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「でにをは」別口入力・三属性の変換による日本語入力 - ペンタクラスタキーボードのコンセプト解説

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別口入力[か]は対応用例が結構多い

2018-06-21 | 別口入力にまつわる諸問題
直近の記事で別口入力[な]や[だ]の用例・用法についてつっこんだ考察をしてきましたが今回は同様に別口入力の助詞の中から多岐にわたる用例のある「か」をクローズアップしてみたいと思います。
ペンタクラスタキーボードの基本コンセプト解説中において各種別口入力の一覧にまとめておいた項目における「か」の記述では、
・不確かな意の副助詞
・疑問/勧誘/反語/情動の終助詞
・列挙/疑いの並立助詞
といくぶん簡単に用法をまとめておりました。しかしこれでは多岐にわたる助詞「か」の用法についての説明は不十分でありますので恐縮ながらウェブ辞書の力をお借りして全体像をお示ししたいかと思います。
特に古語・古文関連で使われる係助詞の用法の「か」については少しも触れていませんでしたのでこちらの記述であらためて再確認していこうと思います。
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「か」の用法

[副助]種々の語に付く。
1 (疑問語に付いて、または「…とか」の形で)不確かな意を表す。「どこ―で会った」「彼も来ると―言っていた」
2 疑いの気持ちで推定する意を表す。「心なし―顔色がさえないようだ」「気のせい―彼女のひとみがぬれているように思われる」
3 (「かもしれない」「かもわからない」の形で、または「かも」の形で終助詞のように用いて)不確かな断定を表す。「急げば間に合う―もしれない」「やってはみるが、だめ―もわからないからね」

[終助]文末にある種々の語に付く。
1 質問や疑問の意を表す。「君も行きます―」
2 反語の意を表す。「いいかげんな意見にどうして賛成できよう―」
3 難詰・反駁(はんばく)の意を表す。「そんなこと知るもの―」
4 勧誘・依頼の意を表す。「そろそろ行こう―」「手伝っていただけません―」
5 (多く「…ないか」の形で)命令の意を表す。「はやく歩かない―」「よさない―」
6 驚きや感動の気持ちを表す。古語では、多く「も…か」の形をとる。「だれかと思ったら、君だったの―」「なかなかやるじゃない―」
「浅緑糸よりかけて白露を珠(たま)にもぬける春の柳―」〈古今・春上〉
7 引用した句の意味やある事実を確かめ、自分自身に言い聞かせる意を表す。「急がば回れ―」「そろそろ寝るとする―」

[並助]
1 (「…か…か」または「…か…」の形で)いくつかの事物を列挙し、その一つ、または一部を選ぶ意を表す。「午後からは雨―雪になるでしょう」
「都へのぼって、北野―、祇園―へ参ったとみえて」〈虎明狂・目近籠骨〉
2 (「…かどうか」「…か否か」の形で)疑いの意を表す。「公約が実現される―どう―」「資格がある―否―が問題だ」
3 (「…か…ないかのうちに」の形で)ある動作と同時に、または、引き続いて、別の動作の行われる意を表す。「横になる―ならない―のうちに、もういびきをかいている」
4 (「…か何か」「…かどこか」「…か誰か」の形で)最初の「か」の上にある語と類似・同類のものである意を表す。「ライター―何―火をつける物を貸して下さい」「喫茶店―どこ―で話をしませんか」

[係助]体言・活用語の連体形・連用形、副詞、助詞などに付く。上代では活用語の已然形にも付く。
1 文中にあって係りとなり、文末の活用語を連体形で結ぶ。
①疑問を表す。
「かかる道はいかで―いまする」〈伊勢・九〉
②反語を表す。
「桃李(たうり)もの言はねば、たれとともに―昔を語らむ」〈徒然・二五〉
2 文末用法。
①疑問を表す。
「石見(いはみ)のや高角山の木の間よりわが振る袖を妹(いも)見つらむ―」〈万・一三二〉
②反語を表す。
「心なき鳥にそありけるほととぎす物思ふ時に鳴くべきもの―」〈万・三七八四〉
③(「(も)…ぬか」「(も)…ぬかも」の形で)願望の意を表す。…てくれないものかなあ。
「わが命も常にあらぬ―昔見し象(きさ)の小川を行きて見むため」〈万・三三二〉
[補説]の「か」は、係助詞「や」と違って疑問語を含む文にも用いられる。中世後半になり、係り結びが行われなくなるとともに両者とも本来の性質を失い用いられなくなり、「か」は副助詞、さらに江戸時代以降は並立助詞としての用法も一般化する。また、「か」は「や」の衰退に伴ってその文末用法を拡大し、現代の終助詞としての用法に引き継がれている。

提供元:「デジタル大辞泉」

https://dictionary.goo.ne.jp/jn/34861/meaning/m0u/か[副助終助並助係助]の意味 - goo国語辞書


まず最初の項目の疑問語に付いて…のくだりでは他サイトで知った関連事項も付け加えさせていただきたいと思います。
疑問語はど系列の指示詞(どの・どこ・どれ・どちら・どなたなど)、代名詞(なに、だれ、いつ)、数詞(いくつ、いくら)、副詞(どう、なぜ)、連体詞(どの、どんな)
などがあり、ある物事が不明の時に、それをたずねるために使われることばです。ただ、特定の品詞としてあるのではなく疑問の用をもつ複数の品詞にまたがって定義されるもので、それゆえに単に「疑問詞」といった語とは明確に区別する意味で「疑問語」と呼ばれています。
この疑問語に関連してもう少し深く突っ込むと「だれか・なにか・どれか」などと一まとめにして「不定語」とする考え方(つまり「疑問語」と呼ばない)もあります。
厳密な考察の文書によれば「どこ」文の疑問文には「ドコ疑問文」と「Yes-No疑問文」があり応答の内容が特定のどこかを答えるのとは別に、「彼女の態度はどこか変だろう?」のようにYesNo式の答えとなり疑問の対象も事態の真偽・是非にあるものが区別されるものがあります。
この場合の「どこか」は疑問ではなく不定であることをあらわしており何を指すかが定まっていない言いようになります。
このあたりの引用は ・「疑問語」と「不定語」(2010 大槻美智子)に詳しく解説されています。
また、別の文献では
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疑問語に「か・も・でも」をつけたものを不定語と呼ぶことにします。何を指すかが定まっていない、不定である、という意味の呼び名です。
具体的な例は、次のようなものです。

だれか・だれも・だれでも
なにか・なにも・なんでも
どこか・どこも・どこでも
どれか・どれも・どれでも
     どちらか・どちらも・どちらでも

疑問語との組み合わせによっては、「×なぜも」のように存在しない場合も
あり、また「どうも・どうか」のように「どう+も/か」とは考えにくいもの、
つまりもう分割できない一語と考えられるものもあります。

「+か」は、不定であること、はっきり指定(指示)できないことを表しま
す。「+も」は全部がそうであること、「+でも」は任意の対象がそうである
こと、を表します。と言ってみてもよくわかりません。「+でも」の用法は後
で考えてみることにして、まず「+か」と「+も」を考えてみます。

(引用元)・庭 三郎 の 現代日本語文法概説-16疑問語・不定語
という解説もなされています。疑問語に+か、+も、+でも などがつくとそれらを不定語とよぶケースはままあるようです。
また不定語の類の中には「いつか」みたいなものや数量勘定をともなう「幾-か」というものや助数詞をともなう「何個か」「何キロか」などといったものも文脈によっては不定語として使われているものだと推測します。
あと副助詞で特徴的なものでは「どころか」=形式名詞「ところ」に副助詞「か」の付いたもの があります。言いたいことに大きな隔たりがありそれを強調したいときに使われます。(転じて接続助詞の機能もあるとする見解もあります)
ここでの強調は、「~どころか」で直前のものを否定する文脈が含まれているので若干、2 疑いの気持ちで推定する意を表す-とも重なってくる面もあるかと思いますがやはり独特の機能の用法ではないかと思います。

つづいて終助詞の「か」の用法では、当ブログでカバーされていない用法として難詰・反駁(はんばく)の意…というのがありますがこれは
「そんなことをする人がありますか。」「駄目じゃないか」「公正と言えるでしょうか」
などがあります。
あとは命令と決定言い聞かせがもれていましたがこれらも
「よさないか」「さてねるか」
などがあります。終助詞ひとつで7つもの用法があるのですから驚きです。

さらに並立助詞を紐解いていきますと、列挙・疑いに限らず「…か(*)…か」の形のもの一般のもので「…」に配置されるものには名詞/名詞句ばかりでなく動詞句でも成立しますし、
「入ったか入っていないかのうちに」などのように複合して全体として副詞句を形成したりもします。
「その製品は良いものかどうか(を)聞いた。」の場合ですと前述の庭三郎氏の解説では[疑問節]=「疑問文が名詞節となったもの」とあります。
いずれにしましても、「か」が2回続くというのが特徴的であります。

さて最後に古語でつかわれる係り結びの用法となっている係助詞につきましては、IMEで古典表現の隅々にまで対応するというのは難しそうでありますから、例えば①いかでか のように疑問をあらわすものでも文法的・意味的に解析・理解したうえで処理するのではなく字面のまま個別に辞書登録するというありきたりの方法で対処するのが適当ではないかと思います。(いかで[か]として辞書引き)
次の反語の「か」は一般に「ぞ・なむ・や・か」の係り結びにくるものが「連体形」になるというルールがあります。ここまでわかったうえで適切な変換をするのは難しいでしょうが、あえて[か]の別口入力を入れることによって少なくとも何らかの文法要素だということがわかって他のパーツは非文法機能要素だと当たりをつけることができるのでいくらかは役に立つかと思います。
あとの2①②③疑問・反語・願望の用法はそれぞれ文末用法ですから意味構造まではわからずともとりあえずは文末配置ということでたとえ古文であってもマーキングの便宜は足せる(代替的に)かと思います。


ここまで辞書・文献からの補足を並べてみました。
さてここでペンタクラスタキーボードの別口入力の面から入力がらみの「か」の接続要素に目を向けてみますと、助詞をはじめ[だ]や[な]、[て]それにル形動詞[○R]などのパーツとの接続も入り組んださまざまな組み合わせが考えられます。
例えば以下のようなものがあります
(例)「しようかな」「かも」「だか」「知ってか知らずか」「ググるか」
これらの例でも律儀に[か][な]のように煩雑に入力させるのは心苦しいところですが例外を増やして別口入力のパターン化した操作感を統一できないものあまり得策ではないのでここは原則通り別口入力をともなう形の操作でご理解いただきたいかと思います。
ただこれらと似たような接続のケースで「しか」のような一見[し][か]の複合に見えなくもない例がありますがここでの[し]は先般導入された新別口入力[し](サ変動詞)ではありませんので注意が必要です。
ちょっとややこしいのですが「しか」の用法には古文も含めると以下の4用法がありますので整理しますと
1過去の助動詞「き」の已然形(仮定)
2過去の助動詞「き」の連体形+係助詞「か」(疑問)
3終助詞「しか」(願望)(※多く「てしか」「にしか」の形で使われる)
これに現代国語で副助詞(とりたて助詞)として定着している「しか」がありますがこれは述語にかならず否定文が使われておりこちらは身近な用例となっています。
なので古文3用例+現代文1用例ととらえることにします。ここでも例によって古文対応は望めないので「しか」の字面は必ずしも[か]の別口入力を必須としない、あるいはあってもなくてもどちらでも弾力的に解釈するということであいまいな方針でお願いしたいかと思います。
ちょっと歯切れが悪いのですが、古文は何しろ現代語の単語辞書との兼用によって予期せぬ副作用があるかもしれないのでここは日常で使う現代語解釈を優先させていきたい方針です。
現代語の副助詞「しか」については「し」は別口入力ではないのでべたの「し」を打鍵するとして、「か」の部分はこちら(し-か)連語となった一部分として[か]を別口入力するのか、
あるいは少し違和感があるのでこのような副助詞やあるいは係助詞や接続助詞にも複数字のものがありソリッド感を保つために一部別口入力のような少しぎこちないストロークは回避した方が良いのかどうかを含め検討中ですのでここでは結論を急がないように保留としておきます。
ただ副助詞としての「しか」自体は現代語の解釈のなかで明確な分別要素として位置付けていこうとは思っておりますのであとは[か]を別口入力するかしないかの局所的問題として大枠としては現代文を優先していく方針は変わっておりません。


…以上でこれまでで最も用例の多かった別口入力パーツ「か」について相当量記述していきましたが「か」の用法は思いのほか多くこうして各用例について詳細に解説せねばなりませんでした。
それまででも「が」のように格助詞と接続助詞の2つの役割をもつものがありましたがこちらの「か」は副助詞・終助詞・接続助詞・係助詞と4カテゴリーにわたる用法がありその中でもさらに個別の細々した用法にわかれています。
これは圧倒的なバリエーションであり別口入力パーツの説明をするうえで「か」については特段の説明が必要だと思われるレベルのものだといえます。
あとはコンピュータが意味的な構造をどこまで理解できるかにかかっているかと思いますがこれは単に品詞接続表で接続コストを吟味するというプロセスにくわえて「か」の場合は複数の解釈が併存していくわけですからそれをうまく捌く仕組みが求められていくと思います。
恥ずかしながらここまで変換エンジンの具体的な見とり図さえ描けてはいない状態ですので接続コスト法についてつっこんだ見解をもつわけではありませんが文法的規則だけではなく語彙的コロケーションの接続特性についてもあわせて考えていければ良いなと思います。

あとちょっと別の視点から「か」について申し上げますと「か」は接尾辞の「化」や「価」「課」との誤変換誘発要素が突出して高いという特徴があり別口入力で分別することでこれらの誤変換を未然に防ぐことができるという点で重宝するかと思います。
「か」の接続配置の前後関係や語彙関係について適切な理解が進んでいれば文法的機能助詞としての「か」はひとまずはっきりと輪郭が浮き出ていくものですしそれとの相乗効果で他方べたの文字列「か」(これはつまり「化」「価」「課」に変換されるであろうチャンク)が体言的あるいはサ変動詞語幹としての機能をもつものだと従前にわかったうえで変換していくのは構造的にもよく考えられた振る舞いになるものかと思います。
難しいところはともかく、語尾が「か」だとややもすればなんでも「--化」してしまう誤変換に悩まされることがなくなるのは非常にありがたい事だと思います。
このような利点を生かつつさまざまな「か」の用法の構造的解析にも当座の道筋がつけば「か」の使い出も自在になってくるのでそこを目指して今回出た各用法を見直し・ブラッシュアップしていければ良いなと思います。

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