今、読み終わっての率直な感想としては「長かったなぁ……」。
この一週間と一日、ずっとこの本にかかりっきりだった。なんか、ようやく村上春樹の呪縛から解放された、ってカンジ。内容云々より、まず達成感が先に立つな。
さて、それじゃあそれほど読むのがキツイ本なのか? と言えば、そうでもない。むしろ、その世界にグイグイ引き込まれ、寝る間も惜しんで読み続けていたいくらい。でも寝るけど。
あえて内容には触れないけれど、(っていうか触れるのがめんどくさい)やっぱ村上春樹だな、と。良い意味でも、悪い意味でも。
いい加減、このもって回った言い回しや、くどい描写は古臭いのではないか? とも思えるのだが、そこはやはり流石というか、次第に村上ワールドにずっぽりはまり込んでしまい、むしろその文体に快感すら覚えてしまう。
村上春樹が、っていうより、文学的にはある程度「読者に委ねる」っていうのが必然ではあるが、まぁこれ、委ねすぎ。
『海辺のカフカ』のときもそうだったけど、前半は謎に満ちた、ともすればミステリー小説か? と思わせる期待感に溢れさせるだけ溢れさせといて、結末は、体(てい)のいい文学作品に仕上げている。それが「いい」と思う人と「おいおい」と思う人に分かれるんだろうなぁ。
でも確実に、読む価値はあると思う。読んだ後に必ずや思うところがあるはずだから。それがプラスに作用するか、マイナスに作用するかは人それぞれだろうけど。自分はわりとプラスのほうに傾いたような気持ち。
ともあれ、この作品が映画化とか、またあるいは続編などの噂がちらほら流れている様子だが、どうもそういうのは鼻持ちならない。村上春樹の良さは、絶対に文章からしか味わえないものだし、そしてこれはこれで、ちゃんと完結した話であると思うから。
でもまぁ、前代未聞の売れ行きだから、しょうがないっちゃあしょうがないんだろうけど……。
そんな色んな観点から、文学史に残る作品になったのは間違いないよなぁ。