尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

法則

2005年11月13日 23時58分45秒 | 短詩集
夢の中では
眠くならない

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

水のまくら

2005年11月13日 23時52分33秒 | 短詩集
ゴム
と呼べば
たたりがあるような
赤い手の平
の上で

放熱しながら

タイタニック号の
冷たい氷の
海の音を聞いている


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

秘境

2005年11月13日 23時46分32秒 | 詩の習作
ギアナ高地の
エンジェルの滝より
もっと密やかに

私どもの身体の
今、ここにある暗闇には
深淵のクレパスが走り
いちまいの
水の膜が
とうとう
落ちている

今、この瞬間において
昨日を明日へ
更新し続ける
命の瀑布である

落ちている
私の
いちまいの水の膜に
蒼い刺青の
男の神の仮面を流し
獣の口は
ほう ほう
と呼ばわり

おちている
あなたの
いちまいの水の膜に
朱の刺青の
女の神の仮面を流し
楕円の口は
おう おう
と答え

激しく落下する
あなたの
いちまいの水に
私は身投げする
もういちまいの燃える水
星のしぶきを
ばらまけい ばらまけい
踊る二枚の瀑布の祭り
甦る
ビックバンの記憶

二枚は
やがて静寂の
いちまいの朝になる
しかし
明日には届くことはない

今ここにある
秘境
私と
あなた

 



コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夏の幽霊

2005年11月13日 23時42分53秒 | 詩の習作
弱ったときの
生きつづけることの困難に
思いも及ばず
僕が僕であることに
すべて賭けていた頃
微熱に狂って
何度も抱こうとしたのは
この世の娘ではなく
夕立の雨と雨との間を
濡れずに抜けてきた
足首の綺麗な
夏の幽霊
君ではなかったか?

弱りはじめ
老いはじめてからはじめた
たどたどしい僕の詩を
熱のある若い人たちが
ひくひく嘲笑するとき
僕の背中に手をそえ
顔を埋めてくれたのは
夏の幽霊
あの日から年のとらない
君ではなかったか?

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

病気です

2005年11月13日 23時27分51秒 | アバンギャルド集
夜を待てないのか昼間に
黒く汚れた花火が
ヒョウ、ヒョウ
曇天を駆け登っている

名物の花見に
一本
咲けなかった桜
立っていた

ふやけた花見の列の
何かに選ばれた何人かは
そこへくると本気を出して
梢から根元まで見下ろしたあと
黄色い歯をむき
指をさし 
つばきする

その一人
飴しゃぶる子供が言った
切ってしまえ
大人が追従の笑いをする

幹にぶらげられた
札が揺れている
私は病気です

砂ぼこりの
向こう
列の先頭あたりでは
もうけんかが始まった

咽喉が渇く
この鈍感な列
叫びたい
お前ら病気です


 
  
     (2004.5/21投稿掲示板「曇天」より)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

水脈

2005年11月13日 23時13分11秒 | 詩の習作

息を吸う
シャワーの圧力を最大にする
息を止め目を閉じる
流れてゆく水の音を追う
水脈の先にきっといるだろう
青いイルカことを思う
イルカに乗った
見たことも会ったこともない
姉さんの清らかな裸を思う
息を吐く
ジャンプーふりかける
泡だらけになる
わめきながら
頭をかきむしる
イルカが鳴く



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ユリたち

2005年11月13日 23時00分33秒 | 詩の習作
バスを待つ広場に
ケンケン音響をさせる
おびえた笑いの
若いユリたちよ
濃紺の制服を着た
揺れるユリの列よ

お前達の
すべらかな青白い首と
よごれた襟の間だから
陰気な命の噴水が
立ちのぼっている

その噴水のてっぺんに
お前達のさし上げている
その黄色い玉は
なんなんだ

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする