理不尽な進化(吉川浩満/ちくま文庫)
本屋で見かけて、一目、面白そうだと思った。サブタイトルに、「遺伝子と運のあいだ」とあるから、ネオダーウィズムに対して若干の異議申し立てを行う趣旨の本かと思っていたら、とてもそんな代物ではなかった。
まず、これまで地球に現れた生物のうち、99.9%がすでに絶滅していることが強調される。次に、学問としての進化論と、一般に認識されている進化論には根本的な断絶がある、と説く。世間に流布しているのは、今もなお、古い社会進化論のままであり、それは学問の世界では過去の遺物に過ぎない。
さらに、進化論の大家であるグールドとドーキンスの論争を取り上げ、ドーキンスが勝利することによって到達した進化論の現在を克明に記述する。
しかし、本書独特の魅力は、その先にある。グールドの蹉跌の原因を深く分析しながら、「説明」と「理解」、あるいは「方法」と「真理」、さらにいえば、アートとサイエンスの関係の今日的意義を描写してみせる。
この作品は、学術書ではなく、筆者が主張するとおり、進化論を題材にしたエッセーだ。その意図は、歴史と自己に対する私たちの認識のあり方を問うものだ。見開きページの左端にある筆者の注記は、膨大な推奨読書リストになっている。
もちろん、その中に私が読んだことのあるものはなかったし、これからも多分ないだろう。
この本も面白そうですね。
絶滅の視点から見た進化とは?
益々興味をそそりそうです。