お試しで書いてたボトムスSS
続きをタイプしてたら、なんだかお話がダラダラ長くなってきました。
生い立ちも含めたロイズ編だけでも、そこそこ尺が長いものになりそうです。
この手の書き物は「俺キャスト」とか充てて書くと面白いというか、スムーズなので、例に漏れずイメージだけは、ぼんやりと・・
ロイズは、ブルースウィリスの吹き替えくらいの、野沢那智さんか、
コブラの液晶ゲームのCMとか、アンドロ梅田くらいの山田康雄さんが、”渋お調子者”っぽくて好きなのでその辺に・・・
前回の、酒場のおっさんは、やっぱし 青野 武さんでしょうか!!!
とりあえず、ネタが無いので、第二回分を張ります。
---------------------------------------------------------------------------------------
酒場を出て、ダングに跨ったロイズは、タバコに火をつけ、キーを捻った。
くぐもったエンジン音を響かせ、車で混み合う幹線道路に滑り出す。
タバコが一本灰になる頃、ダングは市街地を抜け、薄暗い郊外の道路を、ヘッドライト頼りに速度を上げた。
そのまま20分も行くと、フェンスに囲まれた、メルキア軍駐屯地に到着する。
「立ち入り禁止」の看板が吊られたフェンスと並行にダングを走らせ、ゲート横の守衛小屋で停めた。
「よぉ お勤めごくろうさん」
再びタバコに火をつけ、気取った口調で、片手を上げるロイズに、顔見知りの守衛も笑顔で答える。
何時も笑っているようにみえる印象どおり、平時、ロイズ=バッカニアには、兵士につき物の、荒さや気難しさはなく、付き合いやすい部類に入る。
「ロイズさん、さっき主任が怖い顔して探してましたよ??またなんかやったんですか?」
「主任の怖い顔は、いつものこったろ、とりえず、まだなんにも、してねぇつもりなんだがな」
口元をゆがめてダングに跨り直し、緩々と走らせ始めた。
程なく格納庫に到着すると、あまり褒められない場所にダングを停め、入り口の脇にある、カメラに認識票を翳して中に入る。
22時を回っているにも関わらす、格納庫には煌々と明かりが点り、ツナギを着た作業員が、忙しく動き回っていた。
油とPR液のにおいが、鼻を刺す格納庫には、数機のATがハンガーされており、それぞれ数人ずつツナギ姿が取り付いている。
一番奥の、赤く塗られた大型ATが、ロイズのマシン”デモニックハウル”
アデルハビッツ本社から出向してきているメカニックともに調整が繰り返されている。
この新型ATの雛形は、パーフェクトソルジャー専用として、アデルハビッツ社が開発しており、その生い立ちは極めて複雑な物である。
高出力のローレック方式MCを稼動させる強度と補機スペースを得る為、09型の図面をそのままに、一割ほど大型化されている。
形状は09型とほぼ変わらず、専用のカメラと、左腕を11mm機銃を内蔵した、大型の鉤爪に交換されているのが、目を引くだけで、200mも離れれば、見分けが付かないだろう。
ただし、そのパフォーマンスは、現在稼動しているATの中でも最高ランクに位置するどころか、
事実パーフェクトソルジャーでもなければ、乗りこなす事は出来ないであろうオーバースペックが与えられている。
更に、この”デモニックハウル”は、膝から下を、タイプ20の収納式ブースター付きに変更することで、
加速性能の上乗せまで目論まれていた。
こんな、”イカレタ”ATのテストパイロットを務める、ロイズ自身も、少々”イカレタ”経歴を持つ。
・
・
・
・
二十年以上前、ロイズは、少年兵としてギルガメス軍に入隊し、
右も左も解らぬまま、当時拡大の一途を辿り、慢性兵員不足であったAT部隊に配属された。
最低限の操縦訓練を受けた後、多くの新兵と共に、月に20%の兵士が戦死するオロムの最前線に配属されたロイズは、
死と隣り合わせの戦場を生き残り、その特異な才能を開花させた。
自覚こそ無かったものの、初めて接する機械への順応性が高く、身体能力にも優れていた彼は、
配属1カ月にして熟練のパイロット達と肩を並べる戦果を揚げ、
半年も経つ頃には、押しも押されぬエースパイロットとして、隊内での地位を確たるものとしていた。
数に任せて押し寄せるバララントの猛攻で、常に劣勢を極める厳しい戦況においても、彼の技能は、ずば抜けていた。
その後一年を生き延びたロイズは、ギルガメス高官ヨラン=ペールゼンの肝いりで、大規模かつ秘密裏に新しく組織された、特務部隊にヘッドハンティングされる事となる。
同隊は、AT操縦技能だけに留まらず、高度な白兵戦闘、過酷な状況におけるサバイバル訓練、達観した戦術理論に基づく作戦立案
果ては機械工学、情報処理技術に至るまでを、高いレベルで、教育、訓練し、徹底的に鍛えあげる事で、
あらゆる不可能状況において挫屈しない強靭な精神力と行動力を持つ、最高の戦闘集団として機能する事を目的としていた。
第一期メンバー中最年少で入隊したロイズは、配属直後の模擬戦闘で、当時最高のボトムズ乗りと唄われた、”インゲ=リーマン”の乗るATを、格坐させたという。
その後、部隊は、いつしか「レッドショルダー」と呼ばれ、その秘密主義と多大な戦果をして、敵味方問わず、畏怖の念をもって語られることとなる。
ロイズは、生死すら賭した厳しい訓練を耐え抜き、
この精鋭部隊をして、戦死者が続出するような、非公式で陰惨極まりない作戦に、数え切れないほど参加し、生還し続けた。
そんな彼に再び転機が訪れるのは、終戦の7年ほども前であろうか。
ペールゼン大佐直々の辞令により、”ギルガメス軍外の組織”への転属を命じられたのである。
公称を持たず、ただ「秘密結社」とだけ名乗る組織は、当時、その目的も明かさぬまま、拡大と武装化を続けていた。
名も知れぬ組織の、強力な私設軍の兵士として、ロイズは、送り込まれたのである。
同社におけるロイズのポストが、士官候補でなかった事を斜視し、転属には、レッドショルダー内での彼の存在を疎むリーマンの意図が在ったのではないかと、
いぶかしむ声もあったが、もはや全ては闇の中である。
但し、秘密結社内での待遇は、RS隊に比べて、遥かに恵まれたものであったという。
同社は、ロイズを、危険でイリーガルな作戦に従事する熟練の兵士の一人としてでなく
ギルガメスより奪取した、パーフェクトソルジャーに施す戦闘パターンのレクチャーサンプルとして評価したのである。
組織が、PSのテスト出動を繰り返してデータ収集を続ける中、
そのノウハウは、蓄積、簡略化され、ロイズを含む同社所属のパイロット用に施す「後天的強化プログラム」として転用されることとなる。
薬物投与と、マインドコントロールを重きにおいた、「エンハンスドソルジャープログラム」は、
劣化PSとも呼べる、強力な戦闘力を持つ兵士を生み出す事に成功したのである。
先天的な肉体強化を伴わない為、代謝機能に限度こそ有るものの、
ヂヂリウム照射を必要とせず、メンタルへの影響も最小限の「ESプログラム」は、ある種PS計画の実用到達点とも呼べた。
PSが、テスト出動において、戦死の憂き目に会った後、彼らの専用でもあった、試作2型ヘビー級ATは、
同社ES用としての転用を目的として、ロイズ自身がテストを続ける事となった。
その後幾許も待たず、事態は急転する。
結社は「神の子」を名乗る、キリコキュービーの指揮下に入り、
ギルガメス、バララント両軍を敵に回した、破滅への道を辿り始めたのである。
二大星域軍の前には、最早ささやかでしかない結社の戦力を盾に、神の子キリコ=キュービーは、惑星クエントに実在するという、神の元へと向かうと宣言する。
そして「神の子」は、ロイズによってテストされた、陸戦装備の2型XATHを駆り、
ギルガメス、バララント両陣営が展開するクエント地表で、未曾有の突破劇を演じたのである。
護衛として出動するロイズ達に与えられた、軽量級AT”ツヴァーク”は、
そのユーモラスな外見と裏腹に、抜群の運動性を誇る素晴らしい機体であったが、架せられた命令は、最悪と言えた。
「命を賭して神の子を守ること」
黒山のごとくに展開する両軍のATを前に、躊躇うことなく突破を試みる「神の子」キリコに追従するESパイロット達は、
猛烈な迎撃を前に、一機また一機とその数を減らしてゆく。
最終目標であった地下プラントにたどり着いたのは、「神の子」と、ロイズだけであった。
・
・
・
・
・
・
キリコが駆る、堅牢なXATHに対し、ロイズの軽量級ATは、持久性、耐久性に劣り、限度を越えた酷使によって、既に稼働限界を迎えていた。
結社仕様の高性能な耐圧服の空調機能が、火照った身体を無理やり冷やし、嫌な汗だけが身体を伝う。
軽量な機体に併せた、繊細なペダル操作で、キリコのATに追従するが、思いがけず、カーブで外側に大きく軌跡が膨らむ
(くそっ 熱で、液密度が下がってきやがった、この型は、こんな滅茶苦茶な使い方するようには、出来てないんだぜ畜生)
コントロールに遊びが出始め、反応も鈍い、PR液の活性率を示すペーハーゲージは、レッドラインを下回っている。
(こんだけ軽い機体に、PRSPが付いててコレだ・・・・ブースター(加圧機)でもありゃ、あと20分はもつんだが・・・・)
声に出さず毒付くロイズの耳に警告音が響く
(こんどは、サンドトリッパーの水温か・・・・吹かし過ぎは、承知なんだよ この野郎め)
高機動ユニットに乗った数機の09型が、すぐ後ろに迫ってるのは解っていた。
やけっぱちで、アクセルを全開にするが、全く速度が乗らない。
(結局 何機くっついてきたんだ? 正直キリコなんざ、どうなっても知ったこっちゃねぇが・・・・・・)
レーダーの後方警告が鳴る。
(やっぱり、連中のが方が、大分速いな・・・・追いつかれるのも時間の問題か・・・・・)
長い直線通路で、ツヴァークを停止させる。
深地旋回で180度反転させて、両腕の内蔵式11mm機銃を展開する
ロイズは、前方から高速で迫って来る、ドックキャリアーに乗った09型に、照準マーカーをポイントして、ツヴァークをスタートさせた。
アクセル全開で加速し、左右にマシンを揺すりながら突撃させるも、疲弊したマシンは、思った動きをしていない。
(ちっ!)
強化樹脂製のボディを30mmが掠め、被弾した左腕が吹き飛ぶ。
ひるむ事無く、トリガーを引き続け、至近距離から残った右手の11mmを打ち込む!
火線が空しく空を切った直後、凄まじい衝撃が来た。
すれ違いざまに、ぶつけられたのだ。
速度が乗った敵機の前に、ライト級のボディなど、ひとたまりも無い。
激しく弾きとばされ、地下プラント内通路の側壁にぶつかったツヴァークは、機能を停止した。
その横を、数機のドッグキャリアーが、猛スピードで通過していく。
トドメが打ち込まれなかったのは、不幸中の幸いだった。
「っつつつ・・・・」
機体の自損によってパイロットを養護するツヴァークの構造に助けられ、ロイズは、思いの外軽傷で済んだようだ。
手早く再起動を試みるも、反応は無い。
(こんだけ無茶すりゃ、しかたねぇな)
通信機のスイッチを切り、ハッチを吹き飛ばして機体から這い出る。
独立した内燃機関を持つ、サンドトリッパーの複帯が、裏返ったまま、むなしく空転するのみで、激しく変形した機体は、見る影も無い。
「あーーーぁ こんなんなっちまってよ・・・・・ まぁ、こんだけつきあってやったら、神様も、勘弁してくれるだろ・・・」
ロイズは、秘密結社の窮屈で視界の悪いヘルメットを脱ぎ捨てて、走り出した。
地下プラントを程なく進んだ先に、キリコに破壊されたであろうATが倒れているのを見つけたロイズは、外から非常レバーを引いてハッチを吹き飛す。
中で圧死しているパイロットの両脇に腕を入れ、無理やりコックピットから引きずりだして、代わりに乗り込んだ。
「動いてくれよ このポンコツめ!」
起動操作を繰り返すうち、馴染みのある始動音に続き、ATは、振動を伴いながらも息を吹き返した
「けっ!やっぱしゼロナインは、しぶとさだけ一流だな」
血塗れのコックピットで毒づき、辛うじて息を繋ぐマシンを立ち上がらせたロイズは、あてもなく、クエント地底に広がるプラントの捜索を開始した。
キリコの到着に合わせ、このプラントは、ほぼ全ての機能を回復しているようだった。
不穏な明滅を繰り返し、そこかしこから、異音が響く中、ロイズは勘にまかせて、ATを走らせる。
気を抜くと停まりそうな、機体を宥めながら、いくつか、覗いたドックの一つに、数機の脱出シャトルを発見したロイズは、改めて己の悪運と「この星以外の神」に、感謝した。
ATを降着させて降り立ち、状態の良さそうな一機を選んで手早くチェックする。
理屈で言えば、数千年前の品物のはずだか、気味が悪いほど状態は良い。
コックピットに乗り込み、当てずっぽうで、起動操作を行うと、あっけなく、シャトルは息を吹き返した。
「まぁ神様がこしらえたんだ、万に一つもソツは無いな」
シャトルの滑走レールが伸びるトンネル状の脱出ゲートに目をやる。
「・・途中で埋まっちゃいねぇだろうな・・・・・」
とぼけた調子で呟いて、目を凝らすがトンネルは余りに深く、運を天に任せるしかなさそうだった。
「まぁ、あとはどうなろうが、知ったこっちゃねぇ・・・とにかく、こんな星からぁとっとと尻尾まいた方が良さそうだ」
手早く体を固定したロイズは、最終チェックを済ますと、躊躇う事なく発射レバーを引く。
凄まじい加速Gを伴って、シャトルが発進した。
地底深くから、地表に向かって掘られたトンネルを抜けクエント大気圏を突破した辺りで、ロイズの意識はゆっくりと遠のいていった・・・・
・
・
・
・
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・
続く~
続きをタイプしてたら、なんだかお話がダラダラ長くなってきました。
生い立ちも含めたロイズ編だけでも、そこそこ尺が長いものになりそうです。
この手の書き物は「俺キャスト」とか充てて書くと面白いというか、スムーズなので、例に漏れずイメージだけは、ぼんやりと・・
ロイズは、ブルースウィリスの吹き替えくらいの、野沢那智さんか、
コブラの液晶ゲームのCMとか、アンドロ梅田くらいの山田康雄さんが、”渋お調子者”っぽくて好きなのでその辺に・・・
前回の、酒場のおっさんは、やっぱし 青野 武さんでしょうか!!!
とりあえず、ネタが無いので、第二回分を張ります。
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酒場を出て、ダングに跨ったロイズは、タバコに火をつけ、キーを捻った。
くぐもったエンジン音を響かせ、車で混み合う幹線道路に滑り出す。
タバコが一本灰になる頃、ダングは市街地を抜け、薄暗い郊外の道路を、ヘッドライト頼りに速度を上げた。
そのまま20分も行くと、フェンスに囲まれた、メルキア軍駐屯地に到着する。
「立ち入り禁止」の看板が吊られたフェンスと並行にダングを走らせ、ゲート横の守衛小屋で停めた。
「よぉ お勤めごくろうさん」
再びタバコに火をつけ、気取った口調で、片手を上げるロイズに、顔見知りの守衛も笑顔で答える。
何時も笑っているようにみえる印象どおり、平時、ロイズ=バッカニアには、兵士につき物の、荒さや気難しさはなく、付き合いやすい部類に入る。
「ロイズさん、さっき主任が怖い顔して探してましたよ??またなんかやったんですか?」
「主任の怖い顔は、いつものこったろ、とりえず、まだなんにも、してねぇつもりなんだがな」
口元をゆがめてダングに跨り直し、緩々と走らせ始めた。
程なく格納庫に到着すると、あまり褒められない場所にダングを停め、入り口の脇にある、カメラに認識票を翳して中に入る。
22時を回っているにも関わらす、格納庫には煌々と明かりが点り、ツナギを着た作業員が、忙しく動き回っていた。
油とPR液のにおいが、鼻を刺す格納庫には、数機のATがハンガーされており、それぞれ数人ずつツナギ姿が取り付いている。
一番奥の、赤く塗られた大型ATが、ロイズのマシン”デモニックハウル”
アデルハビッツ本社から出向してきているメカニックともに調整が繰り返されている。
この新型ATの雛形は、パーフェクトソルジャー専用として、アデルハビッツ社が開発しており、その生い立ちは極めて複雑な物である。
高出力のローレック方式MCを稼動させる強度と補機スペースを得る為、09型の図面をそのままに、一割ほど大型化されている。
形状は09型とほぼ変わらず、専用のカメラと、左腕を11mm機銃を内蔵した、大型の鉤爪に交換されているのが、目を引くだけで、200mも離れれば、見分けが付かないだろう。
ただし、そのパフォーマンスは、現在稼動しているATの中でも最高ランクに位置するどころか、
事実パーフェクトソルジャーでもなければ、乗りこなす事は出来ないであろうオーバースペックが与えられている。
更に、この”デモニックハウル”は、膝から下を、タイプ20の収納式ブースター付きに変更することで、
加速性能の上乗せまで目論まれていた。
こんな、”イカレタ”ATのテストパイロットを務める、ロイズ自身も、少々”イカレタ”経歴を持つ。
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二十年以上前、ロイズは、少年兵としてギルガメス軍に入隊し、
右も左も解らぬまま、当時拡大の一途を辿り、慢性兵員不足であったAT部隊に配属された。
最低限の操縦訓練を受けた後、多くの新兵と共に、月に20%の兵士が戦死するオロムの最前線に配属されたロイズは、
死と隣り合わせの戦場を生き残り、その特異な才能を開花させた。
自覚こそ無かったものの、初めて接する機械への順応性が高く、身体能力にも優れていた彼は、
配属1カ月にして熟練のパイロット達と肩を並べる戦果を揚げ、
半年も経つ頃には、押しも押されぬエースパイロットとして、隊内での地位を確たるものとしていた。
数に任せて押し寄せるバララントの猛攻で、常に劣勢を極める厳しい戦況においても、彼の技能は、ずば抜けていた。
その後一年を生き延びたロイズは、ギルガメス高官ヨラン=ペールゼンの肝いりで、大規模かつ秘密裏に新しく組織された、特務部隊にヘッドハンティングされる事となる。
同隊は、AT操縦技能だけに留まらず、高度な白兵戦闘、過酷な状況におけるサバイバル訓練、達観した戦術理論に基づく作戦立案
果ては機械工学、情報処理技術に至るまでを、高いレベルで、教育、訓練し、徹底的に鍛えあげる事で、
あらゆる不可能状況において挫屈しない強靭な精神力と行動力を持つ、最高の戦闘集団として機能する事を目的としていた。
第一期メンバー中最年少で入隊したロイズは、配属直後の模擬戦闘で、当時最高のボトムズ乗りと唄われた、”インゲ=リーマン”の乗るATを、格坐させたという。
その後、部隊は、いつしか「レッドショルダー」と呼ばれ、その秘密主義と多大な戦果をして、敵味方問わず、畏怖の念をもって語られることとなる。
ロイズは、生死すら賭した厳しい訓練を耐え抜き、
この精鋭部隊をして、戦死者が続出するような、非公式で陰惨極まりない作戦に、数え切れないほど参加し、生還し続けた。
そんな彼に再び転機が訪れるのは、終戦の7年ほども前であろうか。
ペールゼン大佐直々の辞令により、”ギルガメス軍外の組織”への転属を命じられたのである。
公称を持たず、ただ「秘密結社」とだけ名乗る組織は、当時、その目的も明かさぬまま、拡大と武装化を続けていた。
名も知れぬ組織の、強力な私設軍の兵士として、ロイズは、送り込まれたのである。
同社におけるロイズのポストが、士官候補でなかった事を斜視し、転属には、レッドショルダー内での彼の存在を疎むリーマンの意図が在ったのではないかと、
いぶかしむ声もあったが、もはや全ては闇の中である。
但し、秘密結社内での待遇は、RS隊に比べて、遥かに恵まれたものであったという。
同社は、ロイズを、危険でイリーガルな作戦に従事する熟練の兵士の一人としてでなく
ギルガメスより奪取した、パーフェクトソルジャーに施す戦闘パターンのレクチャーサンプルとして評価したのである。
組織が、PSのテスト出動を繰り返してデータ収集を続ける中、
そのノウハウは、蓄積、簡略化され、ロイズを含む同社所属のパイロット用に施す「後天的強化プログラム」として転用されることとなる。
薬物投与と、マインドコントロールを重きにおいた、「エンハンスドソルジャープログラム」は、
劣化PSとも呼べる、強力な戦闘力を持つ兵士を生み出す事に成功したのである。
先天的な肉体強化を伴わない為、代謝機能に限度こそ有るものの、
ヂヂリウム照射を必要とせず、メンタルへの影響も最小限の「ESプログラム」は、ある種PS計画の実用到達点とも呼べた。
PSが、テスト出動において、戦死の憂き目に会った後、彼らの専用でもあった、試作2型ヘビー級ATは、
同社ES用としての転用を目的として、ロイズ自身がテストを続ける事となった。
その後幾許も待たず、事態は急転する。
結社は「神の子」を名乗る、キリコキュービーの指揮下に入り、
ギルガメス、バララント両軍を敵に回した、破滅への道を辿り始めたのである。
二大星域軍の前には、最早ささやかでしかない結社の戦力を盾に、神の子キリコ=キュービーは、惑星クエントに実在するという、神の元へと向かうと宣言する。
そして「神の子」は、ロイズによってテストされた、陸戦装備の2型XATHを駆り、
ギルガメス、バララント両陣営が展開するクエント地表で、未曾有の突破劇を演じたのである。
護衛として出動するロイズ達に与えられた、軽量級AT”ツヴァーク”は、
そのユーモラスな外見と裏腹に、抜群の運動性を誇る素晴らしい機体であったが、架せられた命令は、最悪と言えた。
「命を賭して神の子を守ること」
黒山のごとくに展開する両軍のATを前に、躊躇うことなく突破を試みる「神の子」キリコに追従するESパイロット達は、
猛烈な迎撃を前に、一機また一機とその数を減らしてゆく。
最終目標であった地下プラントにたどり着いたのは、「神の子」と、ロイズだけであった。
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キリコが駆る、堅牢なXATHに対し、ロイズの軽量級ATは、持久性、耐久性に劣り、限度を越えた酷使によって、既に稼働限界を迎えていた。
結社仕様の高性能な耐圧服の空調機能が、火照った身体を無理やり冷やし、嫌な汗だけが身体を伝う。
軽量な機体に併せた、繊細なペダル操作で、キリコのATに追従するが、思いがけず、カーブで外側に大きく軌跡が膨らむ
(くそっ 熱で、液密度が下がってきやがった、この型は、こんな滅茶苦茶な使い方するようには、出来てないんだぜ畜生)
コントロールに遊びが出始め、反応も鈍い、PR液の活性率を示すペーハーゲージは、レッドラインを下回っている。
(こんだけ軽い機体に、PRSPが付いててコレだ・・・・ブースター(加圧機)でもありゃ、あと20分はもつんだが・・・・)
声に出さず毒付くロイズの耳に警告音が響く
(こんどは、サンドトリッパーの水温か・・・・吹かし過ぎは、承知なんだよ この野郎め)
高機動ユニットに乗った数機の09型が、すぐ後ろに迫ってるのは解っていた。
やけっぱちで、アクセルを全開にするが、全く速度が乗らない。
(結局 何機くっついてきたんだ? 正直キリコなんざ、どうなっても知ったこっちゃねぇが・・・・・・)
レーダーの後方警告が鳴る。
(やっぱり、連中のが方が、大分速いな・・・・追いつかれるのも時間の問題か・・・・・)
長い直線通路で、ツヴァークを停止させる。
深地旋回で180度反転させて、両腕の内蔵式11mm機銃を展開する
ロイズは、前方から高速で迫って来る、ドックキャリアーに乗った09型に、照準マーカーをポイントして、ツヴァークをスタートさせた。
アクセル全開で加速し、左右にマシンを揺すりながら突撃させるも、疲弊したマシンは、思った動きをしていない。
(ちっ!)
強化樹脂製のボディを30mmが掠め、被弾した左腕が吹き飛ぶ。
ひるむ事無く、トリガーを引き続け、至近距離から残った右手の11mmを打ち込む!
火線が空しく空を切った直後、凄まじい衝撃が来た。
すれ違いざまに、ぶつけられたのだ。
速度が乗った敵機の前に、ライト級のボディなど、ひとたまりも無い。
激しく弾きとばされ、地下プラント内通路の側壁にぶつかったツヴァークは、機能を停止した。
その横を、数機のドッグキャリアーが、猛スピードで通過していく。
トドメが打ち込まれなかったのは、不幸中の幸いだった。
「っつつつ・・・・」
機体の自損によってパイロットを養護するツヴァークの構造に助けられ、ロイズは、思いの外軽傷で済んだようだ。
手早く再起動を試みるも、反応は無い。
(こんだけ無茶すりゃ、しかたねぇな)
通信機のスイッチを切り、ハッチを吹き飛ばして機体から這い出る。
独立した内燃機関を持つ、サンドトリッパーの複帯が、裏返ったまま、むなしく空転するのみで、激しく変形した機体は、見る影も無い。
「あーーーぁ こんなんなっちまってよ・・・・・ まぁ、こんだけつきあってやったら、神様も、勘弁してくれるだろ・・・」
ロイズは、秘密結社の窮屈で視界の悪いヘルメットを脱ぎ捨てて、走り出した。
地下プラントを程なく進んだ先に、キリコに破壊されたであろうATが倒れているのを見つけたロイズは、外から非常レバーを引いてハッチを吹き飛す。
中で圧死しているパイロットの両脇に腕を入れ、無理やりコックピットから引きずりだして、代わりに乗り込んだ。
「動いてくれよ このポンコツめ!」
起動操作を繰り返すうち、馴染みのある始動音に続き、ATは、振動を伴いながらも息を吹き返した
「けっ!やっぱしゼロナインは、しぶとさだけ一流だな」
血塗れのコックピットで毒づき、辛うじて息を繋ぐマシンを立ち上がらせたロイズは、あてもなく、クエント地底に広がるプラントの捜索を開始した。
キリコの到着に合わせ、このプラントは、ほぼ全ての機能を回復しているようだった。
不穏な明滅を繰り返し、そこかしこから、異音が響く中、ロイズは勘にまかせて、ATを走らせる。
気を抜くと停まりそうな、機体を宥めながら、いくつか、覗いたドックの一つに、数機の脱出シャトルを発見したロイズは、改めて己の悪運と「この星以外の神」に、感謝した。
ATを降着させて降り立ち、状態の良さそうな一機を選んで手早くチェックする。
理屈で言えば、数千年前の品物のはずだか、気味が悪いほど状態は良い。
コックピットに乗り込み、当てずっぽうで、起動操作を行うと、あっけなく、シャトルは息を吹き返した。
「まぁ神様がこしらえたんだ、万に一つもソツは無いな」
シャトルの滑走レールが伸びるトンネル状の脱出ゲートに目をやる。
「・・途中で埋まっちゃいねぇだろうな・・・・・」
とぼけた調子で呟いて、目を凝らすがトンネルは余りに深く、運を天に任せるしかなさそうだった。
「まぁ、あとはどうなろうが、知ったこっちゃねぇ・・・とにかく、こんな星からぁとっとと尻尾まいた方が良さそうだ」
手早く体を固定したロイズは、最終チェックを済ますと、躊躇う事なく発射レバーを引く。
凄まじい加速Gを伴って、シャトルが発進した。
地底深くから、地表に向かって掘られたトンネルを抜けクエント大気圏を突破した辺りで、ロイズの意識はゆっくりと遠のいていった・・・・
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続く~