この記事は、一部書き換えを行っています。
ごみの焼却灰は脱塩処理を行えば、セメント原料の粘土の代替資源として利用することができます。ただし、利用可能量はセメントの生産量の20%くらいが限度です。また、セメントメーカーは従来から粘土の代替資源として火力発電所から発生する石炭灰を利用しています。ちなみに、沖縄県の火力発電所(沖縄電力)からの石炭灰の発生量は県内のごみの焼却灰の発生量の約2倍あります。
沖縄県には琉球セメントというセメントメーカーがありますが、仮に、ここでごみの焼却灰を資源化することになった場合はどうなるか?
今日は、その可能性について考えてみることにします。
琉球セメントのセメント生産量は年間約60万トン(平成25年度)です。そうなると計算上は約12万トン(約20%)の石炭灰やごみの焼却灰(脱塩処理をしたもの)が利用できることになります。琉球セメントが石炭灰をどのくらい資源化しているかは分かりませんが、公平性を期すために石炭灰とごみの焼却灰の発生割合に準じて2対1で考えると、ごみの焼却灰は約4万トン資源化できることになります。
そうなると、計算上は沖縄県全体のごみの焼却灰の約3分の2を資源化できることになります。
さて、ここからが問題です。
沖縄県内の市町村にとって、焼却灰のセメント資源化が他の方法よりも安価であり、環境負荷も低い(最少の経費で最大の効果を挙げることができる)とした場合、おそらく全ての市町村がセメント資源化を検討することになると考えます。そうなった場合は、当然のこととして、琉球セメントは各市町村(住民)の公平性を期すために人口の割合に応じて資源化を引き受けることになると考えます。
現在、浦添市と中城村と北中城村が広域処理による焼却灰の資源化を検討しているようですが、この1市2村の人口は合計で約15万人になります。ということは、この1市2村が沖縄県内において焼却灰のセメント資源化を行える量は10万人分程度が限度ということになります。
なお、この1市2村が広域施設を整備するときは国の補助金を利用することになります。ただし、国が市町村に対して補助金を交付する場合は、補助金適正化法の規定に基づいて公平性を期す必要があります。したがって、仮に、琉球セメントが1市2村の焼却灰を優先的に受け入れるとした場合であっても、国の補助金を利用するときにアウトになります。
以上はこのブログの管理者が勝手に計算して考えたことです。しかし、実際は計算では解決できない大きな問題があります。
それは、地域住民の理解と協力です。琉球セメントの工場は名護市にありますが、県内であっても市外から焼却灰が持ち込まれることについては感情的にかなりの抵抗があると考えます。そして、一部でも市外から焼却灰を持ち込むことを容認した場合は、自動的に市外の他の市町村に対しても持ち込みを容認することになります。
例えば、浦添市と中城村と北中城村の焼却灰は受け入れを認めるが、那覇市や沖縄市の焼却灰は受け入れないという「差別」を行うことはできないと考えます。
そうなると、住民感情としては、名護市の焼却灰はOKでも、他の市町村の焼却灰はNGということになりかねません。というか、多分、そうなります。
琉球セメントは県内の市町村から発生する焼却灰の資源化については、地元住民との合意形成を重視しているので、最終的にはその地元住民の理解と協力が得られなければ、沖縄県内(名護市を除く)における焼却灰のセメント資源化はほぼ不可能になると考えます。
※浦添市と中城村と北中城村は、セメントメーカーの多い九州において焼却灰のセメント資源化を行うことを考えていると思われますが、県外の民間企業に「外部委託」することになるので、その民間企業がある県や市町村との協議、そしてメーカー側との委託費の変動や長期継続委託等に関する協議を十分に行った上で、議会や住民に対して丁寧に説明する必要があると考えます。