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島根町加賀の複雑に入り組んだリアス式海岸は,海岸洞窟や奇岩に富んでいる.この付近一帯は,加賀の潜戸(くけど)と呼ばれている.北側の海岸で象岩を見た後は,来た道を真っすぐには戻らず,分岐しているもう一つの狭路を進んでみることにした.
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象岩へと向かう道も酷く狭かったけれど,このもう一つの分岐道は,さらに狭かった.道路の両脇から,踊り出るように草木が生い茂っていた.草木と接触するのは,オートバイのカウルだけでなく,ライダーの体もだ.
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草木を分け入りながら進んで行くと,今度は一変して,山中海岸の鬱蒼とした狭路になる.当然,スピードは上がらず,1速・2速で進んで行くので,ラジエターファンが唸り出す.ただでさえ猛暑日で暑いのに,オートバイからの熱気が加わって,さながらジャングルを進行している気分だった.
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そして,ジャングルのような山中海岸を走り抜けた先に広がっていたのは,空と海だけだった.道は,残念ながらここで行き止まりとなっていた.一体,何のために造られた道なのだろうか.少し唖然としてしまった.
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休憩を兼ねてオートバイから降りて,海を見渡してみると,道に対する疑問はすぐに解けた.ここから海を眺めると,海岸付近にあると思われる灯台が,海からひょっこりと頭を出していた.一見すると,灯台が海に沈下しているようにも見えた.
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よく見ると,道路の舗装が途切れた先に,海岸の方へと下って行く一本の道が続いていた.きっと,この道を歩いて行けば,灯台のある海岸まで辿り着けるのだろう.灯台の下まで行こうか,一瞬迷ったが,あまりの暑さに行くのは断念することにした.もし行けば,汗だくになって戻って来て,ツーリングの続行が困難になることが,容易に想像できた.
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そして,一見謎に見えるこの灯台は,島根町加賀のリアス式海岸西端にあって,ちょうど潜戸(くけど)―海岸洞窟の上に立っている.潜戸めぐりの遊覧船が,この灯台を目指してやってくるのかもしれない.
灯台のもとで見る日本海は,きっと,もっと素晴らしいことだろう.
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