尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

ノア

2005年11月01日 14時31分07秒 | 詩の習作
終わりそうもない
雨音をききながら
まぶたを閉じて
地下の水溜りに
紙の箱舟を浮かべ
漂流させてみた
動物達はいない


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

水枕

2005年11月01日 14時26分08秒 | 短詩集
煉瓦色の溺死体
自分におぼれましたね

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2005年11月01日 14時18分06秒 | 詩の習作
雲雲雲雲雲雲雲雲雲
 
     雪

  雪
       
      雪      
       
    雪     

 雪 

       雪
 
   雪

雪雪雪雪雪雪雪雪雪




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2005年11月01日 14時13分11秒 | 少年詩集
息を吸うことと
吐くことの境に
凪のような
わずかな
仮死がある

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

聖母

2005年11月01日 13時58分37秒 | 自選詩集
犬と呼ばれていても

吾が子を見守る母は

聖母の眼差しで

檻の中から

見上げていた


人の手に

乗せられている

まだ目の開かない子は

まもなく

買われていくだろう


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2005年11月01日 13時50分35秒 | 自選詩集
星は一冊の本だろう
僕も一冊の本だろう
誰かが今読んでいる本だろう

いつかは
あくびとともに
閉じられるだろう

宇宙は
最後の本になるだろう


   (2003.7.3)


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

椅子

2005年11月01日 13時44分04秒 | 自選詩集
あなたの
大切にしていた
白い椅子に
腰掛けてみる
あなたの
透明な身体に
わたしを重ねてみる

鏡をまっすぐ
見つめ
あなたのように
わたしをみて
微笑んでみる



        (2003)

   尾崎まことの言葉の森へ(トップ)


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

満月には爪切りを

2005年11月01日 13時38分11秒 | 自選詩集
永遠に
片思いの女と会う夜は
満月がいい
ひげを良くそり
爪切りを用意しよう

かわいい女は
わがままだ
公園のベンチで
丸い月を見て
ダダをこねるだろう
あたし 
とがった三日月が好きよ

じゃあと背伸びして
爪切りで満月をパッチン!
できた三日月をカッターにして
天蓋のカーテンを裂く

星が降る降る
地球が笑う
芝居が始まる

「乱暴おやめ銀河の狼、宇宙が壊れるよ!」
「そういうお前は僕を裏切った
 天の川の赤頭巾!」

トラウマは繰り返す
裂かれた宇宙の皮の向こうには石がごろごろ
僕の腹の石か?
帰れというのに帰らず
耳を長くしたのは君だったくせに
いや もう過去のことは良い
僕は門限が気になってくる
宇宙を縫いにかかっている
赤ずきんちゃん
ホッチキスを

最近の赤頭巾は
今日は無理なら明日でも
わたし食べられたい
はっきり言う
えらい ほんとにえらい
海に行きたいとも言う
旅に行きたいとも言う
あそこのお好み焼き
食わせろともいう

恥ずかしいのはオイラ
もう鋭い爪もない牙もない
だから
これから恥ずかしことを言うよ
よく響く低音で
満月には
君の耳の詩を歌いたい

女の耳は
鍋で玉子のようにゆでられて
月のように昇ったのだ
むかし赤ずきんであったものが
水蒸気を吐きながら
やっと言った
満月には爪切りを!


          

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

千年の木

2005年11月01日 13時17分50秒 | 自選詩集
人間には目がある
木には目がない
あたりまえか

千年の木を前にして
果たして言えるのか
千年の木を見たと
たかだか人間は
百年である

日照りの日々を
あるいは
嵐の日々を
千年だ
泣かず笑わず
すくっと立って
千年だ

誰も食べず
誰も殺さず
切る人がおれば
バサリと切られてやり
雷様が怒れば
ザックリ裂かれ
山火事あれば
メラメラ燃えあがる
その覚悟で
すくっと千年だ

千年の木よ
あなたは
宇宙のなかの
一つの決意ではないか
千年天に向かって立つ

人間は
宇宙のなかの
試みではないか
目をつけられ
口をつけられ
足をつけられ
手をつけられ
さてこの手で
千年の木を切るか

この試みに
人間は怯えていい
千年の木を見たと
言うな


  (2002.5.30)
   センチメンタルキャメラ より

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

喪失

2005年11月01日 12時57分58秒 | 自選詩集
僕たちは路地の
危険な曲がり角を
無事曲がりきったのであるが
希望を抱いた
眼前にひらけた風景は
地平も無く
天まで駆け登るような
荒地だった

荒涼として
荒涼として
やがて僕たちの
一切の喪失に気がついた

喪失とは何かの
遺失ではなく
全てに対して信じることの
無気力である
神であろうが人であろうが
自然であろうが未来であろうが
信じる能力を失ったのだ
君も僕も

信じなくなると
僕たちの青い鳥は
指の間から
永遠飛び去った

実に喪失とは
所有ではなく
信仰の問題であった


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

廊下

2005年11月01日 12時06分01秒 | 自選詩集
すべてを
アスファルトと
コンクリートで覆ったので
人間は忘れてしまった
立たされていること
宇宙の廊下に

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

力士

2005年11月01日 11時59分07秒 | 自選詩集
拍子木の音
カンカンと響き渡り
宙に浮かぶサークルに
呼び出された一対の
美しい力士達
まぶしいけれど
影がない

戦いが終わり
ふたたび
手のない拍子木が打たれ
真っ暗な楽屋裏に
呼び戻された力士達
勝ち負けなんか
どうでもいい

形のない力士達
喘いでいる
夢は見ない

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

裏庭

2005年11月01日 11時51分51秒 | 自選詩集
僕の裏庭は
眼の後ろに広がっている
まばゆい海だ

海をこぼさないよう
顔を皿にし
片手に乗せて
白い制服の
ボーイのように
移動する


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

欲望

2005年11月01日 11時46分05秒 | 自選詩集

満月の
毛が立っている

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

美しいマッチ

2005年11月01日 11時42分21秒 | 自選詩集
煙草とアルコールと
あらゆる物語が
尽きてしまった
場末の深い闇に
意味のないマッチをすると
同時に千人の男の右腕が
千本のマッチを擦り
千人の女の揃えられた膝頭が
果物のように浮かんだのだ

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする