EU外相会合に出席するカラス外交安全保障上級代表(27日、ブリュッセル)=AP
【ブリュッセル=辻隆史】
欧州連合(EU)の外相にあたるカラス外交安全保障上級代表は27日の記者会見で、トランプ米大統領が獲得に意欲を示すグリーンランドを巡り「米国と交渉しない」と述べた。
領有するデンマークを支援する考えを強調した。
トランプ氏はグリーンランドについて、安全保障や経済面での要衝になるとみる。購入に向けて軍事力や経済的な手段の行使を排除しない方針を示す。
EUは27日のブリュッセルでの外相会合で、今後の対米関係のあり方を協議した。カラス氏は会合後の記者会見で「米国がより取引を重んじる手法に移行するなら、私たちは一層結束する必要がある」と訴えた。
デンマークやグリーンランド自治政府は「売り物ではない」などと強く反発する。カラス氏も「EU加盟国のデンマークを後押しする」と語った。
トランプ氏の方針に、EUは警戒感を強める。トランプ氏は15日、デンマークのフレデリクセン首相と電話で45分間協議した。
英紙フィナンシャル・タイムズは24日、電話協議でトランプ氏がグリーンランドの獲得に「強い決意」を示したと報じた。
トランプ氏の本気度に、デンマーク首脳らは強い危機感を覚えたという。
欧州では米国を説得するために、EU加盟国の部隊をグリーンランドに駐留させる案も浮上する。
EU軍事委員会のブリーガー議長は25日公開のドイツ紙とのインタビューで、将来の駐留案は政治判断が必要としながらも「理にかなう」と発言した。
グリーンランドがある北極圏の海域では近年、温暖化で氷がとけ、ロシアや中国が進出を強める。ブリーガー氏は「中ロとの緊張が高まる可能性がある」と指摘した。
EUが北極圏の安全保障強化の一端を担う姿勢を示すことで、トランプ氏の購入意欲をそぎたい考えがにじむ。
カラス氏は記者会見で、ルビオ米国務長官を今後のEU外相会合に招くと発表した。米国と対話の機会を増やし、グリーンランドや欧米の貿易問題で対立拡大を防ぐ狙いがある。