日本の官民は高速の光通信技術で米国での顧客開拓を進める。
2025年春にも米国で製品を売り込みたい企業を公募し、現地で通信機器などの性能を試してもらうための実証施設を建てる費用の一部を支援する。
総務省は25年にも、米巨大テック企業が研究開発拠点を構えるシリコンバレーでの実証施設の設置を支援する。NTTや富士通などの企業が参画の候補になる。
データセンター投資を進める巨大テック企業「GAFA」などの需要を取り込んで、日本勢の米国でのシェア拡大を目指す。
総務省が後押しするのは電気処理を光に置き換える「光電融合」技術をもった機器だ。
通信の遅延が小さく、消費電力を大幅に抑えられる。NTTが開発中の次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」など日本勢が強みを持つ。富士通もスーパーコンピューターの開発で培った水で装置を冷やす技術を持った光伝送装置を開発している。
生成AI(人工知能)の普及によるデータ通信量の増加に合わせて、データセンターでの電力需要は急増が見込まれる。光電融合は世界の通信インフラが抱える課題を解決する技術として注目を集めている。
米企業との連携は経済安全保障の強化の面もある。総務省は米テック大手がアジア各国で建設をするデータセンター拠点での普及を狙う。
影響力を高めたい中国の経済援助により、アジアの途上国では通信機器を華為技術(ファーウェイ)製に依存するケースが多い。
米国や欧州各国は同社製品の安全保障上のリスクを指摘する。日本製への置き換わりが進めばアジアでの日米の存在感が高まる。
通信機器のシェア争いでは米中が先行する。英調査会社オムディアによると、23年の光伝送装置の世界シェアは通信機器大手ファーウェイが29%で首位に立ち、米シエナ(19%)が続く。富士通とNECのシェアは2社合わせても5%にとどまる。
成長するデータセンター市場を取り込むには米巨大テックの需要開拓は欠かせない。米調査会社デローログループによると、26年にも世界でのデータセンター投資の約半分をアマゾン・ドット・コムとグーグル、マイクロソフト、メタの米テック大手4社が占める見通しだ。
アイオンを開発するNTTは開発段階から技術仕様などを話し合う国際団体の本拠地を米国に置く。米インテルやグーグルなど国内外から150以上の企業・団体が参画する。