雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

もの思う葦

2006-02-10 | 小説
 最近、寝る前に少しずつ読んでいる本、太宰治の『もの思う葦』。太宰のエッセイ。
 以前読んだとき、まだ私は『人間失格』に心酔していたガキだったので、この作品はちっともおもしろくなかった。が、今、再読してみるとこれがまた非常に愉快で実に感銘を受ける。なんとも、太宰の人柄が窺える一品である。
 そこで、ちょっと紹介したい文があるので書いてみる。
 「晩年」に就いて、と云う章に書かれている一文である。
『「晩年」お読みになりますか?美しさは、人から指定されて感じいるものではなくて、自分で、自分ひとりで、ふっと発見するものです。「晩年」の中からあなたは、美しさを発見できるかどうか、それは、あなたの自由です。読者の黄金権です。だから、あまりおすすめしたくないのです。わからん奴には、ぶん殴ったって、こんりんざい判りっこないんだから。」
 「晩年」とは言わずと知れた太宰の処女短編集である。しかし、これは・・・下手すれば負け惜しみとも捉えられそうな文句であるが、そこは太宰!やっぱり太宰はこうでなくっちゃ、と思わせちゃう。
 それに実際、私もこの文には納得させられる。だってそうでも思ってなきゃ、芸術家なんて、やってらんない!
 ねぇ、センセイ!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする