全宇宙でも指折りの用兵家で、理性と知性に富んだ男。少将の時に彼の死友というべき友人のミッターマイヤーと共にラインハルトに忠誠を誓い覇業を助ける。だが、自身のプライドの高さと野心の強大さゆえに最後は叛乱を起こした。
個人的にはラインハルトの部下の中で一番好き。何が好きって死に様がかっこいいからだ。OVAの「終わりなき鎮魂歌」や、それに該当する小説の箇所も屈指の名場面だと思ってる。特にエルフリーデが夕陽を背景にロイエンタールの汗を拭くところが美しく、何度見ても飽きない。小説でこの場面の直前にロイエンタールが自分の息子に心の中で語りかけているが、これもいい。よく考えたら死ぬ場面がこんなに丁寧に書かれている人物は他にいないので印象に残るのも当然か。
エルフリーデに言った言葉、「古代の偉そうな奴が偉そうに言った言葉がある。死ぬにあたって幼い子供を託しえるような友人を持つことが叶えば、人生最上の幸福だと」これは中国の古典が出典となっているんだけど、なんだったかは忘れた。たしか西晋時代だったような。
論語には「死に逝く友から、幼い子供を託される男こそまことの君子だ」という趣意の言葉があるけど、ちょっとニュアンスが違うしなぁ(ちなみにこの言葉は秀吉から遺児を託された前田利家が読んで感動したという有名なエピソードがあるのだが)。
ロイエンタールを語る時、叛乱を起こした理由については避けてとおれまい。たいていのファンは忠誠心よりも野心が上回ったから、という見解に落ち着いている。また、ラインハルトを誰よりも理解していたがゆえに、彼の敵手となったということもよくいわれる。これらの理由についてミナミも同意見なのだが、せっかくなので詳しく分析してみよう。
ラグナロック作戦の時から、ロイエンタールは謀反を仄めかすようなきわどいセリフを何度も口にしている。特にバーミリオン会戦の最中にハイネセンに行った時は、同盟政府が和平を拒絶して戦闘続行させる(つまりラインハルトは戦場で倒れる)ことを心の中で望んでいたことがはっきり書かれている。だが、同時にロイエンタールは自分がラインハルトに及ばないことを自覚しており、ラインハルトが自分の忠誠の対象となりうる人物でありつづける限りは叛乱など大それたことだ、と考えている。
つまりラインハルトへの叛乱は矛盾となってしまうわけだ。だがその矛盾を破らせたのは2度にわたる謀反の嫌疑(ルビンスキーの陰謀)である。彼はプライドの高さから、2度も弁解するのは嫌だと言い、ベルゲングリューンは何度でも誤解を解きに行くべきだと諭す。実際、赴任地ハイネセンからフェザーンまで行こうと思えば行けただろう。
ひとつ重要なのは、ウルヴァシー事件を奇貨として謀反を起こしたわけではないということ。事件直後はラインハルトの行方も探していたし、彼によって派遣されたグリルパルツァーが事件の真相を公表していれば、当然両者は地球教の手のひらの上で踊らされるばかばかしさを知って謀反にはいたらなかっただろう。ベルゲングリューンが最初からウルヴァシーに派遣されていれば、きちんと真相を明らかにしていただろうし、この際クナップシュタインでもよかったかも知れない。
もっとも、ルッツが死んだ時点で彼はすでに取り返しのつかない事態になったことを認識しているので、謀反を起こしたという見方もできる。それに複数の人間に指摘された通り、新領土総督としての治安の責任上、無罪とはいえない。
それらの事情が絡み合い、最終的にロイエンタールは叛乱者に仕立て上げられるのはごめんだ、ということで叛乱を起こしてしまう。つまるところルビンスキーの策謀が成功したに過ぎないことであり、それに乗ぜられてしまったロイエンタールは、内に眠る野心を利用されたといえるのではないだろうか。単に政敵ラングに敗れたという見方もできないことはないだろうが、ちょっと素っ気無いか。
・・・全然分析になっていないが、まぁいいか。
そういえばロイエンタールというば左右の目の色が違う”金銀妖瞳”が代名詞であり、原作の中では何十回とその言葉が出てきた。まったくの余談になるが、彼が叛乱を決意する直前、その金銀妖瞳で自分の死を見届けてみたいと思い、「古代の名将が自らの眼球をくりぬいて故国の滅亡を見とどけさせた」という歴史のエピソードを思い出す場面がある。このエピソードのモデルは中国春秋時代の呉の名将・伍子胥のことだろう。伍子胥は呉の君主夫差の宰相であったが、敵国である越の計略により主君から死を賜ることになる。その際に呉が遠くない未来に滅亡することを予言し、自裁する時、自分の眼球を呉の城門におくよう遺言した(もっともその遺言を聞いた夫差が怒って結局墓を作らせてもらえないのだが)。
案外ロイエンタールは中国史に造詣が深かったのかも知れない。
もうひとつ中国史がらみで思い出したが、叛乱を起こした後、ランテマリオ星域で討伐にきたミッターマイヤーと戦闘に入る直前、必ず身分の保証はするからラインハルトのもとへ行こうとロイエンタールを説得したミッターマイヤーに対し、「疾風ウォルフの約束は、万金の値があるな」といったが、このセリフはおそらく「季布の一諾」に由来してるだろう。またまた脱線するけど、季布というのは楚漢戦争期に項羽の下にいた武将で、後に漢王朝に仕えたが、義侠心に富んでいて、約束は絶対に違えない性格だったことから、「黄金百斤を得るは、季布の一諾を得るに如かず」といわれるようになったエピソードがある。
個人的にはラインハルトの部下の中で一番好き。何が好きって死に様がかっこいいからだ。OVAの「終わりなき鎮魂歌」や、それに該当する小説の箇所も屈指の名場面だと思ってる。特にエルフリーデが夕陽を背景にロイエンタールの汗を拭くところが美しく、何度見ても飽きない。小説でこの場面の直前にロイエンタールが自分の息子に心の中で語りかけているが、これもいい。よく考えたら死ぬ場面がこんなに丁寧に書かれている人物は他にいないので印象に残るのも当然か。
エルフリーデに言った言葉、「古代の偉そうな奴が偉そうに言った言葉がある。死ぬにあたって幼い子供を託しえるような友人を持つことが叶えば、人生最上の幸福だと」これは中国の古典が出典となっているんだけど、なんだったかは忘れた。たしか西晋時代だったような。
論語には「死に逝く友から、幼い子供を託される男こそまことの君子だ」という趣意の言葉があるけど、ちょっとニュアンスが違うしなぁ(ちなみにこの言葉は秀吉から遺児を託された前田利家が読んで感動したという有名なエピソードがあるのだが)。
ロイエンタールを語る時、叛乱を起こした理由については避けてとおれまい。たいていのファンは忠誠心よりも野心が上回ったから、という見解に落ち着いている。また、ラインハルトを誰よりも理解していたがゆえに、彼の敵手となったということもよくいわれる。これらの理由についてミナミも同意見なのだが、せっかくなので詳しく分析してみよう。
ラグナロック作戦の時から、ロイエンタールは謀反を仄めかすようなきわどいセリフを何度も口にしている。特にバーミリオン会戦の最中にハイネセンに行った時は、同盟政府が和平を拒絶して戦闘続行させる(つまりラインハルトは戦場で倒れる)ことを心の中で望んでいたことがはっきり書かれている。だが、同時にロイエンタールは自分がラインハルトに及ばないことを自覚しており、ラインハルトが自分の忠誠の対象となりうる人物でありつづける限りは叛乱など大それたことだ、と考えている。
つまりラインハルトへの叛乱は矛盾となってしまうわけだ。だがその矛盾を破らせたのは2度にわたる謀反の嫌疑(ルビンスキーの陰謀)である。彼はプライドの高さから、2度も弁解するのは嫌だと言い、ベルゲングリューンは何度でも誤解を解きに行くべきだと諭す。実際、赴任地ハイネセンからフェザーンまで行こうと思えば行けただろう。
ひとつ重要なのは、ウルヴァシー事件を奇貨として謀反を起こしたわけではないということ。事件直後はラインハルトの行方も探していたし、彼によって派遣されたグリルパルツァーが事件の真相を公表していれば、当然両者は地球教の手のひらの上で踊らされるばかばかしさを知って謀反にはいたらなかっただろう。ベルゲングリューンが最初からウルヴァシーに派遣されていれば、きちんと真相を明らかにしていただろうし、この際クナップシュタインでもよかったかも知れない。
もっとも、ルッツが死んだ時点で彼はすでに取り返しのつかない事態になったことを認識しているので、謀反を起こしたという見方もできる。それに複数の人間に指摘された通り、新領土総督としての治安の責任上、無罪とはいえない。
それらの事情が絡み合い、最終的にロイエンタールは叛乱者に仕立て上げられるのはごめんだ、ということで叛乱を起こしてしまう。つまるところルビンスキーの策謀が成功したに過ぎないことであり、それに乗ぜられてしまったロイエンタールは、内に眠る野心を利用されたといえるのではないだろうか。単に政敵ラングに敗れたという見方もできないことはないだろうが、ちょっと素っ気無いか。
・・・全然分析になっていないが、まぁいいか。
そういえばロイエンタールというば左右の目の色が違う”金銀妖瞳”が代名詞であり、原作の中では何十回とその言葉が出てきた。まったくの余談になるが、彼が叛乱を決意する直前、その金銀妖瞳で自分の死を見届けてみたいと思い、「古代の名将が自らの眼球をくりぬいて故国の滅亡を見とどけさせた」という歴史のエピソードを思い出す場面がある。このエピソードのモデルは中国春秋時代の呉の名将・伍子胥のことだろう。伍子胥は呉の君主夫差の宰相であったが、敵国である越の計略により主君から死を賜ることになる。その際に呉が遠くない未来に滅亡することを予言し、自裁する時、自分の眼球を呉の城門におくよう遺言した(もっともその遺言を聞いた夫差が怒って結局墓を作らせてもらえないのだが)。
案外ロイエンタールは中国史に造詣が深かったのかも知れない。
もうひとつ中国史がらみで思い出したが、叛乱を起こした後、ランテマリオ星域で討伐にきたミッターマイヤーと戦闘に入る直前、必ず身分の保証はするからラインハルトのもとへ行こうとロイエンタールを説得したミッターマイヤーに対し、「疾風ウォルフの約束は、万金の値があるな」といったが、このセリフはおそらく「季布の一諾」に由来してるだろう。またまた脱線するけど、季布というのは楚漢戦争期に項羽の下にいた武将で、後に漢王朝に仕えたが、義侠心に富んでいて、約束は絶対に違えない性格だったことから、「黄金百斤を得るは、季布の一諾を得るに如かず」といわれるようになったエピソードがある。