ショルダーバッグにリングメモ のち ビール な雑記帳

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待っていた芝居、奇ッ怪其ノ参 感想

2016-12-11 | ライブ(芝居など)

「奇ッ怪」シリーズは一作目ですっかり虜になったのに、2011年の二作目は残念ながら見逃してしまった。
今回“其ノ参”を観ることができて、ほんとによかった。


遠野物語・奇ッ怪 其ノ参

2016/11/11 世田谷パブリックシアター

原作:柳田國男
脚本・演出:前川知大
出演:仲村トオル 瀬戸康史 山内圭哉 池谷のぶえ 安井順平
   浜田信也 安藤輪子 石山蓮華 銀粉蝶


「遠野物語」の著者であり、エリート官僚だった柳田國男(ヤナギタ役でトオルさん)
迷信打破を掲げ、妖怪博士と言われた哲学者の井上円了(イノウエ役で山内さん)
遠野郷の伝説を、柳田に語った民俗学者の佐々木喜善(ササキ役で瀬戸くん)
実在した彼らをモチーフに、でも実際とはちがう、少し昔の日本という設定だ。
そしてそこは、迷信が「悪」とされ、方言を使った書物の出版を禁じられていた。

警察の取り調べ室で、方言で書かれた怪異と思われる「遠野物語」をめぐって物語は展開する。
作家ヤナギタと学者イノウエがそこで対立し、イノウエが確認のためにその本を読み出すと、それがそのまま劇中劇になり、最初はその境がわかりやすく、やがてごちゃ混ぜになっていく。
その内容は、山姥、座敷童、神隠しなどなど、まさに不可思議なものばかり。

大きな舞台変化もないのに、場所が遠野になったり取調室に戻ったり…
俳優さんは、トオルさん、山内さんをはじめ皆さん素晴らしく、セリフや小道具だけでいろんな役になり、とてもおもしろかった。
そして「ほんとに乗り移っちゃってるのでは?」と思わせる瀬戸くん、すごかったな。

「彼らはありのままの事実を伝えているのだ」と力説していたヤナギタが、有罪を受けたあとに「私は伝えましたからね」と困惑するイノウエに言い放つのだが、これはもう観客に向けての言葉だった。
「人から人へ物事を伝えていくことの大切さを忘れるな」というメッセージでしょう。

私は怖い話は決して好きじゃない。
でも、生と死は日常でつながっていて、そこに大切なものがあるという前川作品にはいつも共感してしまう。
また奇ッ怪な作品、観たいです。