尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

ハンカチ

2005年11月03日 23時45分21秒 | 自選詩集
ベッドの中で
今日一日拡がったわたしを
折りたたみます
二回折ると4分の1
四回折ると16分の1です
ハンカチほどの大きさにして
夜のポケットに
忍び込ませるのです


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キスの後

2005年11月03日 23時38分05秒 | 自選詩集
キスの後
神を見るように
うっとりあなたの裸を
眺めていますと
僕の身体は
あなたになって
同じように僕を見ていた
あなたの身体は
僕になった

あれから三十年
せいいっぱい
沢山な人を
愛したつもりですけど
あなたの体は
こんなに
痛んでしまいました

僕の体は
どうしていますか
それとも
あんなキス
誰かと繰り返して
わたしの身体は
どこか他へ
行ってしまいましたか


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浜辺

2005年11月03日 23時29分24秒 | 短詩集

昼間
水泳客の
けたたましい
笑を吸った
砂の浜辺は
いつか
我慢できずに
笑うでしょう
コメント (2)
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言の葉

2005年11月03日 23時21分46秒 | 詩の習作
それはいつもあなたの
ねえ、聞いてよ
から始まりました

月のない夜には
三角の口先で
緑の葉をクチュクチュ
噛み砕き 
飲み込んでは
甘い露を分泌し
僕の手を糸巻きにして
銀の糸を紡がせたのです

ツーと 
ツルツーと 
ひっぱり ひっぱるとき
あなたの濡れた糸は
露呈した過敏の神経線維であり
あなたの顔は
ふくれあがった玉子
の表面ように美しく
魚がかかった
釣り糸のようにひくひく引いて
それは一晩中続く
二人の秘密でもありましたが
たいてい夜明けには
僕はあなたの作った
言葉の繭のなかで
魂の抜けた仮死でしたね

鏡台で化粧を終えたあなたは
横目でベッドにくたばっている僕を
ちらり見てから窓を開け
意気揚々と飛び立ったのです



  (2003.6・5)

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青麦

2005年11月03日 23時09分23秒 | 自選詩集

おまちかねのバスが
丘に光ったら
整列していた僕らの頭は
風が来た青麦の穂ように
ゆらめくでしょう
それから
やあとか 
おはようとか
お先にとか
なにも言わないけれど
頭を少し垂れ
つま先に力をこめ
ステップを登ります
今日という 
行き帰りのバス

  
   (2003.5/26)

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三本

2005年11月03日 22時57分55秒 | 少年詩集
忘れるもんか
僕の帰りを
歓迎してくれたのは
人間ではなくて
三本足の犬だったよ
巧みにランスをとって
揺れながら
しっぽを振ってくれたよ
愛なんて
忘れるもんか
二本でも四本でもない
三本だよ


  (2003.4/28「しっぽ」)

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求道

2005年11月03日 22時50分50秒 | 短詩集
無神論者のお前の舌には
億万個の目がついているだろう
お前のそのざらつく目で
この世のなめきれる面を
なめて、すべてなめつくして

よく聞けよ

なめきれぬものの輪郭が
カッカッカッカッ
神だろうが!
コメント (3)
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リング

2005年11月03日 22時47分35秒 | 少年詩集
君は聞くだろうか
夜明けにゴングが鳴るだろう

ゴングは打たれた
見えない敵を相手に
ファイターは君しかいない

このリングで
君の敗北はない
君が自身で
負けを認める以外

勝利とは
倒すことではなくて
倒されて
立ち上がることだ

倒れる数だけ
勝利がある

夜明けにゴングが鳴るだろう
今日という日が
君のための
宇宙のリングだ


  (2003.4/6)
コメント (1)
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花園

2005年11月03日 22時41分02秒 | ライトバース集
そよ風のなかで
ハミングしながら
いい香りの
花を摘んでいるひとは
子供よ あなたの
母ではありません
男よ あなたの 
妻ではありません

ほらね
あなたの愛している
美しいひとは
指をとめ歌をとめ
光りの中で唇を伸ばし
秘密の甘い蜜を吸う
影です


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海峡

2005年11月03日 22時30分08秒 | 自選詩集
一日の終わりに
疲れはて
眠ろうとする男は
節くれ立った指を
腹の上で組み合わした
それが今日の
ありふれた罪のためだとは
気がつかない

男がいびきを
立てる頃
腹の上から飛びたつ
ほの白い骨の翼は
暗い海峡を渡るのだ

男がとっくに
忘れ去った
祈りの代わりに





コメント (2)
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アダムよ

2005年11月03日 22時13分57秒 | 詩の習作
さんざん
食い散らしておいて
今さら林檎の種を
まいておこうなんて
手遅れです
アダムよ 
終わったのです

愛が残っているなら
それは愛に返して
二人は空のように
からっぽになりましょう

わたしのアダムよ
林檎はね
食べなかった
ことにしましょう
あの方には 
蛇が一人で食べたと
言いなさい

私はもう
あなたの名前も忘れました
男よ、さあ出発ですね




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筋肉の思想

2005年11月03日 20時40分51秒 | 詩の習作
筋肉に希望はいらない
決意で十分

コメント (1)
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ほたるの男

2005年11月03日 20時30分52秒 | 詩の習作
夜、灯りを消すと
かすかに自分が灯る




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2005年11月03日 20時20分42秒 | 詩の習作
風よ
でたらめに穴のあいた管
だからといって
俺を吹くな
コメント (1)
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酔っぱらい

2005年11月03日 11時15分02秒 | 少年詩集

風もないのに
チューリップの花が
大きく揺れています

なるほど
お部屋の中では
お客のミツバチ君が
蜜に酔っ払って
ダンスです


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