上海灯蛾(上田早夕里/双葉社)
2022年1月に、この作者の『破滅の王』を紹介した。細菌兵器を主題とする国際謀略小説で、第二次世界大戦前から終戦までの上海を舞台としていた。
時代と場所はほぼ同じ設定だが、今作の主題は阿片。
序章で死体を川に沈めるシーンが描かれる。上海、そして阿片という灯火に誘引される悪人たちの物語だから、ハピーエンドにならないのは当然か。
第一章では、雑貨屋を営む主人公のもとに阿片を売りたいという女性が現れる。それを端緒に、阿片をめぐる悪人たちの暗闘が繰り広げられる。絶望的な貧困から逃れて上海にたどりつき、のしあがろうとする若者。裏社会を支配する闇の組織。そして大日本帝国陸軍。暴力的な場面と、多数の死体。
このような道具立てや、500ページを超える分量にもかかわらず、物語は思いのほか軽快に進み、予想したよりはずっと読みやすかった。ノワールあるいはピカレスクという言葉が思い浮かぶが、どうもしっくりこない。ここは単に日本語で悪漢小説と呼びたい。
登場人物の誰にも感情移入できない、けれど読後感が悪くないのは、主要人物の己を曲げない生き方の所為だろうか。
この作者のSFを、まだ読んでいない。
2022年1月に、この作者の『破滅の王』を紹介した。細菌兵器を主題とする国際謀略小説で、第二次世界大戦前から終戦までの上海を舞台としていた。
時代と場所はほぼ同じ設定だが、今作の主題は阿片。
序章で死体を川に沈めるシーンが描かれる。上海、そして阿片という灯火に誘引される悪人たちの物語だから、ハピーエンドにならないのは当然か。
第一章では、雑貨屋を営む主人公のもとに阿片を売りたいという女性が現れる。それを端緒に、阿片をめぐる悪人たちの暗闘が繰り広げられる。絶望的な貧困から逃れて上海にたどりつき、のしあがろうとする若者。裏社会を支配する闇の組織。そして大日本帝国陸軍。暴力的な場面と、多数の死体。
このような道具立てや、500ページを超える分量にもかかわらず、物語は思いのほか軽快に進み、予想したよりはずっと読みやすかった。ノワールあるいはピカレスクという言葉が思い浮かぶが、どうもしっくりこない。ここは単に日本語で悪漢小説と呼びたい。
登場人物の誰にも感情移入できない、けれど読後感が悪くないのは、主要人物の己を曲げない生き方の所為だろうか。
この作者のSFを、まだ読んでいない。
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