中城村北中城村清掃事務組合(以下「組合」という)は平成26年度から溶融炉を休止(平成27年度からは事実上廃止)しています。そして、離島の溶融炉と同じ年(2003年)に川崎重工業というメジャーなメーカーの製品を整備しています。
川崎重工業は国内でこれまでに10基の溶融炉を整備しています。しかし、不思議なことに流動床炉の焼却灰(塩分濃度の高い飛灰)を単独で処理する溶融炉は組合の1基しかありません。他のメーカーのものも調べてみましたが、佐渡島と徳之島に1基ずつ整備されているだけでした。ただし、佐渡島の溶融炉は故障が原因で廃止、徳之島の溶融炉も故障が原因で休止しています。したがって、組合の溶融炉は離島の溶融炉と同様に、国内では稼動している事例のない溶融炉ということになります。
休止(廃止)している溶融炉の再稼動を考える場合、長寿命化が困難な場合は再稼動を考えてもまったく意味がありません。なぜなら、長寿命化を行わない場合は国の補助金が利用できないからです。補助金を利用して焼却炉だけ長寿命化するということはできません。
そこで、組合の溶融炉については再稼動は考えずに長寿命化だけを考えてみることにします。このような場合、組合側(消費者側)よりもメーカー側(生産者側)の視点に立って考えた方がより現実的な考察になります。
現在、川崎重工業は市町村向けの製品を「焼却炉+溶融炉」から「ガス化溶融炉」にモデルチェンジしています。このため、溶融炉の長寿命化よりも焼却炉と一緒に廃止して新たに「ガス化溶融炉」を整備することを提案してくるものと思われます。特に、組合の溶融炉は同社の製品としては1基しかない「オリジナルプラント」なので長寿命化を行った事例がありません。そういう場合、株式を上場している大企業はかなりナーバスになります。したがって、半分長寿命化を断る口実として「ガス化溶融炉」の整備を提案してくるものと思われます。しかし、組合はその提案を受けることはできません。なぜなら、長寿命化を行わない場合は国の補助金が利用できないからです。つまり、提案を受けると自主財源により「ガス化溶融炉」を整備することになるからです。
そうなると、どうなるか?
組合は、川崎重工業以外の業者に長寿命化を依頼することになります。ただし、ライバルとされるメジャーなメーカーは絶対に引き受けません。仮に長寿命化を依頼した場合は、間違いなく川崎重工業と同じように「ガス化溶融炉」を提案してきます。これは、いわゆる業界の常識でもあります。したがって、組合が長寿命化を依頼する相手は株式を上場していないマイナーな業者になります。
その場合、依頼を受けた業者はどう考えるか?
組合の溶融炉がどこにでもある普通の溶融炉であれば億単位の大きな仕事になるので喜んで引き受けるでしょう。しかし、川崎重工業製の製品としては国内に1基しかない溶融炉で、しかも、流動床炉から排出される塩分濃度の高い焼却灰(飛灰)を単独で処理する溶融炉の長寿命化を行うことになります。そうなると、多分、二の足を踏むはずです。金額が大きいだけに失敗は許されません。溶融炉の長寿命化を行うことができる業者であれば組合の溶融炉が水蒸気爆発のリスクが高い溶融炉であることはすぐに分かります。したがって、これも業界の常識になりますが、適当に数字を入れたあり得ない金額の見積書を提出して、実質的に受注を辞退することになると考えます。
組合にとって残された選択肢は1つしかありません。それは、川崎重工業に頭を下げてお願いするという選択肢です。国内に1基しかないとは言え、自社の溶融炉を整備している訳ですから、メーカー側もそこまでされれば逃げる訳には行きません(もしかしたら逃げるかも知れません)。しかし、このブログの読者であればその後でどうなるかは容易に想像ができるはずです。そうです、事業費がメーカー側の「言い値」になります。しかも、長寿命化を行った事例のない国内に1基しかない「オリジナルプラント」ですから、組合としては事業費を精査することもできません。
なお、国内に1基しかない溶融炉というのはメーカー側にとっては「汎用炉」ではなく「実験炉」という位置付けになると考えています。
以上により、このブログの管理者は組合の溶融炉は再稼動を行っても意味がない(再稼動すると休止する前よりも「運転経費が高くなる」)と考えます。
※組合の焼却炉がせめてストーカ炉であったら長寿命化の可能性はもっと高くなったはずですが、国内に9基ある川崎重工業製の溶融炉(汎用炉)のうち問題なく稼動しているのは3基しかありません。それを考えると、やはり、長寿命化はかなり厳しい状況になると思われます。今は「ガス化溶融炉」の時代になっているので、組合だけでなく「焼却炉+溶融炉」という一時代前のプラントを整備している市町村にとっては、頭の痛い問題が待ち構えていることになります。