル・エレクトロニクス,スーパー・キャパシター,バイオ・テクノロジーの分野ではDDS(薬物搬送体)など多岐に渡り,21世紀の新産業として大きな期待が寄せられています。
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