『笛物語』

音楽、フルート、奏法の気付き
    そして
  日々の出来事など

フルート奏者・白川真理

第27回日本フルートフェスティバルin横浜 4月14日(日)

2024-04-15 22:42:43 | 音楽・フルート
5年ぶりの神奈川県立音楽堂。

5年ぶりのin横浜。

練習、本番、打ち上げ、とどれもとても素晴らしい時間を過ごすことができました。

コロナ禍で中断されていたのを昨年、実行委員長の佐々木寿久さん他スタッフの皆様のご尽力で、再開。

去年は演奏の仕事と重なってしまい参加できず、申し訳なかったのですが、久々に里帰りしたような気持ちとなる、とてもあたたかく優しく包んでくれるような「場」。

それは、もちろん、稀有な指揮者、上野正博さんの人間性、お人柄からくる雰囲気もあるのだけれど、何より、このin横浜立ち上げにご尽力された、恩師・植村泰一先生の意志がちゃんと受け継がれているからこそ、と思う。

トッププレイヤーの方々も参加して、演奏を引き締めてくださっているのだけれど、その一流の方々が、そして上野さんも、「あ、それやっとくよ」と自分のものだけでなく、他の参加者の椅子運びなども普通にしてくださる。

演奏、練習の時はもちろんピリリと「仕事」をするけれど、それ以外はとにかく分け隔てのないフラットな雰囲気。

「オレ、上手いから」とふんぞり返っているような輩は誰もいない。
・・ていうか、居るのか?イマドキそんな笛吹き?
プロ同士はもちろん、プロアマの壁もない。

この雰囲気に魅かれて、埼玉や東京から参加される笛吹きも増えてきているとのこと。

去年も出ていないし、きっと後ろの方で吹くんだろうな、と気楽な気持で練習に出たところ、舞台上手側の最前列でそこのパートのトップを担う名手・酒井秀明さんの隣で、焦る。

ミュンヘンに居た頃、何度か中山早苗ちゃんと一緒にご自宅に伺ったこともあり、旧知といえば旧知だけれど、隣で演奏、となれば話はまた別物。

そういえば、酒井さんも、早苗ちゃんもミュンヘンコンクールの覇者。
超一流程、他者への思いやりがあって人間性豊かなことを再認識。

練習時、酒井さんは、周囲が乱れそうになると、すぐに察知して、救い上げようとしてくださる。
それは隣の私だけでなく、後ろの列全員に、リズム、表情を共有出来る様、大きなフリで合図、つまりコミュニケーションしてくださる。

距離もあるせいで、微妙にずれていたタイミングもやがて揃って、ひとまとまりになる。


そして時折、メガネの奥からジロっと圧強めの視線が飛ぶ。

いや、結構緊張したけれど、色々学ばせていただけて、本当に楽しかった。
こちらから質問すれば、惜しげもなく、様々な技術を伝授してくださって、それをまた私から女子控室で、皆さまにシェア。

嬉しかったのは、すぐ近くでバスフルートを吹いていた佐々木親綱先生が

「その楽器、例のアレ?すっごいいい音出てるよ!」と声掛けしてくださったこと。
酒井さんからも「いいな~、その笛」と言っていただけた。
他数人からも。
「初代ロット」の魅力を以前よりも邪魔しない笛吹きになれてきたことが嬉しい。

今回久々にフルートアンサンブルで感じたのは、以前よりもより周囲の音が聞こえてくるようになったこと、そして自分の音があまり聞こえなくなったこと。
自分の音は聞こえなくても、こんな感じで出ているんだろうな、という確信がある。
耳ではなく、身体の感覚で自分の音を捉え、耳は周囲の音を集めて、それに調和させるという感じは初めてで、これならアンサンブルも面白いなあ、と、遅ればせながら感じた次第です。

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やはり「ソの字立ち」の効果が大きい。
加えて「ティーポットの気付き」、「全体のバランスをとる」「軸を通す」など。
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今回のドレスはショージタダシのシルクの薄い茶色がかった玉虫色のマーメイドラインのドレスにくすみピンクのストール。桜をイメージして決めました。

プロアマ大編成の時はグリーンアンバーのパリュールにしたけれど、プロのみの時はこれまた久々に、トリファリのラインストーンのパリュールにしてみた。

トリファリにはまったのは、もう数年前で、コンサート用のものも大分集めたのだけれど、結局ソロでやる時は貴金属の方が音のコクと響きが良いので、使わなくなってしまった。

トリファリの素材、トリファリウムという合金はアルミベースなので、ちと軽いので。

でも、大きな会場で、ロングドレスだと、やはりライトを浴びてキラキラと輝くゴージャスなトリファリは本領発揮。流石コスチュームジュエリー。

こうした会では見た目も華やかな方が楽しいしね。

他にも何種類かあって、全く使っていなくて、申し訳ないなと思っていたのだけれど、フェスティバルの時はトリファリにしよう・・

写真、沢山の方とご一緒したのだけれど、うっかり自分のスマホでは写していなくて、残念。

とりあえず、トリファリのパリュールだけ。
これも多分50年以上前のものではないかと思うけれど、ミントコンディション。
そういえば、これは、今回初めて身に付けた。
もしダイヤだったら、英王室の至宝?
収納箱は、100円ショップの木箱の底に、厚手の紙をベルベットで包んだものを敷いて自作。透明プラスチックだけれど、フタもあるので、積み重ねて、収納できる自信作。





グリーンアンバーのパリュールはドレスに着替える前の青い小花のウクライナワンピースの時も。タオルミーナの時と同じ恰好で、今一番気に入っている組み合わせ。



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旅も楽しいけれど、それ以上に、演奏仲間、お客様たちと一緒に音楽の下に集うことが楽しい。

生れも、育ちも、フルートとの関わり合い方や技量も夫々皆、違っているけれど、思いやり合って心を合わせて共に音楽を奏でる。

小さいけれど、確かな平和がここにある。


発表会・(告知)フルートフェスティバルin横浜 4月14日(日)14時 神奈川県立音楽堂

2024-03-26 23:00:50 | 音楽・フルート
楽器店主宰の生徒さんの発表会、そして講師演奏でした。

朝から夜までずっと冷たい雨というお天気になってしまいましたが、やはり雨女なのだろうか・・とちょっと申し訳ない気持ちに。

ピアノの小さな生徒さん達も沢山で、みなとても可愛い。

昔よりも男の子が増えているのは、ジェンダーレスになってきた世の中の流れも影響あるのかな?とふと思う。

私が子供の頃は、ピアノを習う男の子は少なかったし、いても、大抵「やらされている感」満載という感じの子が多かった。

でも今日の発表会で演奏したお子さん達は、女の子はもちろんのこと、男の子が、本当にピアノが大好きで、子供ながらに真剣勝負で取り組んでいるのが感じられる素晴らしい演奏ばかりだった。

私のフルートの生徒さん(素晴らしかった!)もそうだけれど、みな、コロナ禍を経て、音楽への取り組み方が大きく成長しているのではないかなと思った。

今日も良いものを沢山聞かせていただきました。

スケジュール的に合わせ時間の確保が難しかったので、今回の講師演奏はフルートソロ。
テレマンの無伴奏ファンタジー12番。
小鳥の囀りのようなフレーズもあるので、春に相応しいかなとこれに。

久々のホール(川崎市民プラザ・ふるさと劇場)での演奏はやはり楽しい。
コンサートに特化した会場ではなく、さらに約500名のキャパなので、ここでの演奏は、いつも後ろまでちゃんと音が届いているかどうかが気になる。
そういえば、ここでの無伴奏は初めてかも。

皆優しく、毎回嬉しい言葉を沢山いただけるのだけれど、やはり、自身の手ごたえとしては、鶴見の100人規模の音楽ホールのような訳にはいかず、広い分、音の輪郭が拡散してしまうように聞こえてしまう。

年末に予定している響かないことで有名な上野の奏楽堂は約300人キャパだから、ここより一回り小さいのだな、となんとなく想定しつつ演奏。

今回も納得感がないのは同様で、特に速く動き回る作品なので、届いてる、と信じて吹くしかない。

録音を聞くと、上から下まで音の粒のまとまりはちゃんとあったので一安心。

今回はあることを企んでいた。
最後のprestoは繰り返しのところから歩いて舞台袖にひっこんでみた。
ところが想定していたより舞台が広く、途中で終わりそうになってしまったので、もう一回リピートを増やして乗り切った。

録音するスマホは舞台袖に置いていたので、音量は段々大きくなって採れているけれど、きっと客席では段々小さくなって遠ざかる効果もあったのではと思う。

この視覚にも訴えるという演奏を初めてやったのは、30年前、ムジカフィオーレでのことだった。
川崎先生の作品で、特殊奏法はあるし、覚えるのが大変だったけれど、みんなで静かに歩き回って演奏・・ちょっと幽霊みたいな感じが曲ともマッチし、大好評だった。

多様するのは野暮だけれど、たま~にやると、確かにお客様がハっとする効果はある。

演奏しながらではないけれど、立ち去るのは古くはハイドンだってやっている(『告別』)ので、テレマンも許してくれるだろう・・許してくれるかな?

この思いつきは、思いの他好評で、とても喜んでいただけた。

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頂いた綺麗なお花の写真を明るい処で写そうと、置いたとたんにピピ。





猫にさほど危険ではないカーネーションやトルコ桔梗メインなのは、そこまで考慮してくださったからか?

玄関先に飾ったら、そこにもピピ。虎視眈々と狙っている。





お花、好きなのね。
以前調べた時は、安全となっていたけれど、再度念のため調べてみると、カーネーションも強い毒性はないものの、食べてしまうとよろしくない、と判明。

齧られると花も可愛そうなので、軒下のテーブルに飾ることに。
涼しいので、日持ちもするし、道行く人にも楽しんでいただけるので、ピピが来てからは、いただいた花束やアレンジメントは、ここに飾ることが増えました。

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次は5年ぶりに参加するフルートフェスティバルin横浜の練習にとりかかる。

https://www.kanagawa-ongakudo.com/event/39141

本番は4月14日なので、もうすぐ。
コロナ禍でずっと中断されていたのが、去年再開。でも去年は自分の本番と重なっていて、参加出来なかったので、本当に久しぶりのフルートオケで、これも楽しみです。

そういえば、いつも振ってくださる指揮者の上野正博さんは、棒の腕もさることながら、とても温かな人柄で、みんなから慕われている稀有な指揮者。

フルートの巨匠・吉田雅夫先生のお孫さんが奥様、というご縁もある。

いつだったか、たまたま付けたTVのニュース番組か、ワイドショーかで小田原の梅園を中継していて、そのインタビューに一市民として上野さんがニコニコしながら応えていて、びっくり。家族でお出かけだった模様。

久しぶりにお会いしたら、真っ先にそのことを伝えなくっちゃ、と今から楽しみです。





ミニコンサート in 東(あずま)幼稚園  2月21日(水)

2024-02-21 22:53:41 | 音楽・フルート
同じ楽器店のお教室の発表会で講師演奏をしてから、仲良くなったピアニスト・西沢典子さんにお誘いいただき、彼女がピアニカを教えに行っている鴨居にある東幼稚園にて、30分程演奏してきました。

観客は年長さんの園児のみなさんと、その父兄、職員の方たち。

なんやかんやで200名以上いたかも?

驚いたのは、園児のみなさんが、とてもちゃんと聞いてくださっていたこと。
それもいわゆる大人から「きちんとしなさい!」と言われてやっている、というよりも、自然に、ゆったりと、のびやかな様子で、ちゃんとマナーが守れている。

親後さんや、幼稚園の先生達に、愛され大切に育まれているからこそなのではないか、と感じ入りました。

西沢さんとのアンサンブルも楽しく、あっという間の30分でした。

最後に園児の皆さんの歌声に合わせてフルートで前奏、間奏、助奏などしたのですが、その歌声を聞いたとたん、涙が出そうになって大変でした。

ここで初めてハートが震えたかも。

そもそも、こんなに沢山のお子さん達に会ったのが久しぶりで、本当に可愛く感動していたのに、それに加えてあの歌声。


とても良い経験となりました。

皆様、本当にありがとうございました!


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今回も、前回、稲毛音楽室で甲野先生の前で演奏した時もそうだったのですが、やはり、演奏時に全く心臓がドキドキしなくなったというのが収穫。

これは「ソの字立ち」になってから、ずっとそうで、

「そういえば、昔は、このあたりで、ドキっとしてそれがドキドキに繋がっていってしまったのよねえ。」と懐かしく思い出すくらい。

身体が硬くなることなく、メンタル面にもゆとりが生まれるので、その時々の対応力が生れるというのも色々ある本番の中ではとても役に立つ。

ティーポットの気付きによって高音域や素早いインターバルも、特に覚悟する必要もなく出来るので、音楽の流れ方もより自然に歌えるように。

他に面白いことも沢山あって、人生の残り時間をどう過ごそうか?とふと思うことも増えたのですが、やっぱり、フルートやってて良かったなあ、としみじみ思えた一日でした。

写真は控室にあった専門誌。



演奏時の写真はないのですが、帰宅してから「お出迎え猫」してくれたピピと。やはり私とは対照的なとてもムっとした表情・・・トホホ・・



グレー小花のシックなものとどちらにしようか迷ったのですが、お天気も雨だし、幼稚園だし、ということで赤い小花のウクライナワンピース。



久々にアンティークのコスチュームジュエリー、トリファリのフルーツサラダのデミパリュールで。
カルチェやヴァン・クリーフ・アーペルのデザイナーだった、アルフレッド・フィリップのデザイン。美しい調和のあるデザインです。
ネックレスは二重にして手首に巻いてブレスレット替わりに。

トリファリウムという独自の金属なのですが、結構柔らかな良い響きになる。

貴金属よりはやや軽めで横に広がる感じ。

園児の女の子から、「そのワンピース、とても可愛いい!」と声をかけていただきました♪

合格!

2023-12-26 20:16:24 | 音楽・フルート
12月1日は上野の旧東京音楽学校奏楽堂の抽選会で、年末最後ではあるけれど、土曜日が取れて、大喜びでした。

とはいえ、その後、奏楽堂の委員会による審査があり、その通知は12月半ば以降から来年1月まで、とのことで、結構ドキドキで待っていた。


本日「ご利用いただけることとなりました。」との審査結果通知が。

 ヽ(^。^)ノ

早速、砂原さんにも連絡し、改めて、確定となりました。

あとは精進あるのみ。

早くも来年、年末の目標が出来ました。

来年もあっという間に過ぎていきそうです。

写真は2004年の4月に先生が書いてくださった作品。
その年の秋、ルーテル市谷でのリサイタルで初演(ピアノ:寺嶋陸也)
させていただきました。



この曲を始めとするオリジナルのフルート作品を親しみやすい「わらべうた」と交互に演奏いたします。もちろん、「わらべうた」も、一筋縄ではいかない先生独自の世界観が濃厚に広がっている素晴らしい作品ばかりです。
この配置は、夫々の作品の良さをより引き立てあってくれると感じています。
簡単なお話を挟みつつのコンサートです。

どうぞ、一年後、来年の手帳の12月28日(土)に〇を付けて、年賀状の準備や大掃除などは早めに済ませてお越しいただければ、と思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

★川崎優フルート作品の調べ

日時:2024年12月28日(土)13時30分開演(開場13時)
場所:旧東京音楽学校奏楽堂  東京都台東区上野公園 8-43
料金:全席自由 4000円 未就学児不可 


作曲:川崎優(まさる)1924~2018
出演:フルート・白川真理   ピアノ・砂原悟


プログラム
・通りゃんせ(『フルートで奏でるわらべうた』より)      1975年
・うた UTA-Vocallze Japanersque                 1985年  
・うさぎ うさぎ(『フルートで奏でるわらべうた』より)    1975年  
・あこがれ                          2005年
・ずいずいずっころばし 
  (『フルートで奏でるわらべうた』より)          1975年  
・忘れな草 Forget me not                                       2003年  
・ゆうやけ (『フルートで奏でるわらべうた』より)      1975年
・君を慕いて Love you Dearly                                            2006年  
・かり (『フルートで奏でるわらべうた』より)        1975年  
・夢想 Reverie                        2004年  
                                                            
・・・・・・・・・・・・休憩15分・・・・・・・・・・・・・    
 (後半)
・フルートの為の二章                              Fl.Solo
  Ⅰアンダンティーノ  Ⅱレント              1973年   
・祈りの曲 第4「祈り」              Fl.Solo     2005年    
・ほたるこい (『フルートで奏でるわらべうた』より)     1975年 
・3つの抒情的小品                      1995年  
  ララバイ Lullayby / アリア Aria / セレナーデ Serenade
・かごめ (『フルートで奏でるわらべうた』より)       1975年   
・涙 La Lagrima                         1990年   






川崎優(まさる)フルート作品の調べ

2023-12-03 00:38:03 | 音楽・フルート
遂に12月となりましたが、冬というよりは、少なかった秋の名残の様な一日でした。

ようやく色づいたといった風情の銀杏と真っ青な空が美しかったです。




12月1日は、とある会場の抽選会に参加していました。

主宰者によると過去最高の参加者、ということで、沢山の希望者が。

くじ運は悪いので、あまり期待はせずに、でも万が一?とドキドキしつつ参加。

抽選会に参加したのは初めてでしたが、中々ドキドキが新鮮で、面白かったです。

先日のコンサートでは全くドキドキしなかったので、もしや、もうドキドキできない体質になってしまったか?とシンイチ(@寄生獣)みたいに心配していたのですが。

順位は7番目でしたが、年末の仕事納めの時期でもあるせいか、
来年、2024年12月28日の土曜日の午前午後の枠を予約することができました。

とはいえ、これで一安心ではなく、さらに企画内容、出演者の経歴などの審査があり、その結果が12月半ば以降から来年1月までに知らされるとのことで、さらにドキドキは続いています。


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コロナ禍は落ち着いたとはいえ、より混迷を極めている世界情勢、そして自然。
このような中で、改めて音楽をやっていく意味をより考えた一年でした。

そして、自分自身にとっての音楽やフルートを考えた時、やはり私の音楽のルーツは川崎優先生にあるな、と。

こちらは先生が書かれたご自身の歴史。良かったらご一読ください。

http://cooljapaneseincharlottesville.com/wp-content/uploads/2019/08/0bd91222f8e1476d91f79e1ff10b7f551.pdf


親不知トラブルで吹けなかったこの春夏、改めて、先生の作品の楽譜を読んだり、録音を聴いたりしていました。

また昨年逝去された恩師・植村泰一先生は川崎先生の一番弟子であり、先生の作品を演奏されることも多かった。

『フルートで奏でるわらべうた』の楽譜に付けられたCDは植村先生の演奏。
まだロットと出会う前の銀のパウエルによる演奏だけれど、これを改めて聞いて、私が理想としているのは、ロットの音ではなくて、植村先生の音だったんだなあ、と改めて感じた演奏でした。変な言い方になりますが、パウエルの時から、品格がもう全く違う。
こんなに凄い笛吹きだったんだ、と今、改めて感じています。

アルソ出版から出ている、ぜひ、聞いていただきたい一枚です。
フルートを吹かない方でも、このCDだけでも、とても価値があると思います。
https://www.alsoj.net/store/view/FLWU.html?storecd=


また川崎先生のオリジナルの小品集の楽曲の内の一つ「夢想」は約20年前、私のリサイタルの為に書き下ろしてくださったもの。

他にも、ムジカフィオーレでやった「忘れな草」などもあり、これらの曲に触れることが、日々の救いにもなりました。

先日のコンサートでもお話したけれど、川崎先生の作品は、そのどれにも日本ならではの情緒、心情が脈打っている。

振り返って見ると、生れた時からアメリカナイズされた暮らしで、物心ついた時からずっと西洋嗜好。フルートなんぞもやっている。ヨーロッパの音楽、文化に憧れてずっとやってきた。

日本古来の文化について考えるようになったのは、ドイツから戻ってきた時、そして甲野先生と出会ってからだ。

明治維新、太平洋戦争、その中で、

奪われてきたことにすら気付かないうちに奪われた数々の美しいものたち・・

そんな話を以前「秘密基地」にお招きいただいた折、御子息の雅哉さんや北川祥子さん、中山早苗さんにしたところ、みな同意してくださり、北川さんからは

「先生はアメリカで恩師の方から、君は日本人なんだから、それを大切にして日本人ならではの音楽を書きなさい」との助言を受け、それをいつも念頭においていた、と仰っていた、というお話を聞きました。

だからこその、川崎先生の音楽は、ちょっと不思議なひっかかりがあり、ちょっと妙な感じがすることもあるのだけれど、それがおそらく忘れていた日本のDNAに触れるので、ザワっとするのかな?とも思う。また音楽に親しんでいない方でも、一度聞くと、心に残り、忘れられない魅力を発揮するのではないかと思う。

また海外での人気も高いのもそのせいだ思う。

そして、何より、広島で被爆された先生の、原爆で亡くなられた方への鎮魂、ご自身の憤り、そして平和への祈りと願いが感じられるからこそ、心の深いところに届くのではないかと。

コロナ禍となって以降、突然の多くの別れも経験した。
そういう年代になってきたということもあるかもしれないけれど。
先生の「鎮魂」は原爆の被害にあわれた方のみならず、亡くなっていった方全てに届く追悼の音楽でもあると感じている。


今の時代に最も必要な音楽の一つではないか、と感じたのでした。

ということで、ずっと川崎先生の作品だけのコンサートをやりたい、と思っていました。

植村先生から沢山レッスンしていただいた川崎作品。
また直接、川崎先生からも作品に関するお話をうかがうことが出来たこと、ムジカフィオーレや、CD作成の折に、ご指導いただけたことも、本当に貴重な経験でした。

何をやりたいか?それは、まず川崎先生の作品でしょう、ということがクリアになったのは、11月19日の無伴奏コンサート本番前の午後2時。

甲野先生の言葉「『いま在る自分』をどう直視できるか?」で、この気持ちは確信になった。

「いま在る自分」と最も向き合えるのが川崎優先生の作品。

今回の抽選会はその実現のための第一歩。

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という訳で、11月19日の本番が終わった直後から、この会場のことを考えていました。調べると、もう年内の抽選会は12月1日しかない!?

先生の作品を演奏するのなら、この会場が一番適している、と思い出向く。
それは、上野にある旧音楽学校奏楽堂。
https://www.taitogeibun.net/sougakudou/rekishi/

若き日の先生が学ばれた母校。そして戦後、東京芸術大学となった母校ではフルートの講師となられ、数多くの名フルーティストを育てられた。

ピアノはリサイタルやCDで沢山共演していただいたものの、コロナ禍になってからすっかりご無沙汰していた砂原悟さんが快諾してくださった。
植村先生の良きパートナーでもあり、川崎先生作品の共演も多い名手。

初めて川崎作品に触れる方にも、その魅力が伝わるよう、そして広島で被爆された川崎先生の平和への願いと祈りが今の時代に届くよう、日々精進していきたいと、思います。

どうぞ、審査が通りますように!!