9月20日、キシナウで有権者に支持を訴えるモルドバのサンドゥ大統領=ロイター
旧ソ連のモルドバで10月20日、同じくジョージア(グルジア)でも同月26日に欧州連合(EU)への加盟問題を左右する重要な選挙や国民投票が相次ぎ実施される。
「旧宗主国」のロシアが介入の機会をうかがい、投票後に国内情勢が混乱する懸念が出ている。
モルドバで大統領選とEU加盟の国民投票
「永続的な平和と繁栄の欧州の大きな家族に、モルドバを統合することが使命だ」。
モルドバのサンドゥ大統領は9月20日、再選へ向けて選挙戦を開始した。10月20日に大統領選と同時に、EU加盟の賛否を問う国民投票も実施する。
2020年の前回大統領選では親欧米派のサンドゥ氏が勝利し、親ロシア派から政権を奪った。
就任後、直面した深刻な問題がロシアとの関係だった。ロシアは親ロシア派の野党勢力を露骨に支持してきた。
国民投票は、EU加盟の目標を明記した改憲を実現してロシアの影響力を弱める狙いがある。
サンドゥ政権は30年のEU加盟実現を掲げる。23年12月には、加盟交渉を開始するとの決定をEUから引き出した。
国民投票では有権者の33%が投票し、賛成票が過半数を占める必要がある。ロシア系住民や親ロシアの有権者も少なくないため、結果は予断を許さない。
ジョージアもEU加盟占う議会選
ジョージアも23年12月にEU加盟候補国になっており、その行方を占う議会選が10月26日に迫る。
政権与党「ジョージアの夢」の創設者は大富豪のイワニシビリ氏で、ロシアとビジネス上のつながりが深いとされる。与党はEU加盟を掲げながらロシアとの関係改善も探っている。
ジョージアでは6月初め、外国から一定以上の資金提供を受ける団体やマスメディアの登録を義務付ける法律が成立した。
欧米や野党勢力はロシアのように、新法が人権侵害や野党弾圧に利用される恐れがあると批判したが、政権与党が押し切った。通称「外国の代理人」法と呼ばれ、EUとの関係が急速に冷え込むきっかけになった。
EUは与党が新法で権威主義に傾くと懸念する。6月末に開いたEU首脳会議の採択文書では、ジョージアが「EU加盟への道を危うくする」と指摘し、加盟交渉を事実上棚上げした。
米政府も7月、ジョージアへの資金協力を停止した。
ジョージアで議会選後、米欧の支援を受ける野党勢力が街頭デモで与党の不正を訴え革命を起こす――。
ロシアの情報機関は8月、こう警告した。こうした情報の流布は逆に、ロシアがジョージア内政に介入するリスクを示唆している。
10月26日の議会選で与党が圧勝を演出し、反発する野党を弾圧すればEU加盟はさらに遠のくだろう。
モルドバでも親ロシア派の野党勢力が大統領選後、ロシアの支援を受けて反政権デモに訴える可能性がある。
ジョージアとは逆に、サンドゥ政権が内政の安定を維持できればEU加盟を引き寄せることができる。
日経記事2024.09.27より引用