久しぶりに浅田次郎さんの本「母の待つ里」を読みました。50代になるまで独身で通した大企業の社長、松永徹、彼は故郷を出てから40年間、実家に帰ったことがなかった。親と故郷を捨てた男だった。看護師をしている母一人に育てられ、その母を亡くしたばかりの医師で、60歳近くになり、来年夏に仕事をやめようと思っている小林夏生は、寂しさから、母の遺骨をまだ納めることができないでいた。製薬会社の営業部長で、最後は、関西流通センター長として定年を迎えた室田精一は、退職した途端、預貯金と退職金の半分を妻に取られて離婚するにいたった。この3人は、年会費35万円のプレミアムクラブの会員で、ブラックカードの所有者としてユナイテッドホームタウンサービスを利用する。それは、1泊2日で50万円という費用で、失われた故郷体験をすることだった。曲がり家が彼らの生まれ育った家。そこには、朴訥ながら、暖かい母が待ち受け、何十年ぶりに里帰りした息子や娘を歓待する。村人もまるで昔からのなじみのように、彼らに接する。このユナイテッドホームタウンサービスは、ビレッジとペアレントを複数持っていて、お客同士がバッティングしないよう、故郷体験を供するのだった。東北地方と思しき、過疎の村が村人も含めて、昔からのなじみのようにふるまう。彼らはカード会社から報酬をもらって故郷体験をさせるスタッフなのであるが、まるで本物の家族、本物の昔馴染みのよう。松永徹、小林夏生、室田精一の3人は、村の自然と昔ながらの暮らしと母を演じた「ちよ」という名の老女を本物の母のように慕い、この村に移住しようとまで考えるようになる。ところが、ある日、カード会社から悪い知らせが届くのだった。浅田次郎さんらしい話の展開で、読み始めたら、どんどん進んでしまいました。いっときの夢のような話です。ファンタジーが好きな人向け。
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