米保守派は連邦政府による過剰な干渉の象徴として米教育省の廃止を訴えてきた(ワシントン)=ロイター
【ワシントン=赤木俊介】
トランプ米政権が教育省の解体に向け、同省の機能を制限する大統領令を検討している。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が3日報じた。教育省を完全に廃止するためには連邦議会の承認が必要となる。
教育省は省への格上げと事務局への格下げを繰り返してきた歴史がある。現在の教育省はカーター政権下の1979年教育省組織法によって省へと復帰した。以降、「大きな政府」に反対する共和党は同省の解体を訴え続けてきた。
WSJによると、検討中の大統領令は教育機関における公民権に関する年次報告の提出や監査官室の維持など、79年の条文に明確に記された機能は対象としない。同省の人員削減や地方局の閉鎖などが中心となると思われる。
WSJは関係者の話として、大統領令に一部の部署を他省へと移管する内容も盛り込むとしたが、議会の承認を得ずに達成できる見通しは低い。
大統領令は教育省を完全に廃止する法案の可決も議会に求める。1月31日には共和党の下院議員が法案を提出したと発表した。
トランプ米大統領が教育長官に指名した米プロレス団体「WWE」元トップ、リンダ・マクマホン氏が上院で承認されていないため、発令のタイミングを見計らっているという。マクマホン氏の指名承認公聴会はまだ日程が決まっていない。
教育省は全米の学校への助成や連邦学生ローンの制度などを運営し、米教育に関する調査・研究もする。米保守派などは同省を連邦政府による過剰な干渉の象徴として非難し、バイデン前政権による連邦学生ローンの一部免除にも強く反発していた。
トランプ氏は24年の大統領選で「過激な左派から、かつて偉大だった教育機関を取り返さなければならない」と主張。共和党の24年政策綱領には「教育省を廃止し、(公共教育を)州に委ねる」と記されている。
一方で、全米50州と首都ワシントン、米領ごとに連邦政府から独立した州教育省や教育事務局が存在し、こうした部署が公立校のカリキュラムや教材を指定する。これらの活動に米教育省は関わっていない。
トランプ氏はこれまで、連邦政府から予算を受け取るK-12(幼稚園から高校まで)の学校で多様性に関する教育を禁止し、保護者や教師らが公費で自主運営する学校「チャータースクール」やキリスト教系の学校を推進する大統領令などに署名している。