理化学研究所(理研)生命医科学研究センター免疫細胞治療研究チームの清水佳奈子上級研究員、藤井眞一郎チームリーダー(科技ハブ産連本部創薬・医療技術基盤プログラム副プログラムディレクター)らの共同研究グループは、ヒトの体内に存在する季節性コロナウイルス[1]に対する「記憶免疫キラーT細胞[2]」が認識する抗原部位を発見し、その部位が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質[3](Sタンパク質)領域にも強く交差反応[4]することを示しました。
本研究成果は、SARS-CoV-2の重症度診断、ワクチン効果診断、治療薬の開発に貢献すると期待できます。
今回、共同研究グループは、日本人に多いヒト白血球型抗原(HLA)[5]タイプのHLA-A*24:02に結合するSARS-CoV-2のSタンパク質中のエピトープ[6]の同定に成功しました。季節性コロナウイルスに対する記憶免疫キラーT細胞は、このエピトープを交差認識し、SARS-CoV-2に対して抗ウイルス効果を示します。HLA-A*24:02を持つ健常人の多くがこの交差反応性キラーT細胞を持っているのに対し、造血器腫瘍患者では少ないことが分かりました。しかし、造血器腫瘍患者でも効率よくキラーT細胞を誘導できるエピトープ群が集中する「ホットスポット」があることを見つけ、世界で初めて同定しました。このホットスポットエピトープでSARS-CoV-2感染細胞を刺激すると、眠っていた季節性コロナウイルスに対する記憶免疫キラーT細胞が極めてよく反応します。
本研究は、科学雑誌『Communications Biology』オンライン版(12月2日)に掲載されました。
ということは、m RNA型などのスパイクタンパク遺伝子発現型ワクチンは、その発現部位が局所にとどまらなければ、全身の臓器が危険に晒されるということになる。