ライバル出現。
そいつの名は『カリヤザキ』
名前に似合わずマッチョなカリヤザキは入部した時から何かと先輩たちに目をかけられていた。
だが、僕の敬愛する唯一の先輩は崇高なる人格者なので、部活の際に贔屓や差別などする由もなく、我々弱輩者たちに分け隔てなく『愛のシゴキ』を施してくれる。
しかし僕はあまりにも軟弱で、その熱く激しいシゴキに二分と耐えられた例がない。あろうことか、最近では先輩の熱い想いに応えようと焦るあまり、わずか三十秒程度で臨界点に達してしまう。日々の自主トレもこのところ両親が心配して聞き耳を立てている様子で、なにかとままならない。
今日も僕は、なんともだらしなく、早々に音をあげてしまった・・・。
そんな僕を嘲笑うかのように、カリヤザキは僕の横で先輩の激しいシゴキに耐え続けている。
床に這いつくばりビクンビクン痙攣する身体を必死で押さえつけながら、僕は恨めしげにカリヤザキを見上げる。
先輩はカリヤザキをシゴくのに夢中で、力尽きた僕には見向きもしない・・・悔しさと寂しさが混濁した気持ちで、二人を見つめる。
先輩「よぅし!カリヤザキ!スピードをあげるぞ!」
カリヤザキ「オッス!先輩っ!ハァ、ハァ、自分、ハァ、まだまだ、ハァ、大丈夫で、ハァ、ありまっす!」
先輩「よぉぉぉし!いくぞっ!おりゃぁぁぁ!せいっ!せいっ!せいっ!」
カリヤザキ「ハァっ!ハァっ!ハァっ!ハァっ、、、あぁっ!先輩っ!先輩っ!」
僕は堪らなくなり、二人から目を背け、必死に立ち上がろうとする。が、僕の脆弱な精神と軟弱な肉体では、このビクンビクンと痙攣する身体を押さえつけることままならず、歯を喰いしばり、必死になって立つも、その足取りはフラフラと覚束ない。
そんな僕の足元が、ふと、もつれてしまい、思わずカリヤザキの方へ倒れこみそうになった。
僕「あっ!」
カリヤザキ「ぬおぅっ!」
カリヤザキはそれに気付き、咄嗟に僕の身体を支えようとした、が、しかし、カリヤザキの肉体も、ほぼ臨界点に到達寸前であったらしく、僕を支えたままグラリと身体を傾け歪な叫び声とともに倒れこんでゆく。
カリヤザキ「あふぅぅぅん・・・」
その刹那、太くて硬い腕が、僕ら二人の身体をガッシリと受け止め、キツく抱き締め上げた。
そう、それはもちろん、憧れの先輩の、熱い、熱い、腕であった。
僕「あっ・・・せ、先輩・・・」
僕の鼻腔に先輩の汗の匂いが拡がる。
カリヤザキ「ハッ、ハウっ・・・せ、せんぱ・・・あふぅ・・・ハァ、ハァ、ハァ・・・」
カリヤザキはどうやら絶頂に達した模様で、先輩の厚い胸板に顔を埋め、荒い息遣いを繰り返している。
先輩「おいっ!お前ら、大丈夫か?」
僕とカリヤザキはまるで抱かれた子犬の如く、情けない表情で先輩の顔を見上げた。
僕とカリヤザキは「オ、オッス・・・」と気の入りきらない返事をして、ゆるゆると先輩の身体から離れた。
チラリとカリヤザキの顔を窺うと、頬が上気し、ほんのり薄紅色を湛えていた。僕も、同じ顔をしているんだろうか?と、火照る身体を押さえこみながら、しばしの間、まどろんでいた。
その後もシゴキは続行され、いつものように足腰がガクガクになり、出るものも出なくなった頃、部活は終了した。
「おぅ、お前ら。また、明日な」
解散間際、先輩は僕とカリヤザキに向かってニッコリと白い歯を覗かせ微笑み、片手を挙げ、去っていった。
その後姿を呆然と見つめていたら、横からカリヤザキが、
「一緒に、帰らないか・・・」
と、照れ臭そうに僕を誘った。
僕らはフラフラな足取りで夕日が滲む河原の土手を無言で歩いていた。
なんとなく気詰まりだったので僕は話しかけようとした。
僕、カリヤザキ「なぁ・・・」
カリヤザキも同じ思いだったらしく、二人の言葉が、重なった。
僕「あっ、な、なに?」
僕は咄嗟にカリヤザキの二の句を促す。
カリヤザキ「先輩、カッコイイよなぁ・・・」
僕は思わずカリヤザキの顔を凝視してしまった。でもカリヤザキは、なんだか眩しそうに目を細め、夕焼けの空を仰いでいる。
その姿が、なんだかちょっぴり美しく見えて、僕はしどろもどろになりながらも「あ、ああ、そ、そうだな・・・」と応えた。
するとカリヤザキは「ヨシッ!決めた!」となにやら勝手に気合を入れて語りだした。
カリヤザキ「オレ、先輩のことが好きになった!だから、オレ、先輩の全てが、欲しい!先輩の全てを、受け入れたい!そして、先輩にもオレの全てを、受け入れてもらうんだ!そして、いつかオレも、先輩のような『漢(おとこ)』になるんだ!」
僕「はわわわ、、、ぼ、僕も、き、君と同じことを、ずっと、思っていたんだ・・・・」
動揺を隠すことも、己の想いを偽ることも忘れ、言い募った。
カリヤザキ「そうか!オマエも、先輩のことが好きなんだぁ!わははは!」
僕はこっくりと頷いた。きっと今の僕の顔は、これ以上ないくらい赤面しているのであろうが、夕焼けがそれを優しく紛らしてくれている。
カリヤザキ「それじゃあ、オレとオマエは『ライバル』ってとこかな。お互い、先輩目指して、大いに励もうではないか!」
そう言ってカリヤザキは右手を差し出してきた。どうやら握手を求めているらしい。イヤハヤ、なんとも、清々しい奴ではないか。今までの君に対する誤解と偏見を、許してくれ!
そんな気持ちを込めて、僕は握手に応じた。
カリヤザキはキラキラと瞳を輝かせ、真っ直ぐに僕の瞳を見つめてくる。今にもほとばしりそうなその情熱に、僕は心を打たれ、瞳が潤みそうになったのだが、握り返した彼の右手は、なにやらネットリと濡れそぼっていて、それが少々気にかかっていた。
ともあれ、良き『好敵手(ライバル)』と巡り合い、これからお互いに切磋琢磨し、更なる『漢(おとこ)』への極みへ突き進んで行けると思うと、全身が身震いし、熱いモノが込み上げ、流れ出そうな、勢いである。
僕はその夜、早速、カリヤザキのマッチョな肉体、キラキラ輝く瞳、ネットリと濡れそぼった右手を脳内に浮かび上がらせ、両親にバレないよう、静かに、自主トレに勤しんだ。
僕「ハァ、ハァ、ハァ、、、あぁぁっ!カーリーっ!カーリーっ!・・ぃいいいぃぃぃん、、、くはぅっ!っはっ・・・ぅぅぅぅ・・・」
あだ名は『カーリー』と命名しておいた。
ボーイズ・ラヴ☆・・・それは、真の『漢(おとこ)』たちの、熱き物語で、ある。
つづく・・・(いや、ホント、つづける気ないんだってば!
そいつの名は『カリヤザキ』
名前に似合わずマッチョなカリヤザキは入部した時から何かと先輩たちに目をかけられていた。
だが、僕の敬愛する唯一の先輩は崇高なる人格者なので、部活の際に贔屓や差別などする由もなく、我々弱輩者たちに分け隔てなく『愛のシゴキ』を施してくれる。
しかし僕はあまりにも軟弱で、その熱く激しいシゴキに二分と耐えられた例がない。あろうことか、最近では先輩の熱い想いに応えようと焦るあまり、わずか三十秒程度で臨界点に達してしまう。日々の自主トレもこのところ両親が心配して聞き耳を立てている様子で、なにかとままならない。
今日も僕は、なんともだらしなく、早々に音をあげてしまった・・・。
そんな僕を嘲笑うかのように、カリヤザキは僕の横で先輩の激しいシゴキに耐え続けている。
床に這いつくばりビクンビクン痙攣する身体を必死で押さえつけながら、僕は恨めしげにカリヤザキを見上げる。
先輩はカリヤザキをシゴくのに夢中で、力尽きた僕には見向きもしない・・・悔しさと寂しさが混濁した気持ちで、二人を見つめる。
先輩「よぅし!カリヤザキ!スピードをあげるぞ!」
カリヤザキ「オッス!先輩っ!ハァ、ハァ、自分、ハァ、まだまだ、ハァ、大丈夫で、ハァ、ありまっす!」
先輩「よぉぉぉし!いくぞっ!おりゃぁぁぁ!せいっ!せいっ!せいっ!」
カリヤザキ「ハァっ!ハァっ!ハァっ!ハァっ、、、あぁっ!先輩っ!先輩っ!」
僕は堪らなくなり、二人から目を背け、必死に立ち上がろうとする。が、僕の脆弱な精神と軟弱な肉体では、このビクンビクンと痙攣する身体を押さえつけることままならず、歯を喰いしばり、必死になって立つも、その足取りはフラフラと覚束ない。
そんな僕の足元が、ふと、もつれてしまい、思わずカリヤザキの方へ倒れこみそうになった。
僕「あっ!」
カリヤザキ「ぬおぅっ!」
カリヤザキはそれに気付き、咄嗟に僕の身体を支えようとした、が、しかし、カリヤザキの肉体も、ほぼ臨界点に到達寸前であったらしく、僕を支えたままグラリと身体を傾け歪な叫び声とともに倒れこんでゆく。
カリヤザキ「あふぅぅぅん・・・」
その刹那、太くて硬い腕が、僕ら二人の身体をガッシリと受け止め、キツく抱き締め上げた。
そう、それはもちろん、憧れの先輩の、熱い、熱い、腕であった。
僕「あっ・・・せ、先輩・・・」
僕の鼻腔に先輩の汗の匂いが拡がる。
カリヤザキ「ハッ、ハウっ・・・せ、せんぱ・・・あふぅ・・・ハァ、ハァ、ハァ・・・」
カリヤザキはどうやら絶頂に達した模様で、先輩の厚い胸板に顔を埋め、荒い息遣いを繰り返している。
先輩「おいっ!お前ら、大丈夫か?」
僕とカリヤザキはまるで抱かれた子犬の如く、情けない表情で先輩の顔を見上げた。
僕とカリヤザキは「オ、オッス・・・」と気の入りきらない返事をして、ゆるゆると先輩の身体から離れた。
チラリとカリヤザキの顔を窺うと、頬が上気し、ほんのり薄紅色を湛えていた。僕も、同じ顔をしているんだろうか?と、火照る身体を押さえこみながら、しばしの間、まどろんでいた。
その後もシゴキは続行され、いつものように足腰がガクガクになり、出るものも出なくなった頃、部活は終了した。
「おぅ、お前ら。また、明日な」
解散間際、先輩は僕とカリヤザキに向かってニッコリと白い歯を覗かせ微笑み、片手を挙げ、去っていった。
その後姿を呆然と見つめていたら、横からカリヤザキが、
「一緒に、帰らないか・・・」
と、照れ臭そうに僕を誘った。
僕らはフラフラな足取りで夕日が滲む河原の土手を無言で歩いていた。
なんとなく気詰まりだったので僕は話しかけようとした。
僕、カリヤザキ「なぁ・・・」
カリヤザキも同じ思いだったらしく、二人の言葉が、重なった。
僕「あっ、な、なに?」
僕は咄嗟にカリヤザキの二の句を促す。
カリヤザキ「先輩、カッコイイよなぁ・・・」
僕は思わずカリヤザキの顔を凝視してしまった。でもカリヤザキは、なんだか眩しそうに目を細め、夕焼けの空を仰いでいる。
その姿が、なんだかちょっぴり美しく見えて、僕はしどろもどろになりながらも「あ、ああ、そ、そうだな・・・」と応えた。
するとカリヤザキは「ヨシッ!決めた!」となにやら勝手に気合を入れて語りだした。
カリヤザキ「オレ、先輩のことが好きになった!だから、オレ、先輩の全てが、欲しい!先輩の全てを、受け入れたい!そして、先輩にもオレの全てを、受け入れてもらうんだ!そして、いつかオレも、先輩のような『漢(おとこ)』になるんだ!」
僕「はわわわ、、、ぼ、僕も、き、君と同じことを、ずっと、思っていたんだ・・・・」
動揺を隠すことも、己の想いを偽ることも忘れ、言い募った。
カリヤザキ「そうか!オマエも、先輩のことが好きなんだぁ!わははは!」
僕はこっくりと頷いた。きっと今の僕の顔は、これ以上ないくらい赤面しているのであろうが、夕焼けがそれを優しく紛らしてくれている。
カリヤザキ「それじゃあ、オレとオマエは『ライバル』ってとこかな。お互い、先輩目指して、大いに励もうではないか!」
そう言ってカリヤザキは右手を差し出してきた。どうやら握手を求めているらしい。イヤハヤ、なんとも、清々しい奴ではないか。今までの君に対する誤解と偏見を、許してくれ!
そんな気持ちを込めて、僕は握手に応じた。
カリヤザキはキラキラと瞳を輝かせ、真っ直ぐに僕の瞳を見つめてくる。今にもほとばしりそうなその情熱に、僕は心を打たれ、瞳が潤みそうになったのだが、握り返した彼の右手は、なにやらネットリと濡れそぼっていて、それが少々気にかかっていた。
ともあれ、良き『好敵手(ライバル)』と巡り合い、これからお互いに切磋琢磨し、更なる『漢(おとこ)』への極みへ突き進んで行けると思うと、全身が身震いし、熱いモノが込み上げ、流れ出そうな、勢いである。
僕はその夜、早速、カリヤザキのマッチョな肉体、キラキラ輝く瞳、ネットリと濡れそぼった右手を脳内に浮かび上がらせ、両親にバレないよう、静かに、自主トレに勤しんだ。
僕「ハァ、ハァ、ハァ、、、あぁぁっ!カーリーっ!カーリーっ!・・ぃいいいぃぃぃん、、、くはぅっ!っはっ・・・ぅぅぅぅ・・・」
あだ名は『カーリー』と命名しておいた。
ボーイズ・ラヴ☆・・・それは、真の『漢(おとこ)』たちの、熱き物語で、ある。
つづく・・・(いや、ホント、つづける気ないんだってば!