紀勢自動車道を大内山ICで下り,国道42号線を南下し,紀北町の梅ケ谷駅の手前を山手側に進んでいくと,ツヅラト峠の登り口がある.オートバイを路肩に停めて,身支度を整えたら峠を目指して出発だ.
ツヅラト峠は,三重県の大紀町と紀北町とを結ぶ標高357メートルの峠道だ.峠の名前の由来通り,九十九折れの道が続く.伊勢神宮と熊野三山とを結んだ,かつての巡礼の道だ.
国道42号線の荷坂トンネル付近に,江戸時代の街道整備で荷坂峠道が整備されたものの,伊勢と紀伊との境界だったこの峠は,ちょっと信じられないが,昭和初期まで生活道として使われていたそうだ.
鬱蒼と生い茂る樹木によって,午後を過ぎても太陽の光は,あまり差し込んでこないため,辺りは薄暗く神秘的な香りが漂っている.一部だけ,樹木の葉が透けるほどの強い光が差し込んでいて,葉が緑色に輝いているように見えるのが美しかった.
この日は,春一番のような風が吹き荒れ,気温も20℃近くまで上昇した暖かな日だった.汗がにじんでくるほどのきつい上り坂が続くが,時折,吹き荒れる風が熱くなった体を冷やしてくれて,とても気持ちよかった.
そして,辛い上り坂を越えると,ようやくツヅラト峠へたどり着く.峠には,休憩のできる東屋と東屋の先に見晴らし台がある.まずは,東屋で遅めの昼食をとることにした.朝から何も食わずだったので,コンビニ飯でも最高においしかった.
展望台に行ってみると,紀伊長島方面を一望することができた.かつての巡礼者たちも伊勢神宮からやってきて,ここで初めて熊野の海を見たという.山並みが海に向かってゆるやかに勾配を下げているのがわかる.何ともきれいな山容だと思う.
山の麓から,海の方へ長島町が伸びている.ズームレンズに切り替えてみると,長島港までよく見えた.港にある大きな建物は,三重漁連の建屋で間違いないだろう.
そして,長島港の沖合の方に島が浮かんでいる.大島という周囲500メートルほどの無人島で,暖地性植物群落として国の天然記念物に指定されているらしい.島はスダジイで覆われ,内部の植物は原始に近い状態で保存されているそうだ.
登ってくるまでの間は大変だったけれど,ツヅラト峠は熊野灘を一望できる素晴らしいところだった.
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