『笛物語』

音楽、フルート、奏法の気付き
    そして
  日々の出来事など

フルート奏者・白川真理

ウクライナ刺繍のワンピース

2023-06-29 00:14:32 | アンティーク
初めて購入したのが二年前、2021年の3月15日。

その見事で緻密な手仕事の美しさ、手触りの良さ、着心地の良さからすっかりハマってしまったウクライナ刺繍のワンピース。

それ以来、本当に、「普通」の現代の洋服を着なくなりました。

例外はフォーマルな場や、生徒さんの発表会の場。

こういう時は、シルクやベルベット等のツルっとした生地のキチンと感のあるワンピース。

でも、それ以外は一年中。

なので、バーゲンにも、アウトレットモールにも、すっかり興味が失せ、行かなくなってしまったし、レッスン帰りのショッピングセンターやデパートへの寄り道もしなくなりました。
殆どの製品は、みな奇麗にクリーニングされていて、修復もされているのだけれど、
中には100年前のものもあり、ものによってはほつれていたり、染みがついていたりするものもある。
でもむしろ、そういう「製品」としては残念な状態のものを購入して、自分で手入れするのも好きです。

ほつれているところは繕ったり、手縫いで裾上げするのも楽しい。

洗面所のシンクにお湯を張って酸素系漂白剤で30分程付け置きすればかなり綺麗になる。それからはネットに入れて洗濯機でドライモードで。

洗剤は、3種類を使い分け。

一番気に入っているのは、『マザータッチ』。なんと入浴剤にもなる洗剤・・・
「飲める洗剤」というちょっとギョっとする宣伝文もある・・
・・まだ飲んではいないけれど、入浴剤としては時々使っている。
排水口の汚れも洗濯機の汚れも分解するという優れもので、仕上がりも自然なふっさり感が。何よりウッディな香りが良い。


もう一つは『緑の魔女』。
これも上記のもの同様のエコなものだけれど、若干仕上がりはワイルドな感じ。


そして普通のエマールと無臭の柔軟剤。柔軟剤はまじない程度にしか入れない。
一番汚れが落ちて、なめらかに柔らかく仕上がるので、時々これも。

裏返してハンガーにかけて干し、乾いてから縫い目をひっぱっってやればピンとするのでノーアイロン。

漂白剤や洗濯でも落ちなかったサビの様な染みの箇所には、生地と同色の糸で刺繍してカバーすれば、殆ど気にならないくらいに。

元々がしっかりとした丈夫な生地なので、洗濯の度に生き生きして良い味わいになるのも楽しい。

思うに、昔、シーズンの度に新しい洋服が欲しくなっていたのは、もちろん流行もあるかもしれないけれど、それよりも、何度か洗ったり、クリーニングに出した洋服が今一冴えなくなっていたからかも。

今のピンとした洋服は「新品」の買ってきてすぐに袖を通した時が一番素敵だ。

でも、手紬手織り手縫い手刺繍のウクライナワンピースは、なんせ、元々が古いものなので、洗濯を重ねる程、こなれてきて魅力が増してくる。

・・じゃあ、枚数も少しでいいか?っていうと、これがそういう訳にもいかず、いつのまにか、かなりの枚数となってしまいましたが、一つ一つ個性が違うので、これはもう致し方ない。

シルエットや生地の感じはみなほぼ一緒なので、夫には、「まあ5着くらいになったかな~」と言っているけれど、真っ赤な嘘です。

みなネットで購入しているのだけれど、ロシアの侵略が始まってからは、ウクライナワンピースの売り上げは全て戦争孤児のために寄付しているという方や、ウクライナ出身の方なども居て、私の「物欲」も少しはお役に立っているのか・・

毎日着て、手入れして、眺めて・・という時間が大きな癒しとエネルギーになっています。

そして、その度にウクライナのこと、ウクライナ女性のことを思わずにはいられない。

ウクライナに早く平和が戻ってくることを祈りつつ。

サビの染みの上に刺繍。


最初は真っ青な染みだったものも漂白剤で綺麗に。





町田天満宮がらくた骨董市

2023-04-01 23:02:02 | アンティーク
コロナ禍となる数年前から骨董市への足は遠のいていました。

フルートが忙しかったというのもあるけれど、行けば必ず「掘り出し物」があって散財してしまうので。

今日も特に行こうと思っていた訳ではないのですが、8月開催の音楽家講座の会場本予約のために、鶴見まで行かなければならなくなった。

お天気はまさに春日和。

その上、ここ数日は何故か花粉症も出なくなっている。

鶴見は横浜線で東神奈川乗り換えで行くのですが、町田も同じ横浜線。

どうせ外出するのだから、ちょっと寄り道しましょう。

運動不足解消にもなるしね。

と、あれこれ理由を付けて、久々に骨董市に。

駅を降りた時から足取りはワクワクと軽くなる。
本当に、久々の骨董市です。

既に時刻は10時で、これは関根秀樹先生に言わせると、「通ではない時間」。

掘り出し物を見つけるためには、日の出と共に、朝一で出かけなくてはいけないのだそう。

でも、掘り出し物があると、むしろ困るので、ほどほどの時刻で。

海外からの観光客もチラホラいて、着物を着て連れだっている若い人やシニアも皆、骨董市というイベントをとても楽しんでいるのがわかる。

私は赤い薔薇のウクライナワンピースに土埃で汚れても良い普段履きのサンダルで。
そして日よけにラフィアの帽子を今年初めて被りました。
これはヘレンカミンスキーのもので、結構高かったのだけれど、5年目でも未だに現役。

おでこの部分に重めのゴム?が張ってあり、そのせいで、ちょっとの風くらいでは飛ばないし、折りたたんで収納も出来る、という優れものです。

久しぶりのウキウキ。

そして、ほどほどの時刻に行ったにも関わらず、すぐに掘り出し物に出くわしてしまいました。



古伊万里の八寸皿5枚。
多分、初代ロットと同じ時代、150年前くらいのもの。
染付に色絵を乗せたもので、地肌の滑らかさ、白さも良い。
ややラフだけれど、細かく描かれた模様は全て手描き。

12000円とあって、1枚の値段かな?と思ったら、5枚でこれ。

その上、5枚全てがみな状態も良く、通常ある細かい傷もない。

ホツもニュウもなく、傾きもない。
程よく薄手で重くない。
これは普段使いするための大きなポイントです。

「多分しまいこまれたままだったんだと思いますよ。」とお店のご夫婦も感じ良い。

似たようなもので、傷があったり、傾いているから、と格安で1枚8000円を売っていたのを昔、どうしよう?と悩んで結局やめたのですが、やめておいて良かった!

見込みは龍。これが皆顔が違うのだけれどアニメのキャラみたいな愛嬌があり、爪もなぜか描かれていなくて、グーの手足というのも可愛い。



さらに人か仙人か?が乗っている動物は、最初はキツネ?と思ったのだけれど、尻尾が細いので、おそらくネズミ。

巨大ネズミなのか、はたまた小さな仙人なのか?



色々と模様の意匠に思いを馳せるのも楽しい。

サラダを添えてローストビーフなんか載せたら最高に似合うはず。

代金を払って、お取り置きしてもらい、さらにウロウロ。

次に見つけたのは、蚕網。
蚕を育てる時に下に敷くものだそうで、初めて見ました。
麻紐が細かく格子に編まれていて、壁に下げて小さな植物などディスプレイすると素敵だな、とどこに掛けるかは考えないままに500円だったのでこれも購入。



ピピがこの網に猛烈に反応してジャンプするので、ピピのジャンプが届かない場所に吊るさなくてはなりません。
猫って、どこまで飛べるのだろう?


最後にみつけたのは、古い写真集。
『写された幕末・庶民篇』(石黒敬七著・アソカ書房)
発行年はなんと昭和32年。ほぼ同世代の本。





状態もとてもよく綺麗だったので、これも800円を700円にしてもらって購入。
写真も、著者による解説も素晴らしく、電車の中で夢中で読みました。

本当は数々の珍しく興味深い掲載写真も紹介したいのですが、

「禁・無断複写転載」

とあったので。

今はネットでもこうした昔の写真を見ることができるけれど、この石黒氏の解説がとても良い。

今まで全く知らなかったのですが、気になって調べたら、なんと柔道家でもあり、
その上『空気投げ』が得意技!?

また母校、高松高校の大先輩・菊池寛とも交流があった、という、なんというか全方向型の怪人物。

大荷物となりましたが、なんせウキウキしているので重くない。

その後、鶴見に行って、会場予約手続きして、帰宅したのは午後1時半。

ピピと遊んで掃除して、出会ってしまったお皿を洗って、夕食を作って、フルート吹いて、と皆少しずつですが、色々なことが出来た一日となりました。


「こんまり」気分で

2022-12-07 02:19:47 | アンティーク
先月のことになりますが、母方の従姉Kちゃんから久々に連絡をもらいました。

年内に長年住んだ目黒から引っ越すとのこと。

きっかけは、今まで暮らしていた家の大家さんが亡くなって、相続等の問題から、そこを出なくてはならなくなったから。

さらにはパートナーのTさんが「海が見たい!」と言いだして、それもいいねえ、と海の側に転居するため、ずっと探していたのだけれど、神奈川県の海の近くの小さな町に良い家を見つけて、そこに引っ越すことになったとのこと。

Kちゃん、と呼んでいるけれど、二人共、もう70代。
Tさんは後期高齢者になったばかり。
この年齢で、これから引っ越し、というのも相変わらずエネルギッシュで凄い。

kちゃんは画家の田島和子。
カフェやリビングに飾れるような絵ではなく、社会派を貫いている。
http://maler.wasedabook.com/01/01.html

Tさんは、田島伸二。ずっとユネスコで、アジアの恵まれない子供たちの識字教育等に尽力してきた。自然環境保護の問題提起も昔からしていて、関係する絵本も何冊も出し、世界20か国で翻訳されている。

https://www.fesco.or.jp/winner/h18/204.php

2人は昔、

「まあ、茶碗ひとつあれば、なんとかなるもんだよ~」

と暮らしていたイスラマバードから帰国した折に言っていた。
「施し」の文化が自然に根付いていて、茶碗を差し出せば、誰かしらが食べ物を入れてくれるのだそう。

昔から二人に会うたびに、話をするたびに、視野の広さと深さに圧倒され、自分には到底できないなあ、と思うことばかりで、「何故音楽か、フルートか?」「自分と他者」に関して改めて考えさせられてしまっていた。

でも、人それぞれの器の問題でもあり、こればかりはしょうがない。

私はその茶碗のデザインや質感にもこだわるし、色々なものが欲しいし、と物欲優先だし、ましてや茶わんを差し出して、なんて想像もつかない。

もちろん、彼等がそうしていた訳ではないけれど、多分いざとなったら自然にそれが出来るのだろうなと思う。

新たな家の持ち主だった高齢女性は、契約した時はお元気だったのに、その後急に亡くなってしまい、未婚で跡継ぎもいなかったため、こちらもまた相続の関係で色々あったらしい。

ようやく遠くに住む親戚が相続し、その方との交渉の末、「家じまい」をするのが大変だし、もし良かったら使えるものも色々あると思うので、使えるものは使って、他はそちらで処分してくれないか、その分おまけするから、という展開になったそう。

私が骨董や着物好きなのを知っている和子ちゃんは、

「家自体は30年前くらいのもので、古民家じゃないけれど、前の持ち主は鎌倉の地主の家のお嬢さんだったので、多分真理の好きなものが色々あると思うよ。良かったら着物とか、器とか持っていかない?リサイクル業者を呼ぶ前に、もし欲しい物あったらあげるから一度見においでよ!」
とのお誘い。

もちろん二つ返事で出かけました。

駅から徒歩5分くらいの場所で、海も山も近く、何より駅周辺に銀行、郵便局、病院、お店、と全てがコンパクトにまとまっていて、徒歩で全て済むというのが素晴らしい。
私も笛が吹けなくなってリタイアしたら、こういうのも良いかも?とちょっと思う。

そして家の中は・・・

想像していた以上に素晴らしかった!

田島さんが「こんなの捨てちゃいなよ」と言っていたのは、なんと山葡萄の籠。
それがデザイン違いで5つもゴロゴロ。

「捨てちゃだめです!」

和子ちゃんは「籠は好きなので、使おうと思ってとってあるの。これ、アケビか何か?」

和子ちゃんのお母さん、つまり私の母の姉のS子おばちゃんは、とてもお洒落さんで、スラっとしていて駅前商店街では、近所に住んでいる女優の十朱幸代の次に綺麗、と評判だった。
なので、色々とこうしたお洒落な物は沢山家にあったはずなのだけれど、和子ちゃんは、一切そちら方面に関心がなく、ずっと素顔でジーンズに黒のトップスが定番。

まあ、画家とはこういうものかもしれない。

今回の「家じまい」で初めて、色々な「もの」と向き合った、といったところ。

どちらかといえば、私の弟と似たタイプ。
弟もその奥さんも、ものには殆ど関心がない。
同じ姉弟なのに正反対。


まずは、アケビと山葡萄の違いを説明。
アケビも悪くないけれど、格と値段が全然違うこと。
山葡萄も、中国産と国産があって、国産でも養殖されたものもある、とレクチャー。
国産の天然ものなら使い込むほど艶々になってくるので楽しいということも。
下世話な話だけれどと、大体の値段も教えたら、びっくりしていました。

私は既に山葡萄の籠は、不思議な事にいつの間にか増えていて3つあるので(夫は1つだと思っている)そちらは遠慮してダイニングへ移動。

そこには大きな中国製の花梨の彫刻が施されたテーブルと椅子のセットが、

「これは重たいし気に入らないので、処分しようと思う。真理、要らない?」
・・って置くところがないし。私もこれはちょっとな。でもとても良い物でした。

さらには、軽井沢彫りの桜模様のチェスト。
これはKちゃんも気に入っていて、使うと言っていた。



これは多分、昭和初期くらいの軽井沢彫りだよ、と教えたら、真理はよく知ってるねえ。
鎌倉の人だから鎌倉彫だと思ってた、とのこと。
で、最近入手した100年くらい前だと思う軽井沢彫りの箱の写真を見せて、
「ホラ、この隙間の点々の星打ちが特徴なんだよ!」と最近知ったばかりの知識を披露。

ついでに、ブラシで掃いてやって、あとはやわらかな布で拭いて、オイルとかはNGで、と手入れの仕方もレクチャー。
時間が出来たら、手入れしに行ってあげるよ、と提案。
・・早く磨いてきれいにしてやりたい・・とうずうず。

別の部屋では全部ではないけれど、食器の一部を見せてもらって、印判だけれど、状態の良い珍しい龍の模様のなます皿をもらいました。



そして着物!

これが、もう膨大な量・・・

これをせっせと仕分け。

全部広げて状態を見ながら「どうする?」というのは、「片付けの魔法」の「こんまりさん」になった気分。

まさに「ときめくか、ときめかないか」での判断は結構な瞬発力とエネルギーが必要だけれど、ワクワクでとても楽しい作業。

分類は、
・田島夫妻が残して置きたいと思うもの、

・ロンドンで暮らしている息子のKくんとそのアイルランド人のパートナーに譲るもの、

・田島さんの知人のお嬢さんに譲るもの、

・2人の海外の友人などにプレゼントするもの。
・・これは私からの提案で、見事な金糸銀糸を使った袋帯なども何点かあったのですが、これをタペストリーみたいに壁にかけたり家具の上に敷いたりすると素敵だし、海外の人はとっても喜ぶよ、と言ったら「なるほど!」と喜んでもらえました。


・そして私に譲ってくれるもの。

・この範囲に入らないものは業者に処分してもらうとのことで、サクサクと作業。

羽織も含めると50着くらいあったかも。

その中の一等賞は紳士ものの上布。
昔デパートで冷やかしで200万円の越後上布の反物に触れさせてもらったことがあるけれど、ちょっとそれに近い感じ??

それと同じかどうかはわからないけれど、今ではみかけることのない、とても細い糸で織られていて、涼しそう。
田島さんも、これは気に入って、夏に着て散歩するよ、と喜んでいた。
上布は麻なので汗になっても家でも洗える、といったら驚いていました。

大島紬も4枚程あって、私も一枚、スッキリした柄のをいただいた。
2人とも着物は着たことがなく、着るために必要なものもろもろをこれまた解説。

当然、畳み方も知らないので、その場で伝授しつつ処分しない着物をみな畳んで項目ごとにまとめました。

まず、ここの脇の線をね、こうして、ああして、と言いながら手を動かしていると、またしても片付けの魔法の「こんまりさん」になった気分。

こうやって畳んでおけば、余計な皺もつかないから着物も一息つけるというものです。

私も大島紬の他にもモダンな緑と金茶の紬、ベージュと白の木綿の単衣、帯と羽織を同じ生地であつらえてある珍しいセット、紅型の名古屋帯、半幅帯などもらいました。

最近、ターバンにすれば、髪を染めなくてもいいからラクチンだね、とウクライナワンピースばかりなのですが、また生え際とつむじまできちんと染めてアップにして着物を着ないと、生きている間に着きれない・・

着物はもう増やさない、と誓っていたのですが、どれも、とても素敵なものだったので仕方ない。これも運命の出会いの一つです。

みな状態もよかったのですが、着物は丸ごとのクリーニングに出すので、それなりに費用はかかるけれど、昔のものはやはり生地の弾力が違って生き生きしています。
和子ちゃんも私も150㎝なので、寸法もぴったりでした。

他には大きな桐の箪笥や、紫檀に螺鈿細工の置台など、沢山あり、
要らないか?とまた言われたけれど、やはり置くところないので、と断る。






そして!
「これは真理にもらってもらうのが一番いいんじゃないかと、ずっと思ってたんだけど」

と見せてくれたのは小さな足踏みオルガン。\(^o^)/



先日、学士会館で足踏みオルガンをみかけて、良いなあ、と思っていたところ。

弾いてみると、柔らかな懐かしい音色がし、その上全ての音も出て、良いコンディション。きっと大切にされてきたのでしょう。

こんな時に弾く曲はやはりこれだろう、と「蝶々」をハ長調で弾く。
一気に村の分校の女先生気分に。

2人共喜んでくれて、「やっぱり、オルガンは真理のところがいいね!」とにっこり。

・・何処に置こう・・??
と考えたけれど、オルガンも私に連れていって欲しそうな顔をしていたので、これも有難くいただくことに。

・・・置き場は2階の階段踊り場しか今のところ思い当たらないけれど・・・

年内はリフォーム作業と引っ越しがあって忙しいので、落ち着いたら連絡くれるとのことで、龍のなます皿だけ持って帰り、後は、オルガンと一緒に改めて夫と車で受け取りにいくことにしました。

「落ち着いたら海で釣りでもしましょう!」と田島さん。

「山には古墳もあるんだよ。本当はその隣にある家も気に入ってたんだけど、駅からバスだったから、こっちにしたの。でもちょっと残念。」

と古墳の隣に住みたがっていた和子ちゃん。
やはりちょっと変わっている。

来年、二人が落ち着いたら、遊びに行って、着物の着方や畳み方のレクチャーして、軽井沢彫りのチェストを磨いて、海や山を散歩して、色々な二人の話を聞いて・・と新たな交流が楽しみです。

今回、改めて自覚したのは、私はモノが大好きだということ。

それも古くて美しくて価値があるにも関わらず打ち捨てられているものが。

それを発掘、救出して、手入れして蘇らせて愛でるのが好き。


軽井沢彫り

2022-09-23 22:27:53 | アンティーク
先日、片付けの時に出た不用品を近所のリサイクルショップに引き取ってもらいに行きました。

ウクライナワンピースヘビロテになってから、めっきり使わなくなったカーディガン数枚など。・・せっかくの袖の刺繍が隠れてしまうので・・

査定を待っている間、ウロウロするのも楽しみのひとつです。

ここの雑貨コーナーでは過去にも、色々と掘り出し物に出会えました。


最近、ようやく骨董市なども再開されてきていて、行きたいなあとは思うものの、ネットでみると、かなりの人出、人混み。それがまた楽しいところではあるのだけれど、やはりちょっと用心用心ということで、行っていません。

そんなこともあり、一番の息抜き、そしてお気に入りの店は、このリサイクルショップ。

でも多分、半年ぶり?くらいか。

そして、先日、今回過去最高?の掘り出し物に出会うことが出来ました。

一目で、「あ!軽井沢彫り!?」と判った。
全部の面にびっちりと葡萄柄が彫り込まれ、小さな隙間にも軽井沢彫りの特徴でもある星打ちがなされている。
本当に、その繊細な仕事の素晴らしさに見入ってしまいました。
中の状態もきれいで、どこも欠けてもいない。ただ鍵が失われている、という注意書き。
抱えてみるととても重くて、トチの木か?樫か?あまり詳しくはないのですが、とにかく
ずっしりとした素晴らしい質感。











値段は一桁間違いを昔からよくやってしまうので、今回もそうか?と何度も見直したのですが、2750円。え?この箱だったら10倍の値段でもよい買い物したぞ、と思う。

もちろん即購入。

とても重いので、後で夫に車で 運んでもらおうかとも思ったのですが、その日はゴルフで、確か夜は「反省会」と言っていた・・

なので、キャリーを探し、丁度500円だったので、それも買って、箱を紐で括り付け、ガラガラと引っ張って帰宅しました。

重さを測ってみると4キロ。・・ピピと同じくらい・・

小さな刷毛で埃を祓い、固く絞った麻布でよく拭いて、あとは自分の手でなでなでして、ようこそ!と我が家に迎えました。

とにかく一目惚れなので、何を入れて、何処に置くかなど、全く考えていなかったのですが、フルート関係のグッズを入れることに。

下に引き出し、そして箱の上部には取り外しの出来る仕切りのあるトレイもついている。
そのどちらも、きちんと丁寧な造りです。



掃除用具、メトロノーム、チューナー、録音機・・

加えて、下駄、紐、麻糸、ファイテンの枕カバーから自作したドレスのインナー。




ネストテーブルの上がジャストサイズで、丁度良い具合に収まりました。



最近、奏法が変化し、以前より譜面台の高さが高くなったので、自作譜面台置きにもぴったり。



山葡萄のかごバッグ同様、なでまわしていると、艶が増してきている気もします。
それに何より気持ち良い。

調べてみると、葡萄柄は西洋人の宣教師からの希望で作られ始めたらしく、葡萄はキリストを表しているのだそう。

さらには、現代ではあっさりした柄が好まれるようになったけれど、軽井沢彫りが始まった当初19世紀後半、西洋人は全ての面にびっしりと彫刻されたものを好んだということ。

おそらく、この箱もその時代のものではないか?と思います。
初代ロットとほぼ同時代ではないかしら?
とにかく、気が遠くなるような細やかな彫りがびっしり。
デザインも素晴らしく圧倒されます。

軽井沢はここ数年、何度か行っていて、だから軽井沢彫りのことも知っていたのですが、
正直、お店で見ても、全く食指は動かなかった。やはり現代人なのでシンプル嗜好で。

でも、この箱は、そんな嗜好を突き抜けて、もう、ハハ~っとひれ伏すしかない。

今、これほどのものを作れる職人さんは居るのだろうか?
このあたりもちょっとロットに似ているね。

もの、それも古いものとの出会い運、本当に物凄くあると思います。

ヴィンテージリネンのウクライナ刺繍ワンピース

2021-06-02 23:21:31 | アンティーク
このところ、古いウクライナワンピースに夢中です。

ヴィンテージのウクライナワンピースは2018年、カプースチンを調べている中で、偶然、知りました。

ネットで見て、可愛いな、とは思ったものの、価格もそれなりで、凝り性の性格なので、マイブームになったら大変大変、と敢えて見て見ぬ振りをしていました。

それに2019年はコンサートで忙しかったし、春にエジプトに行ったので帰国後は、エジプトがマイブームでした。

   ‥ああ・・あんな日々があったのねえ・・とため息。

2020年前半はコロナショックで、お洒落する気にもなれず、後半は「水月・浮雲」、CD[エーテルブルー」の作成作業、諸々で忙しかった。

2021年、楽譜、CDも完成、発売となり、ほっとした心の隙間に忍び込んできたのが、あの封印していた「ウクライナワンピース」。

リリース記念のお祝いだ、と言い訳しつつ、遂に3月、麻で、草木染の糸の刺繍のものを購入してからは、すっかり虜になり、ウクライナワンピースの泥沼にはまってしまいました。・・いわんこっちゃない・・

初めて外に着て行ったのは、4月2日の新宿でのコンサートの日。
恩師・青木明先生とのツーショットで着ているものです。


それまでも、麻のワンピースは好きで、アデュートリステスやサマンサモスモスなどが定番でした。

でも、今は大好きだったはずの、そのワンピース達の魅力も色褪せ、袖を通す気にもならない。

シルエットや色彩は、断然、そちらの方が素敵で、若干太ったスタイルもカバーしてくれているにも関わらず。

ウクライナワンピースはボテっとした丸いシルエットで、夫には

「余計、太って見えるよ」と不評。

実際、そうだなあ、と思う。

でも、それが気にならないくらい、気に入っています。
もう、そういうのはいいの。

とにかく着心地が良く、気分が上がる。

時代を経たリネンは、逞しいけれど優しく、柔らかく肌に馴染む。

独特の風合いです。

100年くらい前のもので、糸は手紡ぎ。そして手織り。

中には、庭に麻の種を撒くところから始まっているものもあるらしい。

もちろん、手縫い、手刺繍。

細かいギャザーも魅力的。

3月頃から着始めて驚いたのは、寒い時には暖かく、暑い時には涼しい。

手紡ぎの空気を含んだ糸,生地が温度や湿度を調整しているのかもしれません。

さらに、ギャザーを駆使したふんわりしたシルエット。
これにより、中に沢山の空気を含むことになるので、それも良いのだと思います。

でも、それだけではない、何か不思議な力もある気がしていました。

それは、母の着物を着た時に感じたのと似ている、

「守られている」

という感覚。


元々が、ウクライナ女性の仕事着だったからなのか、何やら意欲的になって、働き者になれる。
身体が動きやすいし、一日外出していても疲れない。

胸の開きがザクっと大きいのは授乳するのに便利だからだそうで、それも育児しながら日々の仕事に励む逞しい女性像が浮かびます。

縫ってもよいのだけれど、アクセサリーによって開け具合を変えられる方がいいな、と思いつき、一粒真珠のタイタックで止めています。

特筆すべきは、腕が軽くなること。

面白いことに、ウクライナワンピースの刺繍は、殆どが、腕にあります。

それも、二の腕、ムエタイで何か結んでいるあのあたり。

「なんだか、入れ墨している気分だなあ」とも思っていた。

それで、先日の講座の帰途、甲野先生にその話をしたら、

「ああ、それはそうでしょうね。例えば手の甲に何か模様を描いただけでも、身体は大きく変化しますからね。」

と、まさに、我が意を得たり。

きっと入れ墨も、呪術的意味合いや装飾の役目と共に、こうした実際の身体の変化を促し、動きやすい身体となるための知恵という側面もあったのでしょう。

ウクライナワンピースの手刺繍も、魔除けのために一針、一針、施されているそうです。
模様も細かく様々で、これにも色々な意味があるらしい。

衿元は、琥珀や珊瑚のネックレスをし、それが魔除けとなっていたので、刺繍はなかったり、あっても、あっさりしたものばかり。

アクセサリーの効果についても、昔気付いた時は

「重いネックレスをするとフルートが軽くなる!?」

と大騒ぎしていましたが、身に着ける洋服の刺繍まで、とは改めて驚きました。

とにかく、昔、着物熱に罹患した時、メイザーやトリファリのビンテージコスチュームジュエリーに溺れた時と同様に、久々に夢中。

外出時だけでなく、家事の時にも着ているのは、着物の時と同じ。

レッスンなども、多分毎回、同じワンピースで行ったりしている。

まだ汗ばむ季節ではないので、襟ぐりや袖口をベンジンで拭いて休ませて、と着ています。

そして、先ほど、下駄が隠れるくらいのロング丈を発見。

実は本番用に、一着欲しいな、と思っていた。

かなり悩みましたが、この日記を書いて、決意。
・・他で節約しよう・・


通常丈のもので練習もしていますが、フルートの音は、よりふっさりとし、それまでのドレスよりも断然良いです。

何より、身体が、喜んでいるて、より演奏することが楽しくなる。

もちろん、他の共演者、出演者との調和がある時は、普通のロングドレスにするけれど、その必要がないコンサートでは、麻のウクライナワンピースで演奏してみたいです。

幸いなことに、また、青木先生からお誘いいただき、9月1日に新宿・ドルチェ楽器のアーティストサロンでのコンサートに出演します。
服装はまちまちで、前回は普通の恰好の方もいらしたので、絶好のチャンス!?

長くても、何やってもいいよ、と仰っていただけたので、久々にバッハのシャコンヌを吹こうと思います。

ギャザーたっぷりの古いウクライナワンピースやシャツはヨーロッパの古いシャツの原型とも言われていて、むしろ、バッハの時代の洋服にも近いのではないかしら?

麻の素朴さ、そして甲野先生曰く「麻はいいですね」の言葉の通り、麻が持つ何かしらの不思議な力は、きっとバッハに似合うはず。

・・とこうやって、沢山の理由を挙げて・・深夜のポチッを久々に。

ロングの麻のウクライナワンピース、試したいと思っています。

また近くなりましたらご案内いたします。
どうぞお越しくださいませ。