日米韓3カ国は18日に米国で開く首脳会談で、北朝鮮や中国の脅威に対処する新たな安全保障協力の指針を策定する。首脳・閣僚らの重層的な定期会談や緊急時に使うホットライン(専用回線)の整備などに合意する方向だ。いずれかの国で政権交代が起きても逆戻りしないよう協力関係を「制度化」する。
バイデン米大統領が米首都ワシントン近郊の山荘「キャンプデービッド」に岸田文雄首相と韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領を招く。日米韓首脳会談は1994年に最初に開いて以来、国際会議でない場で単独開催するのは初めて。
日米韓3カ国がめざす協力方針を成果文書「キャンプデービッド原則」にまとめる。これまで日韓関係が不安定になると北朝鮮や中国に対峙するための協力も揺らいだ反省を踏まえる。
米国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官を務めるカート・キャンベル氏は16日、米シンクタンクのイベントで「首脳らが連絡を取り合う3カ国間のホットライン開設に向けた技術的な投資をする」と述べた。
「危機的な状況下での対話を約束する」とも語った。北朝鮮や中国と緊張が高まる事態を念頭に意思疎通の手段を確保する狙いとみられる。
首脳会談では首脳や外相、防衛相、NSC担当の高官ら各レベルで年1回の定期協議を開くことで一致する。有事や平時を問わずに重層的に対話できる仕組みをつくり、日韓などの2国間関係が悪化しても3カ国の安全保障協力に影響しない仕組みをつくる。
日米韓の協力は歴史的に北朝鮮による核・ミサイル開発への対処に重点を置いてきた。今回の首脳会談で対中抑止や経済安保なども含めたより包括的な内容に格上げする。キャンベル氏は「より広く、深く、厚みのある3カ国」関係を築くとも訴えた。
自衛隊と米韓両軍は対潜水艦やミサイル防衛の定例共同演習をする。北朝鮮が発射したミサイルの探知情報をリアルタイムで共有する取り組みを年内に始めると合意しており、進捗状況を確かめる。サイバー防衛に関する協力も加速させる。
中国への対応をめぐっては日米が韓国を引き寄せる。東シナ海や南シナ海を念頭にインド太平洋での力による現状変更に反対し、法の支配に基づく国際秩序を維持する方針で足並みをそろえる。台湾海峡の平和と安定が重要であるとの認識も改めて共有する。
経済安全保障については半導体や鉱物など重要物資のサプライチェーン(供給網)強化などを共同声明に盛り込む見込みだ。日米韓で東南アジア諸国連合(ASEAN)や太平洋島しょ国といった新興・途上国「グローバルサウス」への支援にも乗り出す。
日米と米韓はそれぞれ同盟関係にある。朝鮮半島有事になった場合は前線で展開する在韓米軍と韓国軍を在日米軍基地が後方で支えることになる。日米韓が緊密に連携しなければ2つの同盟は円滑に機能しない。2つの同盟を一体的に運用できる体制をめざす。
【関連記事】
日経記事 2023.08.17より引用