尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

傾き

2005年11月16日 23時41分47秒 | 詩の習作
生まれたときほんの
冗談でつけられた名前を
十年背中にしょった灰色の犬が
きちんと座って庭の木を見ている
雀のさえずりに耳が動いている

名前を呼べば
十年間そうしつづけたように
ふりむくにきまっているが
その背中のなだらかな傾きに
あまりに気まじめな
あばら骨の影が見えて
冗談のような名前は
呼べなかった

その代わり
背の角度で
木漏れ日と
小鳥のさえずりが
彼を呼んでいた

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目まい

2005年11月16日 23時06分45秒 | 詩の習作
二つのコヒーカップをはさんで
ここにいるのが僕で
そこにいるのがあなたで
そのあたりまえの僕が
舌をだそうとすると
ふつう僕の舌が出るのだが
ある朝あなたの舌が
出たりして


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羊の木

2005年11月16日 22時53分03秒 | 少年詩集
タンポポの
綿毛ぼうずの木が
丘に立っていた

うららかな日に
そよ風が吹くと
次から次へと
飛んでゆくのは
羊の子たち

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ないもの

2005年11月16日 22時47分34秒 | 短詩集

描かれなかった絵
というものが
描かれた絵の回りには
無数にあるものだ

書かれなかった詩
というものが
書かれた詩の回りには
無数にあるものだ

生まれなかった人間
というものが
一人の人間の回りには
無数にいるものだ

コメント (2)
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2005年11月16日 22時39分31秒 | ライトバース集

今日あなたへ
伝わらなかった一言が
夜のわたしを悲しくしている
 
今日あなたへ
伝えたくなかった一言が
夜のわたしを厳しくしている

明日あなたへ
伝えたい一言が
夜のわたしを熱くしている

だからわたしの体は
たまらなく独り
ほら
こんなにくっきり
黙っている影

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2005年11月16日 21時30分38秒 | 短詩集
今、僕を呼んでください
たった今
昨日の僕が殺されています

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木陰

2005年11月16日 21時25分40秒 | 詩の習作
動かない木の気持ちは
あまり分からない
自分の鼻先を見たまま
動かない人の気持ちなら
すこしは分かる
木に成りすましたい
コメント (3)
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真実

2005年11月16日 10時16分38秒 | 短詩集
ほんとうのこと
言ってみるね
人間はみんなえらそうに
自分のふりをしている
犬じゃないから
花じゃないから
お化けじゃないから
星じゃないから
そして
自分が誰だかわからないから

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2005年11月16日 01時00分47秒 | 短詩集
女達は
少年目の前で
競って裸になった
白い雲の下には
家から海までの道ができた
少年は赤い舌をたらした
大きな犬を従え
その道を通った

ひどい凪の最中
ボートでひとりの女を知ったら
次の夏からは
海へ通じるその道は
草に閉ざされ
夏の犬は帰ってこなかった


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ぶどうの木

2005年11月16日 00時29分42秒 | 詩の習作
苦しい夢の中から
白い腕が二本伸びてきて
僕を木のように揺さぶった
これは夢よ
と告げたのだ
だったら
この夢のそとに何がありますか?
と腕に聞くと
わたしよと笑って
腕は君になったのだ
これも夢なんだろうと
ぶどうの木ような君を
揺さぶった

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雨滴

2005年11月16日 00時23分29秒 | 詩の習作
雨粒は
身投げして
天と地の
気の遠くなる
高さを測量し終えると
ガラス窓に
ぶつかった
今度は
自分をすりつぶし
定規にして
窓の対角線を
測っている

曇っている
ガラスの裏から
涙のようだと
指で
彼女をなぞっている

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首が回る

2005年11月16日 00時06分08秒 | 詩の習作
欲望が
萎えると
悟りが来るなんて
とんでもねえ

狂った
コンパスのように
奇妙な
首が回るのだ

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