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スプーン ( コンサルタントが企業経営をどれほど変革できるか )
先週、友人たちと、ある新しいレストランに行きました。 気がつくと、我々の注文を受けた ウェイターが、スプーンをシャツのポケットの中に入れているのです。 ちょっと変わってるなとは思いましたが、黙っていました。 しかし、バスボーイ (*) が水と食器類を運んできたとき、 彼もまた、スプーンをポケットに入れているのに気がつきました。 見回すと、従業員全員が スプーンをシャツのポケットに入れて歩いているのです。
(*):ウェイターは注文を聞き、料理を運ぶ役。バスボーイは、下働きで済んだ食器や テーブルの上を片付け、新しく食器等を並べたりする役。
ウェイターがスープを持ってやってきた時 「 スプーンをなぜそこに? 」 と、私は尋ねました。
「 ハイ、当社の経営陣が、企業の効率化専門のアンダーセンコンサルティングに依頼しまして、 私どもの仕事のやり方を改善しようとされたんです。 数カ月かけて統計的に解析を実施した所、 お客様が一番頻繁に取り落とす食器がスプーンだということが分かりました。 1テーブルにつき、1時間当たり約3個です。 こういう偶発的な事態に対して備えをして置けば、スプーンを キッチンまで取りに行って戻ってくる時間を節約できます。 1シフトあたり15人・時間もの効率化なんですよ 」
そのときたまたま、私はスプーンを取り落としてしまい、彼はポケットから例の予備のスプーンを 出して、すぐに取り替えてくれました。 「 次に他の用事でキッチンに行ったときに、 ポケットに新しいスプーンを補充するようにしますから、今はキッチンまで取りに行かなくて も済んだんですね 」 私は、いたく感心しました。
私は、ふと、そのウェイターのズボンの 『 社会の窓 』 から、細い紐が垂れ下がっていることに 気づきました。 見回すと、どのウェイターも、同じように紐を前に垂らしています。 好奇心に 堪えかねて、私はそのウェイターが立ち去る前に尋ねました。 「 失礼ですが、皆さんどうしてそこに紐を垂らしているのか教えてくれますか? 」
「 はい、結構ですよ 」 と彼は声をひそめて答えました。 「 お客様ほど目ざとい方はい いらっしゃいませんね。 実は、あのコンサルティング会社が、我々のトイレ時間も減らせると発見したんです 」
「 どんな風に? 」
「 ハイ 」 と彼は続けました。 「 私どもの 『 あれ 』 の先端に、この紐を結んでおきます。 小便をするとき、この紐を引くと 『 あれ 』 に手を触れずに引っぱり出すことが出来るんです。 そうすれば、事後に手を洗う必要がありません。 トイレの時間が、76.39%ほど短縮されました 」
「 でもね、出した 『 あれ 』 を、どうやって元に戻すの? 」
「 それはですね 」 と彼はいっそう声をひそめてささやきました。 「 他の連中がどうしてるか、 私は知りませんけど、私はこのスプーンを使って元に戻すんです 」
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