夏バテ3秒前のような日々のささやかな喜びのひとつ、
それは、あたりにただよう、ゆりの香を嗅ぐこと。
ここ数日わたしの住まいの周囲は、ゆり野原だから。
せっかくなので、すこし摘んで屋内にも活けることに。
すると思いがけない珍客が、ゆりと一緒に到来した。
…ゆりの茎にしがみつく、蝉のぬけ殻。
触角や細い足の一本一本までしっかりあるのに、
背中がぱっくり割れ、すでに中身はない。
こんなに繊細そうな触角まで殻だなんて、本当に不思議だ。
蝉といえば、かつてフランスに留学していた妹が
南フランスのプロヴァンス地方で学会があったとかで
プロヴァンス土産のクロス(布)をもってきてくれたことがあった。
どれも朗らかな色あわせが素敵な品で
いまもって大事に愛用させてもらっているけれど、
プロヴァンス土産といえば蝉のデザインときいて、正直なところ
蝉がデザインのモチーフになるということに(しかも人気だとか)
まずは驚かずにいられなかった。
たとえば、ヒマワリが素敵なこのクロス。
よくみると、まわりに施されているのは蝉のモチーフだと気づく
(アイロン前の写真で失礼)。
アップでみると、こんな感じ。
…これはどうみても、間違いなく、確かに、
夏の早朝からそこかしこで鳴きはじめる蝉に違いない…。
子どものころは
防空壕跡へも山の崖へもどぶ川の水道管へもわけいって遊んだのに
年とともに虫が苦手となりつつあるわたしにとって、
蝉は、いまもって好感度をうしなわない、数すくない虫のひとつ。
ただ
いくら好感度が高いといっても、
日々の暮らしを彩るクロスのデザインに蝉をつかおうとか
ましてそれを地域の特産品として売ろうとか、思ったろうか?
ところがフランスでは
蝉は地中海沿岸にしかいない珍しい昆虫で、
いまや幸福の象徴として大事にされているらしい。
イソップ寓話の『アリとキリギリス』の「キリギリス」はもとは蝉だったのが、
北ヨーロッパで蝉がなじみうすい虫だったために
翻訳過程で「キリギリス」へ改変されたときくと、なんとなく納得する。
想像するところ、この感覚差は
日本でいうところの蛍(ほたる)にまつわるものに近いかな?
北アメリカのクリーブランドにある、とあるピクニックスペースで
日暮れ時にホタルが飛び交っているのをみて、わたしは喜んだけれど
アメリカ人と思しきまわりの白人たちは誰もみむきもしなかった、この感覚差。
ぬけ殻ひとつが切っかけで、思いがけずいろいろ、もの思い。
それでも蝉は、そんなことお構いなしに、明日もきっと早朝から鳴くだろう。
短い夏を謳歌しておくれ。
そして、できればせめて夜のあいだは、鳴かないでおくれね。
それは、あたりにただよう、ゆりの香を嗅ぐこと。
ここ数日わたしの住まいの周囲は、ゆり野原だから。
せっかくなので、すこし摘んで屋内にも活けることに。
すると思いがけない珍客が、ゆりと一緒に到来した。
…ゆりの茎にしがみつく、蝉のぬけ殻。
触角や細い足の一本一本までしっかりあるのに、
背中がぱっくり割れ、すでに中身はない。
こんなに繊細そうな触角まで殻だなんて、本当に不思議だ。
蝉といえば、かつてフランスに留学していた妹が
南フランスのプロヴァンス地方で学会があったとかで
プロヴァンス土産のクロス(布)をもってきてくれたことがあった。
どれも朗らかな色あわせが素敵な品で
いまもって大事に愛用させてもらっているけれど、
プロヴァンス土産といえば蝉のデザインときいて、正直なところ
蝉がデザインのモチーフになるということに(しかも人気だとか)
まずは驚かずにいられなかった。
たとえば、ヒマワリが素敵なこのクロス。
よくみると、まわりに施されているのは蝉のモチーフだと気づく
(アイロン前の写真で失礼)。
アップでみると、こんな感じ。
…これはどうみても、間違いなく、確かに、
夏の早朝からそこかしこで鳴きはじめる蝉に違いない…。
子どものころは
防空壕跡へも山の崖へもどぶ川の水道管へもわけいって遊んだのに
年とともに虫が苦手となりつつあるわたしにとって、
蝉は、いまもって好感度をうしなわない、数すくない虫のひとつ。
ただ
いくら好感度が高いといっても、
日々の暮らしを彩るクロスのデザインに蝉をつかおうとか
ましてそれを地域の特産品として売ろうとか、思ったろうか?
ところがフランスでは
蝉は地中海沿岸にしかいない珍しい昆虫で、
いまや幸福の象徴として大事にされているらしい。
イソップ寓話の『アリとキリギリス』の「キリギリス」はもとは蝉だったのが、
北ヨーロッパで蝉がなじみうすい虫だったために
翻訳過程で「キリギリス」へ改変されたときくと、なんとなく納得する。
想像するところ、この感覚差は
日本でいうところの蛍(ほたる)にまつわるものに近いかな?
北アメリカのクリーブランドにある、とあるピクニックスペースで
日暮れ時にホタルが飛び交っているのをみて、わたしは喜んだけれど
アメリカ人と思しきまわりの白人たちは誰もみむきもしなかった、この感覚差。
ぬけ殻ひとつが切っかけで、思いがけずいろいろ、もの思い。
それでも蝉は、そんなことお構いなしに、明日もきっと早朝から鳴くだろう。
短い夏を謳歌しておくれ。
そして、できればせめて夜のあいだは、鳴かないでおくれね。