雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

3月30日/千原ジュニア

2008-11-29 | 小説
『14歳』の続編的な、ってか、続編だ。

 引きこもりから脱して、15歳でお笑いの世界に入ってから26歳のバイク事故までの話を、書いている。

 一見、淡々とした描写のように思えるが、その中には売れるまでの葛藤や、売れてからの葛藤、プライドの高さゆえの東京進出での挫折などが切実に伝わってくる。

 色々な先輩芸人や後輩芸人との話も織り込まれていて、どれも名前は伏せてはあるが、【チハラトーク】や【すべらない話】などと照らし合わせると、その人物が浮かんでくる。

 やはり中でも有名なのは事故後の入院中の話だが、何回聞いても、板尾創路のお見舞いの言葉は泣ける。あと、これには書いてないけれど、兄のせいじが事故直後に駆けつけただけで、あとは復帰の舞台まで顔を合わせなかったってのが、すごく兄弟愛を感じた。

 自分も兄がいるからなのか、千原兄弟はとても好きなんです。
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パラレル/長嶋 有

2008-11-29 | 小説
『ジャージの二人』の続編的(いや、的ってか続編?)かつ特に前作読んでなくても問題ない、そんなパラレルな感覚の『パラレル』です。
 
 パラレルといえば、藤子・F・不二雄先生の『パラレル同窓会』とか東野圭吾氏の『パラレルワールド・ラブストーリー』とかを連想してしまいますが、それはまぁ、おいといて・・・。

 作品形態的に【現在】と【過去】が行ったり来たりします。それがパラレルなのか、作中主人公の奔放なる友人「津田」が語る女性関係に対して「俺はパラで走らせてるから」がタイトルの語源なのか、べつにどうでもいいんですが・・・。

 内容は、簡潔に言えば、男を作った妻に離婚された男の再生物語、なのですが、なんか、こうやって書くとありきたりな感じがしないでもないですが、そうではなく、色々とあるんです。上に書いた親友の「津田」のことだとか、その友人(愛人?)のサオリのこととか、別居から離婚へ、そして離婚後も、なにかとメールをよこす元妻(元奥)とか、それぞれがとても魅力的な個性を携えて主人公と接して、その中でゆるやかに動く主人公の内面とかが、絶妙に描かれているんです。

 長嶋有さんの本は、これが二冊目なんですが、今後も他の作品を読み漁ってやろう!そう決意してしまうほどハマれた一冊でした。

 なんか、最近の芥川賞作家って、面白い人が多くなったなぁ、そんなことを思いました。
コメント (2)
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