3月4日-5日の2日間、グアテマラの首都
グアテマラ・シティで、グアテマラ内戦中の
性暴力についての民衆法廷がひらかれた。
内定していた会場(国立劇場、1500人収容)が
開催まぎわになって使えなくなり
急きょべつの会場を探さなければならなくなるなど、
直前になって問題もあったよう。
それでも、無事に開催にこぎつけることができたらしい。
法廷を傍聴した、日本ラテンアメリカ協力ネットワークの
新川志保子さんの報告を、以下にご紹介。
*******
グアテマラ 戦時下性暴力の民衆法廷の報告
約500人収容の会場は満員で、会場に入りきれない人も。
スペイン、ドイツ、ノルウェー、スイス、コスタリカの大使が
出席したほか、国連女性開発基金UNIFEMのグアテマラ事務所代表、
国連支援で設置されたグアテマラの免責にたいする国際委員会CICIGの代表、
グアテマラ政府の役人なども出席。プレンサ・リブレなど主要新聞の取材も。
国際社会からは、日本からの傍聴団5人の他に
ノルウェイやカナダ、ドイツ、スペイン、ペルーやコロンビアなど
国際社会から30人ちかく参加。
法廷の構成は、検事二人+名誉判事4人+進行役。
検事は、スペインの弁護士フアナ・バルマセダさんと
グアテマラの弁護士マリア・エウヘニア・ソリスさんの2人。
進行役はグアテマラの弁護士ルシア・モランさんがつとめた。
名誉判事は、
グアテマラのマヤ女性フアナ・メンデスさん
(2004年に根拠なく逮捕され、刑務所にいれられてそこで強姦され、
それを訴えて裁判を起こし、2008年に加害者を有罪にした女性)、
ペルーのグラディス・カナレスさん(フジモリ政権下で
無実の罪で8年間拘束されていた、性暴力のサバイバー)、
ウガンダのテディ・アティムさん(ウガンダでの内戦で
性暴力の犠牲になった女性たちに正義の補償を獲得するため活動)、
日本の傍聴団から2000年東京での女性法廷もしる新川志保子がつとめた。
サバイバー女性たちと支援者はみな
白いウィピル(マヤのブラウス)を着ての入場。
法廷では、サバイバー女性たちの言語
(カクチケル、ケクチ、イシル、チュフ)とスペイン語、
そしてスペイン語と英語の同時通訳がおこなわれた。
<1日目 被害者証言>
(民衆法廷開会式)
舞台に布でおおわれたブースがつくられ、
証人はその中にすわって証言。うしろから照明があてられ
シルエットだけ映るように工夫されていた。
日程が短縮されたため証言の数を少なくしなければならず、
各地域から1人ないし2人を選んで証言してもらうことに。
イサバル県から1人、キチェ県から1人、チマルテナンゴ県から1人、
ウエウエテナンゴ県から2人が、自分におこったことを証言した。
これらの女性たちは…顔をみせないとはいえ、
このような公開の場で自分がうけた性暴力の経験を語るのは初めて…
(だ)が、みな最後までしっかりを話した。
その後、グアテマラ・シティの2つのケースについての証言があり、
最後に、現在もつづく性暴力ということで
鉱山開発のために先住民族共有地で住民の強制排除がおこなわれるなかで
警官に強姦された女性たちの証言も紹介された。
<2日目 専門家証言と宣告pronunciamiento>
専門家の証言は、内戦中の性暴力について、
1)軍による反乱鎮圧戦略の分析、
2)ジェンダーの観点から、
3)社会心理学の観点から、
4)性暴力のトラウマについて医学的な観点から、
5)マヤ文化の観点から、
6)発掘された遺体の調査結果から法医学の説明、
7)心理学の観点から、
8)これまでに発見された軍秘密文書と警察文書の分析から
9)法的な観点から、
それぞれおこなわれた。
すべての証言がおわったあと検事による最終弁論がおこなわれ、
それをうけて名誉判事団が宣告をおこなった。
宣告の内容は、検事の主張をみとめ、
内戦中、女性への性暴力が他の暴力とともに行使されたこと、
それがグアテマラ刑法にてらして違法な行為であったこと、
加害者は軍兵士・警官・あるいは国家権力の命令による
軍コミッショナーや自警団員などで、その加害行為の責任は国家にあること、
それらの犯罪が現在に至るまで調査も処罰もされていないことで
グアテマラにおける不処罰・免責がつづいていること、を指摘。
内戦のもう一方であるゲリラに対しても、
国際人権法を順守せず、性暴力を犯したことも指摘した。
戦時下における女性への性暴力は女性と男性の不平等の結果で、
内戦がおわった現在も女性差別がつづいていること、
性暴力の被害女性が正義を獲得し被害の補償をうけるための
国家の措置が不十分かつ適切でなかったこと、
内戦中の女性への性暴力は普遍的人権の侵害であることなども指摘。
グアテマラ国家に対し、国際刑事裁判所ローマ規程を批准し、
免責・不処罰をおわらせ、裁判を適切にすすめ、
被害者に十分な補償をおこなうよう勧告した。
宣告が読みあげられるとみな総立ちになり、
会場は大きな拍手につつまれ、すごい熱気。
一部ではあっても、女性たちの正義と尊厳が回復された瞬間だった。
…
エンパワーされたのは、サバイバー女性だけではない。
この法廷をささえた多くの女性たちも、グアテマラ史上
初めての性暴力についての民衆法廷をひらいたことで
さらにエンパワーされた。
ペルーやコロンビアといった、軍事紛争があった
あるいはいまだ続いている国の女性たち、
国際社会で性暴力根絶・ジェンダー正義のために
闘っている女性たちと協力していくネットワークが
強化されたことも成果のひとつだ。
今回の法廷の進行役をつとめ、法廷の共催団体である
「世界を変える女たち」の創立者であるルシア・モランさんによると、
被害者女性のなかで「裁判をおこしたい」と強く希望する女性が
何人もでてきており、今後、訴訟をおこす可能性を検討してゆくとのこと。
(報告ここまで。文意に影響のない範囲で若干編集した)
*******
グアテマラ全国から、
性暴力の被害をうけた100人ものマヤ女性が
この法廷で証言するために首都にあつまったとか。
そのことだけでもスゴイと思っていたが、
この報告をよんであらためてその念を強くした。
背負わされたシワ寄せゆえに
問題の存在/所在をしる彼女たち。
弱さと強さが同居している。
ちなみに、法廷は
グアテマラ全国女性連合UNAMG、
社会心理行動と共同体研究グループ(ECAP)、
先住民族女性組織「連れ合いを奪われた女たちの会(コナビグア)」、
女性弁護士組織「世界を変える女たち」、
女性新聞である「ラ・クエルダ」
によって共同で開催された。
民衆法廷の宣告と法廷の証言サマリーは
以下のサイトで読むことができるそう(スペイン語)。
http://www.scribd.com/doc/27911477/Pronunciamiento-Tribunal-de-Conciencia-en-Guatemala (宣告)
http://unamg.org/?cat=13 (証言サマリー)
グアテマラ・シティで、グアテマラ内戦中の
性暴力についての民衆法廷がひらかれた。
内定していた会場(国立劇場、1500人収容)が
開催まぎわになって使えなくなり
急きょべつの会場を探さなければならなくなるなど、
直前になって問題もあったよう。
それでも、無事に開催にこぎつけることができたらしい。
法廷を傍聴した、日本ラテンアメリカ協力ネットワークの
新川志保子さんの報告を、以下にご紹介。
*******
グアテマラ 戦時下性暴力の民衆法廷の報告
約500人収容の会場は満員で、会場に入りきれない人も。
スペイン、ドイツ、ノルウェー、スイス、コスタリカの大使が
出席したほか、国連女性開発基金UNIFEMのグアテマラ事務所代表、
国連支援で設置されたグアテマラの免責にたいする国際委員会CICIGの代表、
グアテマラ政府の役人なども出席。プレンサ・リブレなど主要新聞の取材も。
国際社会からは、日本からの傍聴団5人の他に
ノルウェイやカナダ、ドイツ、スペイン、ペルーやコロンビアなど
国際社会から30人ちかく参加。
法廷の構成は、検事二人+名誉判事4人+進行役。
検事は、スペインの弁護士フアナ・バルマセダさんと
グアテマラの弁護士マリア・エウヘニア・ソリスさんの2人。
進行役はグアテマラの弁護士ルシア・モランさんがつとめた。
名誉判事は、
グアテマラのマヤ女性フアナ・メンデスさん
(2004年に根拠なく逮捕され、刑務所にいれられてそこで強姦され、
それを訴えて裁判を起こし、2008年に加害者を有罪にした女性)、
ペルーのグラディス・カナレスさん(フジモリ政権下で
無実の罪で8年間拘束されていた、性暴力のサバイバー)、
ウガンダのテディ・アティムさん(ウガンダでの内戦で
性暴力の犠牲になった女性たちに正義の補償を獲得するため活動)、
日本の傍聴団から2000年東京での女性法廷もしる新川志保子がつとめた。
サバイバー女性たちと支援者はみな
白いウィピル(マヤのブラウス)を着ての入場。
法廷では、サバイバー女性たちの言語
(カクチケル、ケクチ、イシル、チュフ)とスペイン語、
そしてスペイン語と英語の同時通訳がおこなわれた。
<1日目 被害者証言>
(民衆法廷開会式)
舞台に布でおおわれたブースがつくられ、
証人はその中にすわって証言。うしろから照明があてられ
シルエットだけ映るように工夫されていた。
日程が短縮されたため証言の数を少なくしなければならず、
各地域から1人ないし2人を選んで証言してもらうことに。
イサバル県から1人、キチェ県から1人、チマルテナンゴ県から1人、
ウエウエテナンゴ県から2人が、自分におこったことを証言した。
これらの女性たちは…顔をみせないとはいえ、
このような公開の場で自分がうけた性暴力の経験を語るのは初めて…
(だ)が、みな最後までしっかりを話した。
その後、グアテマラ・シティの2つのケースについての証言があり、
最後に、現在もつづく性暴力ということで
鉱山開発のために先住民族共有地で住民の強制排除がおこなわれるなかで
警官に強姦された女性たちの証言も紹介された。
<2日目 専門家証言と宣告pronunciamiento>
専門家の証言は、内戦中の性暴力について、
1)軍による反乱鎮圧戦略の分析、
2)ジェンダーの観点から、
3)社会心理学の観点から、
4)性暴力のトラウマについて医学的な観点から、
5)マヤ文化の観点から、
6)発掘された遺体の調査結果から法医学の説明、
7)心理学の観点から、
8)これまでに発見された軍秘密文書と警察文書の分析から
9)法的な観点から、
それぞれおこなわれた。
すべての証言がおわったあと検事による最終弁論がおこなわれ、
それをうけて名誉判事団が宣告をおこなった。
宣告の内容は、検事の主張をみとめ、
内戦中、女性への性暴力が他の暴力とともに行使されたこと、
それがグアテマラ刑法にてらして違法な行為であったこと、
加害者は軍兵士・警官・あるいは国家権力の命令による
軍コミッショナーや自警団員などで、その加害行為の責任は国家にあること、
それらの犯罪が現在に至るまで調査も処罰もされていないことで
グアテマラにおける不処罰・免責がつづいていること、を指摘。
内戦のもう一方であるゲリラに対しても、
国際人権法を順守せず、性暴力を犯したことも指摘した。
戦時下における女性への性暴力は女性と男性の不平等の結果で、
内戦がおわった現在も女性差別がつづいていること、
性暴力の被害女性が正義を獲得し被害の補償をうけるための
国家の措置が不十分かつ適切でなかったこと、
内戦中の女性への性暴力は普遍的人権の侵害であることなども指摘。
グアテマラ国家に対し、国際刑事裁判所ローマ規程を批准し、
免責・不処罰をおわらせ、裁判を適切にすすめ、
被害者に十分な補償をおこなうよう勧告した。
宣告が読みあげられるとみな総立ちになり、
会場は大きな拍手につつまれ、すごい熱気。
一部ではあっても、女性たちの正義と尊厳が回復された瞬間だった。
…
エンパワーされたのは、サバイバー女性だけではない。
この法廷をささえた多くの女性たちも、グアテマラ史上
初めての性暴力についての民衆法廷をひらいたことで
さらにエンパワーされた。
ペルーやコロンビアといった、軍事紛争があった
あるいはいまだ続いている国の女性たち、
国際社会で性暴力根絶・ジェンダー正義のために
闘っている女性たちと協力していくネットワークが
強化されたことも成果のひとつだ。
今回の法廷の進行役をつとめ、法廷の共催団体である
「世界を変える女たち」の創立者であるルシア・モランさんによると、
被害者女性のなかで「裁判をおこしたい」と強く希望する女性が
何人もでてきており、今後、訴訟をおこす可能性を検討してゆくとのこと。
(報告ここまで。文意に影響のない範囲で若干編集した)
*******
グアテマラ全国から、
性暴力の被害をうけた100人ものマヤ女性が
この法廷で証言するために首都にあつまったとか。
そのことだけでもスゴイと思っていたが、
この報告をよんであらためてその念を強くした。
背負わされたシワ寄せゆえに
問題の存在/所在をしる彼女たち。
弱さと強さが同居している。
ちなみに、法廷は
グアテマラ全国女性連合UNAMG、
社会心理行動と共同体研究グループ(ECAP)、
先住民族女性組織「連れ合いを奪われた女たちの会(コナビグア)」、
女性弁護士組織「世界を変える女たち」、
女性新聞である「ラ・クエルダ」
によって共同で開催された。
民衆法廷の宣告と法廷の証言サマリーは
以下のサイトで読むことができるそう(スペイン語)。
http://www.scribd.com/doc/27911477/Pronunciamiento-Tribunal-de-Conciencia-en-Guatemala (宣告)
http://unamg.org/?cat=13 (証言サマリー)