進化とは何か ドーキンス博士の特別講義 [Kindle版]
リチャード ドーキンス (著), 吉成 真由美 (編集, 翻訳)
吉成 真由美
サイエンスライター。1953年生まれ。マサチューセッツ工科大学(M.I.T.)卒業(脳および認知科学学部)。ハーバード大学大学院修士課程修了(心理学部脳科学専攻)。元NHKディレクター(子供番組、教育番組、NHK特集などを担当。コンピュータ・グラフィックスの研究開発にも携わる)。現在ボストン在住 利根川進の配偶者。
『ノーベル賞科学者であるピーター ・メダワーが 、著書 『生命科学 』の中で次のように言っています 。 「人間だけが 、自分たちが生まれる前に起こったことを知り 、自分たちが死んでから起こるであろうことを予測することによって 、自分の行動を決めていく 。すなわち 、人間のみが 、自分が立っている地点のみならずその前後に光を当てることによって 、自らの進む道を見つけていく。』
ドーキンスが冒頭で語っていることは、明白なわれわれの前提である長い地球の歴史の中のほんの一部分に目覚めて死んでゆく人間の運命です。科学の役割、科学的に考える目的は多様なわれわれ人間が理解しあえる予想を持つということです。ドーキンスの優れて啓蒙的観点は死を含むということにあります。私達は点のようなスポットだから生命を魔法のように感じるけれども、世代を繰り返すということがどのような飛躍をもたらすかということを理解し、これをエンジニアリングに応用する必要がある。可能な時代になりつつあります。
『アメリカの偉大な哲学者ダニエル・デネットは 「デザイノイド 」という言葉を使わずに 「デザインされた 」と言ってしまおうと提案しています 。その意見もわかりますが 、ここでは 「デザイノイド 」という言い方で通します 。外見上デザインされたように見える 「デザイノイド 」物体というものが存在するためには 、特別なプロセスが必要です 。そのプロセスとは一体何か 。この問いに対する答えは 、ごく最近 、すなわち一九世紀の半ばに発見されました 。この歴史上最も偉大な発見の一つは 、史上最も優れた科学者の一人であるチャールズ・ロバ ート・ダ ーウィンによってなされました。』
シュレーディンガーが《無秩序から秩序が生まれる物理仕掛け》と《秩序が秩序を生む物理仕掛け》とを区別したと同様に、メタプロセスとして、デザイノイドに必要とされる特殊なプロセス【上位のプロセスという意味で私はメタプロセスという】が時間を凝縮する数学的プロセスであるという観点が示されている。大きなデータが有れば知能の人工化で進化は可能である。
ーー
『こうして眼のないところから眼の完成まで 、 「不可能な山 」のゆっくりした道のりを辿ってみました 。しかし 、眼を完成させるまでに十分な進化の時間はあったのでしょうか 。スウェーデンの科学者ダン・ニールソンはこの問題に取り組みました 。彼は今私たちがやったのと同じような実験を 、コンピュータを使って行なった 。彼はコンピュータを使ったので 、私たちが木の模型を使ってやったように進化の歩幅を大きく取るのではなく 、それこそとても小さな歩幅で進むことができた 。意図的に彼はそれぞれの歩幅 、すなわちそれぞれの突然変異が 、たとえば眼のカップの勾配などといったものですが 、1%の変化しかもたらさないよう設定しました 。また眼の性能を測る方法も考えました 。できたばかりの眼のあらゆる部分をコンピュ ータに測定させ 、物理の法則を使って 、その眼がどれくらいハッキリした像を結ぶことができるかを割り出している。』
略
『驚くほど短い時間 、たった二五万世代しかかからないことを確認しました 。ずいぶんたくさんの世代のように聞こえるかもしれないけれど 、私たち自身はたった一世代しか生きていないので 、私たちの認識はかなり歪曲されたものになっています 。この場合 、人間の認知力は問題ではなく 、重要なのは地質学上の時間のスケ ールです 。地質学上の時間のスケールでは 、二五万世代というのはほぼなきに等しいくらい小さい 。今問題にしている動物の一世代というのはほぼ一年くらいなので 、二五万世代は一〇〇万年の四分の一程度にしかならない 。一〇〇万年の四分の一というのはあまりに短すぎて 、地質学者が測れないほどの長さです 。まさに時計の時針を使って一秒を測ろうとするようなものでしょう。』
訳者の後書きに『「永い時間の概念 」や 「デザインの問題 」 、「微々たる違いの積み重ねによる力 」といった事柄を 、実にわかりやすく見事に説明していて 、優れた進化論入門になっているのはもとより 、ド ーキンスの著作のエッセンスが網羅されている』がある。ポストモダニズムの中には進化論を継承しないグループがある。
リチャード ドーキンス (著), 吉成 真由美 (編集, 翻訳)
吉成 真由美
サイエンスライター。1953年生まれ。マサチューセッツ工科大学(M.I.T.)卒業(脳および認知科学学部)。ハーバード大学大学院修士課程修了(心理学部脳科学専攻)。元NHKディレクター(子供番組、教育番組、NHK特集などを担当。コンピュータ・グラフィックスの研究開発にも携わる)。現在ボストン在住 利根川進の配偶者。
『ノーベル賞科学者であるピーター ・メダワーが 、著書 『生命科学 』の中で次のように言っています 。 「人間だけが 、自分たちが生まれる前に起こったことを知り 、自分たちが死んでから起こるであろうことを予測することによって 、自分の行動を決めていく 。すなわち 、人間のみが 、自分が立っている地点のみならずその前後に光を当てることによって 、自らの進む道を見つけていく。』
ドーキンスが冒頭で語っていることは、明白なわれわれの前提である長い地球の歴史の中のほんの一部分に目覚めて死んでゆく人間の運命です。科学の役割、科学的に考える目的は多様なわれわれ人間が理解しあえる予想を持つということです。ドーキンスの優れて啓蒙的観点は死を含むということにあります。私達は点のようなスポットだから生命を魔法のように感じるけれども、世代を繰り返すということがどのような飛躍をもたらすかということを理解し、これをエンジニアリングに応用する必要がある。可能な時代になりつつあります。
『アメリカの偉大な哲学者ダニエル・デネットは 「デザイノイド 」という言葉を使わずに 「デザインされた 」と言ってしまおうと提案しています 。その意見もわかりますが 、ここでは 「デザイノイド 」という言い方で通します 。外見上デザインされたように見える 「デザイノイド 」物体というものが存在するためには 、特別なプロセスが必要です 。そのプロセスとは一体何か 。この問いに対する答えは 、ごく最近 、すなわち一九世紀の半ばに発見されました 。この歴史上最も偉大な発見の一つは 、史上最も優れた科学者の一人であるチャールズ・ロバ ート・ダ ーウィンによってなされました。』
シュレーディンガーが《無秩序から秩序が生まれる物理仕掛け》と《秩序が秩序を生む物理仕掛け》とを区別したと同様に、メタプロセスとして、デザイノイドに必要とされる特殊なプロセス【上位のプロセスという意味で私はメタプロセスという】が時間を凝縮する数学的プロセスであるという観点が示されている。大きなデータが有れば知能の人工化で進化は可能である。
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『こうして眼のないところから眼の完成まで 、 「不可能な山 」のゆっくりした道のりを辿ってみました 。しかし 、眼を完成させるまでに十分な進化の時間はあったのでしょうか 。スウェーデンの科学者ダン・ニールソンはこの問題に取り組みました 。彼は今私たちがやったのと同じような実験を 、コンピュータを使って行なった 。彼はコンピュータを使ったので 、私たちが木の模型を使ってやったように進化の歩幅を大きく取るのではなく 、それこそとても小さな歩幅で進むことができた 。意図的に彼はそれぞれの歩幅 、すなわちそれぞれの突然変異が 、たとえば眼のカップの勾配などといったものですが 、1%の変化しかもたらさないよう設定しました 。また眼の性能を測る方法も考えました 。できたばかりの眼のあらゆる部分をコンピュ ータに測定させ 、物理の法則を使って 、その眼がどれくらいハッキリした像を結ぶことができるかを割り出している。』
略
『驚くほど短い時間 、たった二五万世代しかかからないことを確認しました 。ずいぶんたくさんの世代のように聞こえるかもしれないけれど 、私たち自身はたった一世代しか生きていないので 、私たちの認識はかなり歪曲されたものになっています 。この場合 、人間の認知力は問題ではなく 、重要なのは地質学上の時間のスケ ールです 。地質学上の時間のスケールでは 、二五万世代というのはほぼなきに等しいくらい小さい 。今問題にしている動物の一世代というのはほぼ一年くらいなので 、二五万世代は一〇〇万年の四分の一程度にしかならない 。一〇〇万年の四分の一というのはあまりに短すぎて 、地質学者が測れないほどの長さです 。まさに時計の時針を使って一秒を測ろうとするようなものでしょう。』
訳者の後書きに『「永い時間の概念 」や 「デザインの問題 」 、「微々たる違いの積み重ねによる力 」といった事柄を 、実にわかりやすく見事に説明していて 、優れた進化論入門になっているのはもとより 、ド ーキンスの著作のエッセンスが網羅されている』がある。ポストモダニズムの中には進化論を継承しないグループがある。