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東西に広がる島根半島のちょうど中央部分は,島根町の野波や加賀(かか)という場所で,リアス式海岸が複雑に入り組んでいる.チェリーロードという桜並木の海岸線を西へ進んで行くと,加賀の海岸方面へと分岐していく道がある.
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この加賀の海岸方面へ向かう道は,大変狭く,軽自動車が何とか通れるくらいの道幅になっている.離合箇所もほとんどなくて,道路の両脇,そして頭上には草木が生い茂っていた.
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この草木の生い茂る狭路を,対向車が来ないことを祈りつつ,辛抱つよく進んで行くと,急に開けて,視界に飛び込んでくるのは青い海だった.人にとってこの瞬間は,暑さを忘れるように遺伝子がプログラムされていることを気付かせてくれる.そして,この瞬間を味わうために,オートバイに乗っている気がしないでもない.
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道は海岸に出ると行き止まりになっていて,小さな防波堤のある広場となっていた.海に降りられる様にもなっているが,アワビ・サザエ・.ウニ等の不法採捕は犯罪であると書かれた赤い看板が設置されていた.正面に見えるのは,的島だそうだ.
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この防波堤のある場所から,西の方角を見ると海岸線の先に奇岩を確認することができる.ぽっかりと空洞の空いた奇岩があって,その形から象岩と呼ばれているそうだ.
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この辺りの海岸一帯は,加賀の潜戸(くけど)と言って,海岸洞窟や奇岩に富んだ景勝地になっている.出雲国風土記によると、松江市鹿島町の祭神である佐太大神の出生地であるという.古くからの神話が残る,信仰の場であったようだ.この人の気配が全くしない象のいる海岸は,とても神秘的な場所だった.
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