この記事は、ごみ処理計画の調和に関する記事の概要版です。
【廃棄物処理法第6条第3項】
市町村は、その一般廃棄物処理計画を定めるに当たっては、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関し関係を有する他の市町村の一般廃棄物処理計画と調和を保つよう努めなければならない。
複数の市町村が広域処理を前提に広域組合を設立する場合は、廃棄物処理法の規定により各市町村が定めているごみ処理計画の調和を保つように努めなければならないことになっています。
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(注)このフローは2村が浦添市のごみ処理計画との調和を確保する努力をしていないことになるので、広域組合を設立することはできないことになります。このため、1市2村は単独更新を前提としてごみ処理を行っていくことになります。単独更新になっても浦添市の場合は国の補助金を利用する権利を確保しているので、自主財源が大幅に増加するようなことはありません。しかし、2村の場合は平成26年度から国の補助金を利用する権利を放棄しているので、40億円以上の自主財源(基金)の積み立てが必要になります。
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(注)これは2村が法令違反を是正するために休止している溶融炉を廃止するフローになりますが、焼却灰の委託処分を継続している場合は廃棄物処理法第6条第3条の規定に違反している(浦添市のごみ処理計画との調和を確保していない)ことになるので、結果的に前のフローと同じ状況になります。
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(注)これは休止している溶融炉を再稼動して長寿命化を行うフローになりますが、2村の溶融炉は国内で稼動している事例や長寿命化が行われている事例のない極めて特殊な溶融炉なので、他の市町村と広域組合を設立する場合は地方財政法第2条第1項の規定に違反することになります。2村が単独更新を行う場合は法令を遵守したごみ処理計画になりますが、事故や故障等により万が一溶融炉を使用することができなくなった場合は、補助金を返還して自主財源により単独更新を行うことになってしまいます。
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(注)これは溶融炉を廃止するための代替措置として、焼却灰の資源化を外部委託するフローになります。ただし、2村の焼却炉は流動床炉なので排出される焼却灰は塩分濃度の高い飛灰(ばいじん)になります。沖縄県には飛灰を資源化する施設はなく、内地においても安定的に資源化できる施設は皆無に近い状況なので、この場合も結果的に溶融炉を再稼動した場合と同じ状況になってしまいます。
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(注)このフローはあり得ないフローになりますが、万が一、国家公務員が法令に違反している広域組合に対して財政的援助を与えた場合は国家公務員法違法になります。また、財政的援助を与えた自治体が沖縄県の自治体ということになると、別な社会問題(スキャンダル)に発展してしまいます。
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(注)2村が南城市や金武町のように溶融炉を整備していない自治体であれば、このフローによって広域組合を設立することができます。しかし、2村の場合は平成15年度に国の補助金を利用して溶融炉を整備しています。そして、2村の判断で平成26年度から溶融炉を所有したまま休止(所有財産の効率的な運用を放棄)しています。したがって、広域組合を設立する場合は休止している溶融炉を再稼動しなければならないことになります。しかし、2村の場合は溶融炉を再稼動すると浦添市の財政に累を及ぼすような施策を行うことになるため、広域組合を設立することはできない状況になっています。
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(注)このフローが溶融炉を廃止する場合の一般的なフローになりますが、代替措置として平成26年度までは15年分以上の最終処分場を確保する必要がありました。そして、平成27年度からは5年分以上の最終処分場を確保すれば廃止できるようになりました。しかし、5年分であっても2村がこれから最終処分場を確保しようとすると浦添市が考えている広域処理のスケジュールが大幅に遅れることになります。したがって、このフローでは広域組合を設立することはできないことになります。
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(注)2村は平成26年度から完全に「民間の発想」で事務処理を行ってきているので、平成28年度からは「公共の発想」で事務処理を行い、法令違反を是正して平成26年3月に改正したごみ処理計画を見直さなければ広域組合を設立することはできません。なお、2村の場合は一部事務組合(中北組合)を設立してごみ処理を行っていますが、その場合、2村のごみ処理(自治事務)に対する国の通知は県から中北組合に周知されることになります。したがって、中北組合が「民間の発想」で事務処理を行っていると、結果的に2村も「民間の発想」で事務処理を行っていることになってしまいます。
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(注)このように2村が「公共の発想」で事務処理を行っているつもりであっても、中北組合が平成28年度においても「民間の発想」で事務処理を行っている場合は、浦添市のごみ処理計画との調和を確保することはできません。したがって、協議会を設立する前に広域処理は白紙撤回ということになります。 そして、平成29年度から40億円以上の自主財源(基金)の積み立てを行わなければならない状況になります。なお、中北組合のごみ処理施設(青葉苑)の単独更新が困難な場合は組合を解散して各村が単独で新たなごみ処理施設を自主財源により整備することになる可能性もあります。
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(注)1から8までの事務処理は完全に「民間の発想」による事務処理になります。しかし、2村の村長は平成28年3月に浦添市との広域処理を推進することを決定しているので、平成28年度からは他の市町村と同じように「公共の発想」で事務処理を行わなければなりません。したがって、中城村の村長の任期が満了する前(6月まで)に法令違反を是正して協議会を設立することができなかった場合は、平成28年度も平成27年度までと同じように、2村と中北組合は「民間の発想」で事務処理を行っていることになってしまいます。
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(注)浦添市は一貫して「公共の発想」で事務処理を行ってきているので、地方財政法第8条の規定や廃棄物処理法の基本方針に対応した施策を行っています。そして、処分制限期間を経過した焼却炉と溶融炉の長寿命化を実施しています。一方、2村は平成26年度から「民間の発想」で事務処理を行ってきています。したがって、代替措置を講じて溶融炉を廃止しなければ、広域処理を推進することはできない状況になっています。
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(注)2村が溶融炉を廃止するための代替措置に関する選択肢を整理するとこのような状況になりますが、国の通知に従って5年分以上の最終処分場を確保することは時間的に不可能です。また、焼却灰の資源化を外部委託する施策は他の市町村(浦添市)の財政に累が及ぶような施策になるので選択肢から除外しなければなりません。そして、もちろん代替措置を講じずに溶融炉を休止又は廃止して焼却灰の委託処分を行う施策も選択肢から除外しなければなりません。したがって、残されている選択肢は2村が焼却灰を自己利用する選択肢だけになります。なお、代替措置を講じた場合は溶融炉を廃止せずに休止していても、地域において溶融炉と同様の社会資源が充足していることになるので地方財政法違反にはなりません。
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(注)溶融炉を廃止するために2村が講じる代替措置に「最終処分場の確保」という選択肢はありません。また、「外部委託による焼却灰の資源化」という選択肢もありません。したがって、2村にはこのフローにある選択肢しか残っていないことになります。ただし、焼却炉の長寿命化については、焼却炉の維持管理の状況によっては免除される可能性があります。
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(注)この資料は前の記事で使用した資料と同じものですが、2村が代替措置を講じて溶融炉を廃止することを決定した場合であっても、実際に代替措置を講じるための準備を完了しなければ、インフラ長寿命化行動計画の策定に必要になる「中長期的なコストの見通し」を立てることはできません。浦添市はその見通しが立つまで待機していることになりますが、今年の12月頃がタイムリミットになります。
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【結論】
(1)1市2村は平成29年3月までにインフラ長寿命化基本計画に基づく「行動計画」を策定しなければならない。
(2)1市2村が広域処理を前提とした「行動計画」を策定するためには、2村が平成28年12月までに中長期的なコストの見通しを立てなければならない。
(3)2村が中長期的なコストの見通しを立てるためには6ヶ月以上の準備期間が必要になる。
以上により、2村が6月までに代替措置を講じて溶融炉を廃止することを決定して、7月から代替措置を講じるための準備に着手しなければ、1市2村は単独更新を前提として「行動計画」を策定しなければならないこと、つまり、広域処理を白紙撤回することになると考えます。
したがって、その場合は、平成26年3月にごみ処理計画を改正した中城村の村長は、①法令違反を是正しないまま、②2村の住民に40億円以上の財政負担を強いる形で、③2期目の任期を満了することになります。
広域処理の成功を祈ります。