トドの小部屋

写真付き日記帳です。旅行記、本や美術展の紹介、俳句など好きなことをつれづれに。お気軽にどうぞ。

芙蓉の人

2015-05-10 09:39:05 | 
新田次郎さんの「芙蓉の人」を読みました。明治28年10月から12月にかけて、日本初の富士山頂冬季気象観測を行った野中至氏と千代子夫人の物語である。野中氏が建てた富士山頂の観測所は、野中氏が私財を投じて建てたもので、設計も野中氏が行ったもの。気象庁からの委託という形での観測だったため、観測に必要な水銀晴雨計他の機材は、気象庁から借り受けたそうです。ところが、冬季の富士山頂の低い気圧に対応できず、限界を超えたため、途中で気圧が測れなくなってしまった。1日12回観測するという過酷な計画から来る疲労と寒さと高山病に苦しみながら、2人は助け合って観測を続けたのだったが、死ぬかもしれないほどに体調が悪化した頃、山頂に見舞いに訪れた人達によって、2人の状態が発見され、夫妻は背負われて、下山することになった。野中至氏は、いかにも明治男という頑固で一徹な人に思われたが、2人の深い夫婦愛は素晴らしいと思いました。特に観測中だけでなく、その後の生活でも献身的に夫を助け、支えた千代子夫人の働きは、特筆に値すると思いました。この本の題名「芙蓉の人」は千代子夫人を指すのですが、これほど素晴らしい明治女性がいたことを、知れて良かったと思いました。最近、テレビドラマ化されたようですが、是非、原作も読んでみることをお薦めします。
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