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トーマス・グラバー 第五章 グラバー商会の稼働開始  グルームとパートナーを組む

2024-10-17 16:12:27 | 自己紹介

トーマス・グラバー 第五章 グラバー商会の稼働開始  茶葉工場の移動命令https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/8acda48a5ffb018b5e09e2a6975dd8d3

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グルームとパートナーを組む

グルームがグラバーへ共同出資を申し出てきたのは、グラバーが薩長土肥の倒幕雄藩に船舶、武器等を仲介、巨額な利益を計上しているとの情報を入手していたからである。グルームはグラバーの将来に賭けたわけである。

グラバーはグルームのこの申し出に「天が自分に味方している」と感激して承諾した。 グラバーとグルームの契約期間はとりあえず3年とした。

 

十二月十六日、グルームからの好意で借地した大浦海岸通十五番の茶葉工場が無地完成し、稼働開始した。 、前工場より約二倍広く(六六百坪)グラバーはグルームの好意に改めて感謝した。 そんな折、グラバーを喜ばせる出来事がさらに一つ起きた。

 

グラバーは丸山町の某料亭の女中お園と親しくなり、仕事の合間をぬっては時々お園との肉体関係を続けていた。 そのお園が妊娠し、出産も間近いとの話を知らされったのである。

グラバーはスコットランドを遠く離れ、上海、長崎へと来てからも夜ベッドへ入ると、必ずと言ってよいほど。初恋の人。エリザベートのことを思い出していた。

 

だから料亭で知り合ったお園にしても、彼女に強く心惹かれたと言う訳ではない。 二十代前半の若さが、若い女性の肉体を要求していただけにすぎない。 お園は決して美人とは言えないが、ふくよかな顔と身体つきはグラバーの好みにあっていた。

お園の出産が間近いと聞いた時は、「まさか」と思ったが、自分が一児の父親になるのかと思うと、なんとなく照れくさくもあり、またしばらく会っていないお園のふくよかな白い肉体を重い浮かべていた。

間もなく産まれた男児は諏訪神社の神主により『梅吉』と名付けられた。しかし、当時としては特効薬のなかった麻疹(はしか)にかかって梅吉は生後六ケ月であっけなく死亡した。

 

文久二年(1862)二月、グラバーはフランシス・グルームとの共同出資により『グラバー商会』を新発足させた。グルームはグラバーの茶葉工場が予想以上に順調なこと、西国雄藩からの船舶、武器弾薬の受注が相次いでいるのを目の当たりにして、グラバーの前途は洋々と判断した。

資金はいくらでも大きい方が良い。 グルームの参加はグラバーにとっては「天の助け」。 このあたりからグラバーは強気一点張りの姿勢を示し始めた。

 

三月半ば、JM商会の上海支店より、グラバーが依頼していた蒸気帆船とアームストロング砲、小銃を乗せた船が長崎に入港した。 グラバーは船舶、武器の到着に小躍りしながら五代のいる薩摩藩西浜町の藩邸を訪ねた。

ところが肝心の五代は不在で薩摩藩の国元(鹿児島)へ帰っているという。 グラバーは「五代さんから依頼されていた商品が届いたので、至急長崎へ戻るよう連絡して欲しい」と頼んだが、「さて、いつ戻ってくるのかわかりもはん」との頼りない返事。

幸いなことに佐賀藩の中牟田金吾とは、すぐに連絡が取れ、中牟田はグラバー商会に駆け込んできた。 中牟田と同行した本島藤太郎は武器の知識は中牟田より詳しく「アームストロング砲が手に入りましたか」と興奮した声を上げた。

 

早速、三人は商品が備蓄されている商館の倉庫へ入った。 本島が期待していたアームストロング砲は、上海のイギリス砲台に築き上げられていた六門のうち、二門を取り外して積み込んだもの。

旧式の先込め式という事が分かり、本島はちょっとがっかりして「グラバーさん、なんとか新式の元込め砲が手に入りませんか」とグラバーに両手を合わせていた。


「分かりました。 少し時間をください」。 そう言ってグラバーは、二人を二階の応接間に招じ入れた。 本来であれば佐賀藩からの注文が入った段階で武器のおよその価格は決定されて然るべきものである。

しかし、この当時、見本の写真などはなく、実際に商品が届けられ、その現場を眼前にして価格決定が行われていた。 このため佐賀藩が購入した武器類の価格は二階の応接間で決定される。

 

もしも佐賀藩の二人が、グラバーの要求する金額を納得しないで商談が成立しない場合、最も痛手を受けるのは、売り手側のグラバーなのである。

幸い、中牟田、本島の二人は、グラバーを通して、さらに最新式の船舶、武器弾薬を入手しようとしているので、グラバーにとても気を使っていた。

 

中牟田たち二人は、ほぼグラバーの言い値を吞んでくれ、グラバーは予期した以上の利益を確保することができた。 しかしこの商談の最大の物件は、武器を運んできた蒸気船『マンスフィールド号』(四五〇トン)を薩摩に売却することにある。

 

五代との連絡が果たしていつとれるのか、全くあてにならないことが分かり、業を煮やしたグラバーは折角、長崎港に入港していたマンスフィールド号をいったん上海に送り返すことにした。 

長崎港にとどめておくだけで、一日何両もの金がかかるからである。 長崎港を出港していくマンスフィールド号を眺めながらグラバーは船舶のような高額の取引には予め『手付金』を貰っておくべきだったと痛感させられた。

 

さて、移転した茶葉工場が稼働し始めた頃、ブレイン・テート商会のエドワード・ハリスンが、「少ない金額だが、グラバー商会に出資させてくれないか」と申し入れてきた。

ハリスンもグラバー、グルームと同じ二十代の若者であった。グラバーは喜んで彼の出資を引き受けた。

 

 

 

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この本には、歴史的に貴重な写真、図、文献なども数多く掲載されている秀逸な作品ですが、それらをPDF化して皆さんに紹介することもできますが、著者と発行所の『長崎文献社』に敬意を払って、全てを紹介するのは、控えたいと考えております。

 

 

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