湘南ゆるガシ日和 ・・・急がず、休まず

湘南でゆるゆら暮らしココロ赴く先へガシガシ出かけるライター山秋真が更新。updated by Shin Yamaaki

足であるく「網野史学」も:『もぎりよ今夜もありがとう』

2011-07-06 23:58:46 | 本/映画/音楽/番組
今年は圧倒的に本を読む量が減っているのだけれど
細々とした読書ながら、紹介したいと思う本は少なくない。
そのひとつが、
『もぎりよ今夜もありがとう』(キネマ旬報社)。



みずからの出自を問われたら
「映画館の出身です!」と胸張ってこたえたい、という
女優の片桐はいりさんの、主に映画(館)にまつわるエッセイ集だ。

個人的には
「そして船は往く」というエッセイが特に好き。
城崎から山陰本線を15分ほど和田山方面に戻ったあたり、
兵庫県北部、但馬地方の中心都市・豊岡の、
豊岡劇場という映画館へいったエピソード。

豊岡劇場、通称・豊劇は、
なんと昭和2年に建てられた、兵庫県北部で唯一の映画館だとか。
円山川に沿う道を城崎温泉から豊岡へ、
そこから町中を離れてさらに移動し、ガランとした場所にあった
というから、光景を思いえがくだけでも不思議感がつのる。

しかも片桐さんはその疑問をその場でちゃんと問い、
答えをえてくれているから嬉しい。

「それにしても、この豪勢な劇場がなぜ、駅からも繁華街からも遠い、
こんなだしぬけな場所に立っているのか」
『すぐそこに円山川の船着場があったんですよ。
ね! 住宅街なのに料亭なんかちらほら残っているでしょう!』

そして片桐さんは書く。
「北前船の時代から円山川は
日本海の港と陸路を結ぶ水運で栄えていたそうだ。
この場所はその要諦だったというわけだ」

……まるで「足で歩く網野(善彦)史学」。
読んでいて思わず興奮を覚えた。
これを、行きあたりばったり、思いつきのような旅で
経験してこられるのだから、その意味でもスゴ技と呼べそう。
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