1月7日に調布駅前の調布市グリーンホール大ホールにて「調布さくらウインドオーケストラ」の演奏会があり、聞いて来た。
この演奏会を知ったのは東京新聞だった。私の好きな吹奏楽だし、場所、時間、入場料無料など条件がぴったり合った。
パンフレットの挨拶文によると、調布中学校の卒業生を中心として2015年に結成された。
指揮者は国立音大出の小倉和彦氏で出演者は50名を超えた。コロナの影響もあって今回が第5回目の定期演奏会だった。もちろん私は初めてこのオーケストラを知った。
第一部は吹奏楽でめぐる日本紀行、第二部はポップスで時代を彩った日本のアニメの名曲。吹奏楽だから弦楽器は無い。
最初は伊藤康英作曲「こきりこ行進曲」で、いきなり最初の音でもう感激してしまった。迫力満点だ。尺八でも簡単に演奏できる「こきりこ」を、ものの見事に吹奏楽にアレンジしていた。
次は藤田玄播(げんぱ)編曲「木曽節によるパラフレーズ」。和太鼓も交え、軽快にメロディーは次々と楽器を替え、引き継がれていく。壮大な曲に仕上がっていた。
私も尺八で「木曽節による変奏曲」を作曲して、飯田市のライブで発表したことがある。
藤田玄播(1937~2013年)とは実は私とは面識がある。ただ曲を聞いた事はなかったので、初めて聞いたのだ。素晴らしい。
藤田氏は新宿で印章店を営んでいた時のお客様で、和紙の名刺を注文いただいたのだった。
肩書は作曲家であり、主に吹奏楽の曲だと聞いた。吹奏楽連盟の会長も務めた。そこで胸がときめいて話をしたが、ある時全日本吹奏楽コンクール課題曲に採用されたと新聞に掲載されたので電話したところ、「うれしいね」とおっしゃっていた。亡くなった時には新聞に載ったので死を悼んだ。ここで初めて聞けて縁を感じた。
大栗裕(ひろし)作曲「吹奏楽のための天の岩屋戸の物語による」は大栗さんらしい、日本的な要素が入った曲だった。
ここで大栗さんと親しみを込めて言ったのは、実は高校の吹奏楽で彼の作曲を演奏したからである。
昭和41年の吹奏楽コンクールの課題曲は大栗裕作曲「吹奏楽のための小狂詩曲」で、私はユーホニュームで演奏したのだ。そのメロディーは決して忘れてはいない。
(その年の優勝校は天理高校でYouTubeで聞ける。)
パンフレットで藤田氏と大栗氏の名前を見ただけで、懐かしさのあまり胸がときめき、感激してしまったのだ。
指揮者から大栗裕(1918~1982年)について説明があった。
大栗さんは高校からホルンを演奏して、独学で作曲をし、その後伊福部昭(あきら)に師事した。「皆さん、伊福部昭って知っていますか?」「知らないでしょ?」「実は映画ゴジラのテーマを作曲した人です」まさかここで伊福部昭の名前が出るとは思わなかった。
私は箏・尺八・琵琶のグループで「木犀会」に所属していた。その時の顧問が伊福部昭と金田一春彦で、演奏会後の打ち上げで銀座の料亭にて一緒に飲んだ事がある。
休憩をはさんで舞台は第二部に入った。全員がさくら色のピンクのシャツを着ている。照明が球形の鏡に当たり、綺麗にくるくる回る。反射の光は会場まで届いた。
テレビアニメONE PIECEのオープニングテーマ曲「ウィーアー」、「銀河鉄道999」、「鬼滅の刃スペシャルメドレー」、「千と千尋の神隠し」を演奏。
「鬼滅の刃」では指揮者が市松模様の半纏で現れ、爆笑。
アンコールは「宝島」など2曲続いた。
終演後はロビーでお客と演奏者が懇談していた。私はアンケートを箱に入れてから、ユーホニューム奏者を探したが分からず、取り合えずサックス奏者に感激を伝えた。
そうこうしているうちに指揮者が現れた。早速、私は吹奏楽経験者で、大変感激した事を伝え、藤田玄播や大栗裕、伊福部昭などとの交流について話した。やはり吹奏楽は話が合う。
昭和41年の「吹奏楽のための小狂詩曲」を演奏したことを伝えると、「あの曲は難しいね」と思わず二人でメロディーを歌ってしまった程だ。
最近日本テレビで、高校生の吹奏楽コンクールに向っての練習風景が何回も放送されたのを見て感心もしていた。高校生も上手いものだ。
来年は是非ベートーヴェン作曲「エグモント序曲」を聞きたい。
入場料無料ではあるが、司会者が「できれば寄付をお願いしたい」旨放送があった。
私は大変満足して、本来なら3000円上げたい程だったが年金生活の為、気持ちで1000円を募金箱に入れて来た。