取材に答えるラスムセン元NATO事務総長(7日、東京都港区)
北大西洋条約機構(NATO)のラスムセン元事務総長が7日、日本経済新聞の取材に答え、トランプ米大統領が主導するウクライナとロシアの停戦交渉を巡り「ウクライナの安全保障支援の保証が重要な条件になる」との考えを示した。
ラスムセン氏は「ロシアの再侵略を防ぐためには米国の支援が必要だ」と強調した。
トランプ政権がウクライナの安全保障の確保に消極的であることに触れ「抑止力の維持のために米欧はウクライナへの軍事支援を続けなければならない」と説いた。
トランプ氏は4日の施政方針演説でウクライナのゼレンスキー大統領から「恒久的な和平へできるだけ早期に交渉のテーブルに着く用意がある」と記した手紙を受け取ったと明らかにした。
2月28日の両者による会談では激しい口論に陥ったが、近く停戦に向けた交渉を再開するとみられる。
ラスムセン氏は「平和の実現に向けたプロセスに戻らなければならない」と指摘した。一方で「ウクライナの直接的な関与なしに停戦は実現し得ない。同国が強く主導権を握る必要がある」と話し、ロシアを利する形での停戦合意は容認できないとの姿勢を示した。
欧州連合(EU)は6日に開いた特別首脳会議で「再軍備計画」を推し進めることで大筋合意した。財政規律に関するルールの緩和などを通じ、防衛強化のために総額8000億ユーロ(約130兆円)の資金確保を目指す。
ラスムセン氏は「平和を維持する最善の方法は戦争に備えることだ」と言及し、欧州が国防支出を増やす方針を歓迎した。
停戦実現後には欧州各国がウクライナに平和維持部隊を派遣する必要性も訴え「5万〜10万人程度の地上部隊が必要になるだろう」との見方を示した。
フランスのマクロン大統領が核抑止力を欧州同盟国に拡大させるとの考えを表明したことに対しては「肯定的に捉えている」と述べた。
ウクライナへの核兵器の配備は必要ないとしつつも「核抑止力の範囲に同国を入れることで戦争を防げる」と唱えた。
ラスムセン氏はデンマーク首相などを経て、2009〜14年までNATO事務総長を務めた。22年2月にロシアがウクライナ侵略を始めた後、「キーウ安全保障協約」と題する文書を出すなど欧州の安全保障に関わる政策提言に携わってきた。
(聞き手は田口翔一朗、岩沢明信)

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