永遠に
片思いの女と会う夜は
満月がいい
ひげを良くそり
爪切りを用意しよう
かわいい女は
わがままだ
公園のベンチで
丸い月を見て
ダダをこねるだろう
あたし
とがった三日月が好きよ
じゃあと背伸びして
爪切りで満月をパッチン!
できた三日月をカッターにして
天蓋のカーテンを裂く
星が降る降る
地球が笑う
芝居が始まる
「乱暴おやめ銀河の狼、宇宙が壊れるよ!」
「そういうお前は僕を裏切った
天の川の赤頭巾!」
トラウマは繰り返す
裂かれた宇宙の皮の向こうには石がごろごろ
僕の腹の石か?
帰れというのに帰らず
耳を長くしたのは君だったくせに
いや もう過去のことは良い
僕は門限が気になってくる
宇宙を縫いにかかっている
赤ずきんちゃん
ホッチキスを
最近の赤頭巾は
今日は無理なら明日でも
わたし食べられたい
はっきり言う
えらい ほんとにえらい
海に行きたいとも言う
旅に行きたいとも言う
あそこのお好み焼き
食わせろともいう
恥ずかしいのはオイラ
もう鋭い爪もない牙もない
だから
これから恥ずかしことを言うよ
よく響く低音で
満月には
君の耳の詩を歌いたい
女の耳は
鍋で玉子のようにゆでられて
月のように昇ったのだ
むかし赤ずきんであったものが
水蒸気を吐きながら
やっと言った
満月には爪切りを!