5日夜のETV特集「続報 放射能汚染地図」をみた。
放射線解析の第一人者・金沢大学の山本政儀教授に送られた
福島第一原発正門から約1kmの住宅地の土壌から
プルトニウムが検出されたという。
福島県南部のいわき市でも、
市北部に新たなホットスポットがみつかっている。
居住に適する環境かどうか、
一軒一軒の汚染データをとっていくことが必要という指摘が重い。
この番組は、NHKオンデマンドの「見逃し番組」で
6月6日(月)午後6時から2週間配信されるとか。
見逃した方は、ぜひ以下のURLへどうぞ。
https://www.nhk-ondemand.jp/program/P200800001600000/#/1/0/
この番組をつくられたディレクターのひとり、
七沢潔さんは、長年にわたり原子力報道に携われてこられた方。
能登半島の突端・珠洲(すず)市で進んでいた原発計画に取材し
90年に放送されたドキュメンタリー
「原発立地はこうして進む 奥能登・土地攻防戦」などもつくっておられる。
これは調査報道のあるべき姿やその可能性をしめす力作のひとつ。
ほかに、『チェルノブイリ食糧汚染』(講談社)や、
原発計画をめぐる珠洲(すず)市での土地をめぐる攻防についても
ふれている『原発事故を問う』(岩波新書)、
『東海村臨界事故への道 払われなかった安全コスト』(岩波書店)
などの著書もある。
なかでも『原発事故を問う』(1996)は、いまでも、
というより、いまだからこそ一層の読みごたえがあると思う。
目次は以下の通り。
序章 もんじゅとチェルノブイリ
1章 「パニックを回避せよ」 チェルノブイリ・事故と政治①
1 はがされた機密のベール
2 「あり得ない事故」の呪縛―運転員たちが語る「その時」
3 遅れた避難―プリピャチ市民・4万5千人
4 キエフの長い20日間
2章 隠された事故原因 チェルノブイリ・事故と政治②
1 運転員たちの汚名
2 <原子炉の欠陥>は、こうして隠された
3 国際検討会議の舞台裏
3章 世界は事故をどう受け止めたか
1 原発見直しの波
2 脱原発への挑戦―スウェーデン
3 「推進」からの「撤退」―ドイツ
4 「もんじゅ」の国―日本
4章 <チェルノブイリ>は終わっていない
1 汚染地帯に生きる
2 「グレーゾーン」の憂鬱―事故処理作業者60万人のその後
3 原子炉の骸(むくろ)のなかから
あとがき
***
一住民・一市民にとっては
こういう内容の本を読んだことがあったか、なかったかで、
福島原発で事故が発生した直後の対応が変わったかもしれない
と最近おもう。
専門的な知識の有無をいうのではない。
原子力の性質や原発の構造、原子力をかかえる社会の特質、
過去の原発事故やその教訓などを、
基本的なことだけでも、ざっくりとでも、知っているかどうか。
それは個々人のセンサーの感度に影響する。
だから、それを知らないということは、
原発で何かコトがあっても危険を察知する能力を
みずからは持ちあわせないということで、とても脆(もろ)い。
けれど、知るのに遅すぎということはない。
そもそも原発事故というのは、
事故でいったい何がおこったか、被害規模はどの程度なのかなど
事実が分かってくるのに数年はかかる上、
残念ながらまだ収束の見通しもたっていないのだ。
新書ということもあり手に取りやすいと思うので、
ぜひご一読をお勧めしたい。
最後に『原発事故を問う』のあとがきから一部引いておこう。
***
チェルノブイリ原発事故は、予想を越えた事故だと言われた。
しかし、その予想とは、科学という言葉のもつ本来の意味とは
ほど遠い、きわめて政治的な思考によってつくられた
原子炉の神話のようなものでしかなかった。
事故の原因となった原子炉の欠陥は、ソビエト体制の維持のために
事故以前も事故以後も秘密にされてきた。
そして原子炉が完全に破壊されるような暴走事故などありえないと
予想されてきた。事故によって何が起こったかについても、
今に至るまで世界が真剣に調査し議論を尽くしたとは言いがたい。
事故を起こした大背景となった<科学の政治化>が、
事故から十年たった今も、原子力を取り巻く世界を覆っているのである。
***
チェルノブイリをフクシマと、
ソビエトを日本とかえて読んでも
幸か不幸か、なんら差し支えない内容だとおもう。
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