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ダイヤモンド半導体、電力制御能力桁違い EVや宇宙向け

2024-09-11 09:37:34 | エレクトロニクス・自動車・通信・半導体・電子部品・素材産業


佐賀大学の嘉数誠教授が開発したダイヤモンド半導体をつかった電子回路

 

次世代半導体「ダイヤモンド半導体」の実用化に向け、研究開発が加速している。

日本のスタートアップが世界最高レベルの電流を流せるようにしたほか、課題だったウエハーの大型化が進む。桁違いの大電力を制御できる可能性を秘めており、電気自動車(EV)や宇宙産業、原子力発電所の廃炉作業などでの活用が期待されている。

 

ダイヤモンド半導体とは、炭素を含むメタンガスと水素ガスから生成する「合成ダイヤモンド」を使って作る半導体のことだ。

ダイヤモンドは絶縁破壊電界強度や高耐圧性を示す「バンドギャップ」や熱伝導率などが極めて高く、優れた材料特性を持つことから「究極の半導体材料」とも言われている。

 

パワー半導体として活用

特に期待されているのが、大きな電力を制御するパワー半導体としての活用だ。

現在の主流であるシリコン(Si)に比べて、ダイヤモンドは電圧への強度が約33倍高く、約5倍の高温の環境で動作し、理論的には5万倍程度の電力を制御する力がある。

 

次世代パワー半導体としては炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)も注目されているが、ダイヤモンドの性能は桁違いだ。

絶縁破壊電界強度や熱伝導率などパワー半導体としての物理的な総合適性を定量化した「バリガ性能指数」はSiCの80倍以上、GaNの10倍以上と言われる。バリガ性能指数が高いということは、大きな電流に耐えられ、電力損失を大幅に軽減できることを意味する。

 

ダイヤモンド半導体は大量の電力を安定的に供給する必要があるEVや空飛ぶクルマ、発電施設など幅広い用途で活用が検討されている。

また、高温と放射線への高い耐性を持つことから、原発や宇宙などでの活用が期待されている。

 

半導体素子としてのダイヤモンドは30年以上研究開発が行われてきたが、非常に硬い素材のため、電子デバイスに仕上げるための精密な研磨や加工が極めて難しい上、長時間動かすと劣化してしまうなど課題が多かった。

特に大型な基板となるとさらにハードルが高くなり、費用面からも実用化が難航していた。だが、ここ数年で研究が進み、2025〜30年の実用化が視野に入ってきた。

 

日本でも各地で研究が進められ、海外より先行する。23年に佐賀大学の教授らが世界で初めてダイヤモンド半導体を組み込んだパワー電子回路開発に成功した。

パワー半導体で重視される電流のオンオフ切り替えの速さも確認でき、23年末には宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと共同で宇宙通信向けダイヤモンド半導体高周波パワーデバイスの開発を始めたと発表した。

 

 

精密部品メーカーのOrbray(オーブレー、東京・足立)は、直径1インチ程度が上限とされていたダイヤモンドウエハーで同2インチの量産技術に成功している。近く4インチ基板の開発にめどがつく見通しだ。

30年代の車載半導体向けの実用化を目指し、23年からトヨタ自動車デンソーが共同出資するミライズテクノロジーズ(愛知県日進市)と連携してダイヤモンドパワーデバイスの研究開発に取り組んでいる。

 

6月には英アングロ・アメリカン傘下企業と人工ダイヤ基板事業で提携し、パワー半導体や通信用半導体向けの大口径ダイヤ基板の開発に向けて協力する。

7月には秋田県の生産拠点拡大など中期経営計画を発表し、29年に新規株式公開(IPO)を目指す方針を明らかにした。

 


早稲田大学発スタートアップのパワーダイヤモンドシステムズは23年末、ダイヤモンド半導体で従来より大きな電流を流すことに成功した(早稲田大の研究室)

 

早稲田大学発スタートアップのパワーダイヤモンドシステムズ(東京・新宿)は23年末、ダイヤモンドのパワー素子を開発し、世界最高レベルの大きな電流を流せるようにした。

従来は5アンペアを上回る電力は流せなかったが、世界最高レベルとなる6.8アンペアを達成した。数年内にサンプル出荷を始める計画で、24年5月には新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助金事業にも採択された。

 

北海道大学・産業技術総合研究所発スタートアップの大熊ダイヤモンドデバイス(札幌市)はダイヤモンド半導体の実用化を目指し、福島県大熊町で量産工場の建設を進めている。

約50億円の総事業費を見込み、26年度内にも稼働させる計画だ。東京電力ホールディングス(HD)の福島第1原発のデブリ(溶融燃料)除去などに使う機器に搭載することを目指している。

 

 


大熊ダイヤモンドデバイスは26年度に福島県でダイヤモンド半導体デバイスを製造する工場を計画している

 

 

合成ダイヤの確保急務

実用化への期待が高まるにつれ、関連事業を手がける上場企業が注目される機会も増えそうだ。例えば、研究施設向けの精密装置を手掛けるジェイテックコーポレーションは、プラズマを使った独自の高硬度材料の表面を研磨する技術を持つ。

既に世界最大クラスの単結晶ダイヤモンド基板を高効率かつダメージを与えず研磨することに成功し、ダイヤモンド材料加工の開発装置の受注実績がある。

 

27年6月期までにダイヤモンド半導体材料の表面加工などを含めた「次世代研磨装置関連」事業の売上高を今期計画比2倍超の7億円に高める計画だ。

合成ダイヤ製造に関わる日本企業もある。東証グロース上場のEDPは、日本で唯一、宝飾用合成ダイヤの基となる「種結晶」の製造販売を手掛ける。

 

産総研の開発技術を使い世界最大級の単結晶を生産する体制を確立した。住友電気工業は1980年代に当時世界最大級となる大型合成ダイヤモンド単結晶「スミクリスタル」を製造し、高品質を売りに工業用素材として使われる。

半導体向けではより高い技術力が求められる。将来ダイヤモンド半導体が普及すれば、品質のよい合成ダイヤの安定確保が重要になってくる。

 

現在、世界で流通する合成ダイヤの大半がインドと中国で作られているが、合成ダイヤ卸のピュアダイヤモンド(東京・台東)の伊藤拓也代表取締役は「合成ダイヤの生産は機械ではなく、企業の技術力に依存する」と指摘する。

各社は生産機器をカスタムし、独自のレシピを使って生産しているため品質やサイズが大きく異なるという。最近では韓国企業が合成ダイヤをより短時間で生成する技術も開発しており、「究極の半導体材料」を巡るテック競争は激しくなっている。

(長谷川雄大)

 

 

[日経ヴェリタス2024年9月8日号]

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日経記事2024.09.11より引用

 

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