住友ゴム工業は8日、米グッドイヤーから欧米などの「ダンロップ」ブランドのタイヤ事業を5億2600万ドル(約830億円)で買収すると発表した。
住友ゴムは日本やアジアでダンロップブランドのタイヤを販売してきたが、グローバルで統一して展開できるようになる。欧米の自動車メーカーなどへの販売を強化する。
5月をめどに欧州と北米、オセアニア地域でダンロップブランドのタイヤを販売するための商標権を取得する。
顧客の引き継ぎなどに伴う追加費用なども合わせると、住友ゴムは合計で約1000億円をグッドイヤーに支払う。製造拠点は引き継がないが、住友ゴムのアジア工場などでの生産が軌道に乗るまでの数年間、グッドイヤーから一定量のタイヤを購入する。
ダンロップはもともと英国発祥で、住友ゴムの前身企業は1909年に日本拠点として創業した。
1980年代に英ダンロップが経営難に陥った際に英国のほかドイツやフランス、米国のダンロップ社を住友ゴムが買収したが、95年の阪神大震災で神戸市の本社や工場が被災したこともあり、住友ゴムは自力での国際展開を断念した。
99年にグッドイヤーと資本・業務提携したものの、新興国市場での競合などもあり2015年に提携を解消。
欧米でのダンロップの商標権をグッドイヤーに譲り、ダンロップブランドを地域ですみ分けて展開してきた経緯がある。
米タイヤビジネス誌によると、世界のタイヤ市場では首位の仏ミシュランと2位ブリヂストンがそれぞれ1割強のシェアを持ち、3位のグッドイヤーが続く。
さらに独コンチネンタルや住友ゴムなどが追走し、中国メーカーも存在感を高めている。
グッドイヤーはアクティビスト(物言う株主)の米エリオット・マネジメントの要請を受け、「グッドイヤー」ブランドを中心にした事業の再構築を急いでいる。
24年7月には鉱山機械用タイヤ事業を横浜ゴムに9億500万ドル(約1400億円)で売却すると発表した。
住友ゴムのタイヤ事業の売上高は年間約1兆円。欧米などでは自前ブランドの「ファルケン」を中心に展開してきた一方で、日本や中国などアジアでは高付加価値品をダンロップブランドで販売している。
日本では凍結した路面にも対応する次世代オールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」を24年10月にダンロップブランドで発売した。今後は欧米でも同じブランド名で販促活動を展開できるようになる。
ダンロップブランドは欧州や米国でも認知度が高い。
ポルシェやメルセデス・ベンツなど独高級車メーカーなどへの納入を引き継ぎ、米国でも新車への採用を拡大したい考えだ。住友ゴムは24年で4割だった高付加価値タイヤの販売比率を30年には6割に高めることを目指す。