カンニング 立川志の輔
やっぱりね、悪気があるわけではなくて、
思い入れが強すぎるというんですかねぇ、...。
これは、人間誰でもあることで、そりゃあぁ、
自分の倅(せがれ)なんてことになれば、
これは、もう、勿論、思い入れ、たっぷりでございましょうからねぇ。
人が、なんと言おうと、...。
「だから、なんで、うちの子に限って、そんなことするわけないでしょぅ。
カンニングなんかするわけないでしょう、先生。」
「いーえ、ですが、事実は事実です。」
「ほっんと、...。
だから、事実は事実ですって、どういうことですか?
えぇっ、変な説明だったらねぇ、あたしねぇ、先生といえども、あなた訴えますよ。」
「いや、だから、落ち着いてください、お父さん、ねぇ。
ご覧くださいな。
ここに、じゃぁ、えぇ、二ぁつ答案用紙があります。
これが、お宅のお子さんの答案用紙。
こっちが、隣の子の答案用紙です。
第一問、大化の改新は何年か?
二ぁ人とも、答えが645年なんですよ。」
「それ、なんです、先生?
間違ってるんですか?
合ってるんでしょ。
正解が二人、一緒でなんでカンニング。
うちの子が、そういうことする訳ないんですよ。」
「いや、まぁまぁまぁ、落ち着いてください。
第二問、黒船が着いた港を書け。
両方とも、長崎と書いてあるんです。
答えは浦賀ですよ。」
「あ、そうですか。
でも、ほら、ねっ、そりゃ、たくさん地名があって、たまたま、二人が長崎が浮かんだのかもしれないし、...。
あっ、先生、こういうこと言えませんか?
隣の子が、うちの子の答案用紙、見てたんじゃないんですか?」
「第三問です。
徳川、三代将軍を書け。
隣の子の答案用紙、分かりません、と大きく書いてあります。
お宅のお子さんの答案用紙、
僕も分かりません、と書いてあります。
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