ラピダスは4月から先端半導体の試作を始める
最先端半導体の量産を目指すラピダスは半導体設計大手の米ブロードコムと連携する。
6月をめどに回路線幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートルの製品の試作品をブロードコムに供給する。有力顧客向けの試作品の生産が成功すれば、本格的な事業化に向けて一歩前進する。
ラピダスは顧客企業が設計した半導体の生産を受託する。4月に試作を開始し、2027年に量産工場の稼働を目指している。工場を安定的に稼働させるためには顧客を先に確保する必要がある。
ブロードコムは半導体世界5位。工場を持たずに設計開発に専念するファブレスメーカーで、データセンター向けの半導体に強い。
ラピダスの2ナノ半導体の性能を確認した上で、半導体の生産をラピダスに委託する。
米グーグルや米メタなどを顧客に持ち、24年10月期の売上高は515億ドル(約8兆円)。人工知能(AI)向けの需要の拡大を追い風に、24年12月に時価総額が1兆ドルを超えた。ラピダスはブロードコムと組むことで、ブロードコムの顧客企業に半導体を供給できるようになる。
AI開発のプリファード・ネットワークス(東京・千代田)からも2ナノ品の製造を受託する。プリファードは生成AI処理用の専用チップを開発しており、さくらインターネットのデータセンターに搭載する。
このほか、メーカーなどから半導体の設計開発を受託する台湾の世芯電子(アルチップ・テクノロジーズ)や創意電子(グローバル・ユニチップ)と協業する方向だ。
TSMCは25年から2ナノ品の量産を始める。TSMCの生産能力には限りがあり大手企業からの受託が優先されているといい、ラピダスは新興企業を中心とした顧客開拓を進めていた。
ラピダスは現在、半導体の製造受託に向けた交渉を30〜40社と進めている。
ラピダスは22年8月に設立され、北海道千歳市で25年4月から試作工場を稼働させる。量産開始までに追加で4兆円の資金が必要となり、政府の補助金などが中心となる。
持続的な事業にするためには、ブロードコムなどの大手顧客向けの試作品の出荷を軌道に乗せて収益を上げられるようにすることが求められる。
(向野崚)
日経が先駆けて報じた最新のニュース(特報とイブニングスクープ)をまとめました。
日経記事2025.1.8より引用