私の今という牢獄で述べた妄想に7次元が近いことに驚く。
60年以上経っても、いやもう70年経ったかもしれないが、柴田翔の「されど我らが日々」と同じ閉塞感をエリートが持っているという事実に日本人の限界を見たような気がする。
『岡田は肩をすくめた。
「じゃあ聞くけどさ、蔵野の思い描くエリートコースって何?」 蔵野は腕を組み、専門家っぽく眉をひそめて語る。
「今、来日で話題になってるジョン=ウィリスなんかは憧れるねえ。若くしてウィリス家の重要なポストにつき、世界中の財界人が彼に注目してるらしいじゃねえか」 岡田は呆れたような表情を浮かべる。
「彼はまあ、世界的な資産家の息子だからな」
「そこよ。結局、世の中は資本家が中心に回ってるのよ。俺たちみたいな労働者の子供は、頑張れば頑張るほどベルトコンベアの中心部に向かっちまう。理三に受かって人生逆転どころか、ますます身動きできなくなった気がしねえか?」』
幸村 百理男. 東大理三の悪魔 「東大理三の悪魔」シリーズ (p.13). Kindle 版.
「じゃあ聞くけどさ、蔵野の思い描くエリートコースって何?」 蔵野は腕を組み、専門家っぽく眉をひそめて語る。
「今、来日で話題になってるジョン=ウィリスなんかは憧れるねえ。若くしてウィリス家の重要なポストにつき、世界中の財界人が彼に注目してるらしいじゃねえか」 岡田は呆れたような表情を浮かべる。
「彼はまあ、世界的な資産家の息子だからな」
「そこよ。結局、世の中は資本家が中心に回ってるのよ。俺たちみたいな労働者の子供は、頑張れば頑張るほどベルトコンベアの中心部に向かっちまう。理三に受かって人生逆転どころか、ますます身動きできなくなった気がしねえか?」』
幸村 百理男. 東大理三の悪魔 「東大理三の悪魔」シリーズ (p.13). Kindle 版.
『僕はそろそろ我慢できなくなり、口を開いた。
「まあまあ、ここで不満を言ったって何も変わりやしないさ。資本家になりたきゃ、銀行から金を借りて事業を起こせばいいでしょ? それができないならベルトコンベアに乗り続けるしかない」
「ねえ、デザートにアイス食べない?」 岡田が提案した。僕と蔵野が肯くと、彼は呼び鈴のスイッチを押した。 蔵野の貧乏揺すりが激しくなった。
「銀行から大金を借りるってことは、失敗したら借金だけ残るってことだからなあ。簡単にはできねえな」 岡田は深く肯く。
「まあ、あれこれ考えちゃう人間に起業は難しいね。その点、ジョン=ウィリスは振り切ってる印象を受けるね。あの人は親の七光りがなくても意外と行けそうだよな」
「そうそう、俺が彼に惹かれる理由はそこよ。若いのに大物の雰囲気が漂ってんのよ」蔵野は腕を組んだ。
「振り切るってのが大事なんだよなあ。俺のリサーチによると、サイコパスかってくらい犠牲に無頓着な人間が事業で成功すんだよな」 店員がアイスを乗せた三つの皿を運んできた。岡田は何も言わずにそれを食べ始める。僕と蔵野も彼に続いた。 アイスを食べ終わり、蔵野が口を開いた。
「前回行った店に行こうぜ」 僕は首をすくめる。
「あの店は、お高いよ」
「ハハハ。そこは『元社会人様』が奢ろうじゃねえか」 蔵野はアルマーニの革ジャンを手に取った。』
「まあまあ、ここで不満を言ったって何も変わりやしないさ。資本家になりたきゃ、銀行から金を借りて事業を起こせばいいでしょ? それができないならベルトコンベアに乗り続けるしかない」
「ねえ、デザートにアイス食べない?」 岡田が提案した。僕と蔵野が肯くと、彼は呼び鈴のスイッチを押した。 蔵野の貧乏揺すりが激しくなった。
「銀行から大金を借りるってことは、失敗したら借金だけ残るってことだからなあ。簡単にはできねえな」 岡田は深く肯く。
「まあ、あれこれ考えちゃう人間に起業は難しいね。その点、ジョン=ウィリスは振り切ってる印象を受けるね。あの人は親の七光りがなくても意外と行けそうだよな」
「そうそう、俺が彼に惹かれる理由はそこよ。若いのに大物の雰囲気が漂ってんのよ」蔵野は腕を組んだ。
「振り切るってのが大事なんだよなあ。俺のリサーチによると、サイコパスかってくらい犠牲に無頓着な人間が事業で成功すんだよな」 店員がアイスを乗せた三つの皿を運んできた。岡田は何も言わずにそれを食べ始める。僕と蔵野も彼に続いた。 アイスを食べ終わり、蔵野が口を開いた。
「前回行った店に行こうぜ」 僕は首をすくめる。
「あの店は、お高いよ」
「ハハハ。そこは『元社会人様』が奢ろうじゃねえか」 蔵野はアルマーニの革ジャンを手に取った。』
幸村 百理男. 東大理三の悪魔 「東大理三の悪魔」シリーズ (pp.13-15). Kindle 版.
僕はその日から一週間、ぶっ続けでその思考作業を繰り返した。寝ている時間以外は文字通り、ずっとだ。
『論理は一次元的で、理解は二次元的で、実感は三次元的である』 誰かが頭の中で鐘を鳴らし続けるように、この言葉が響いていた。 何かを考えて理解するたびに、透明でウニョウニョした球が僕の意識に残り、数を増やしていった。それはマリモのように意識の奥に沈んだり、浮かび上がったりする。その正体は分からないが、きっと良いものだと思った。
幸村 百理男. 東大理三の悪魔 「東大理三の悪魔」シリーズ (pp.40-41). Kindle 版.
ネタバレしそうなので、このくらいで引用は終わる。主人公は渥美清、サンキュー・タツオ(米粒写経)の出身と同じ巣鴨高校に進学する。
最後に ブランデンブルク協奏曲第一番第四楽章終わりの方をカール・リヒターでどうぞ