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徳川幕府の崩壊
グラバーが庭に大きな大砲を据え付けたのは、徳川幕府軍が大きく傾き始め、これくらいのことをしても何も文句は言えないだろう、とのなめ切った心があったからである。
このため、一時は幕府へ武器弾薬を売りつけていたグラバーも、慶応元年(一八六五)頃からは完全に討幕派の見方となり、幕府との縁を完全に断ち切った。
商売人としてのグラバーは、安政五ケ国通商条約により、日本国とは自由主義経済下の商取引ができるものとばかり思って、上海からはるばる長崎へとやってきた。
しかし、ここ長崎は鎖国時代から例外的に貿易を実施していたオランダと中国を引き続き特別待遇し続けていた。 グラバー達は商工会議所を設立し、自由貿易を強く訴えてはみたものの、幕府はオランダ、中国を特別扱いとし、もちろんその分、ニケ国から謝礼を貰っていた。
グラバー側からしてみれば、そういう幕府は早く叩き潰して、例外のない自由主義体制へと持っていきたい。 一日も早く幕府を潰して、薩長土肥の討幕派を支援しよう。 グラバーの考えはハッキリ定まっていたが、なんといっても徳川幕府の世は二五〇年余りも継続されている。
譜代大名の実力もあなどりがたい。 しかし、最後の将軍となる徳川慶喜(第第一五代)が、土佐藩浪士、坂本龍馬の記した大政奉還策を同藩藩主・山内容堂、重役・後藤象二郎から受け取り、了解した慶応三年十月十四日の時点で、徳川幕府は消滅したといって過言ではない。
討幕派は、幕府が大財産を保有したまま、大政奉還を実現されても困ってしまう。 朝廷は、なんの金力も武力もないからである。 そこで討幕派の主流である薩長土肥はなんとしても戦(いくさ)に持ち込み、幕府の財産をかすめ盗みたい。 こうして惹起した戦争が、慶応四年九月八日から明治二年五月に終戦した『戊辰戦争』である。
グラバーは幕府軍と薩長土肥の戦いは、日本歴史上、未曾有の大戦であり、決着までに三~四年はゆうにかかるものと判断した。 然し将軍の慶喜自らが「朝廷の官軍に反抗することはしない」と江戸城を明け渡したとの話をグラバーは聞いて、「二年内に討幕派の勝利になるだろう」と予測した。
事実、グラバーの予想は的中した。 討幕派勝利の原因は、グラバーを通して最新式の鉄砲、小銃などを購入していたこと。 これに対して兵隊の数では、はるかに上回る幕府軍の多くは、戦国時代さながらに大刀、槍を用いて戦ったと聞き、これにはグラバーも「いまさら関ヶ原の戦いではないのだから」と苦笑したといわれる。
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このの来日、歴史的に貴重な写真、図、文献なども数多く掲載されている秀逸な作品ですが、それらをPDF化して皆さんに紹介することもできますが、著者と発行所の『長崎文献社』に敬意を払って、全てを紹介するのは、控えたいと考えております。
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