もう2ヶ月も前になってしまいましたが、去る7月24日日曜日に1級建築士学科の試験がありました。
今年は2級の製図と1級の製図を両方見ていたので、夏中あわあわしていて学科の総評、解答を掲載することができず申し訳ありませんでした。
すでに試験元から合格発表とともに基準点などの発表がありました。
昨年2021年の学科試験が難しく合格率15.2%だったのに対して、2022年は合格率が21.0%と6.2ポイントも増え、また合格基準点も、87点から91点に4点あがりました。つまり総じて簡単な問題だったということです。
構造に関しても、昨年に比べると過去問率が高く、得点しやすい問題だったといえるでしょう。
解答解説は私が独自に公開しているものですので、試験実施機関、予備校等とは関係がありませんので、その点ご了承ください。
No.1 全塑性モーメント 答2
全塑性モーメントの色塗り問題は簡単ですが、ちょっとひねってありました。色塗りすると変な形になってしまうので、あれれ?と思った方もいらしたかも。しかし、やり方は同じですし、同じような変な形に分かれてしまう問題もどこかでやった記憶が、、、解説は、言葉では説明しにくいので、画像を貼っておきます。
別解の公式は直前講習でもやったので、使えているといいのですが、、、
No.2 たわみの大小関係 答4
これはよく出る問題ですね!断面2次モーメントを単純化して公式に入れ込むだけなのでみなさんできたでしょう。
No.3 静定構造物の荷重の比 答3
これは今年2級ででるのではないかと予測していた問題ですが、1級で出るとは。MA=0で式をたてるだけなので簡単ですね!
No.4 崩壊荷重 答3
不適当なものを選ぶ問題。MC=Mp/2なので0ではない。これも山形なのであれれ、と思うかもしれませんが、特に難しくはないですね。
No.5 トラス 答1
軸方向力を求めるだけでなく、大小関係を聞いているのがちょっと目新しいですが、軸力が求められれば、難しくはないですね。
No.6 不静定構造物のせん断力図 答4
平成25年の合成ラーメンに似ている問題。こんなのもう出ないんじゃない?と思っていたら、、、やられました。斜め材の軸力を外力のように考え、Pの作用している自由端をローラー、Pを反力のように考えて梁の剪断力を考えるとQ図が書けます。
No.7 ラーメンの固有周期の大小関係 答1
Bが3本柱のラーメンなので一瞬びっくりしますが、剛性を出す際に3本分で3倍すればいいだけですね。あとはいつもの解き方で解けたでしょう。
No.8 積雪荷重 答4
3の選択肢が、新しく施行された告示からの出題で、去年出るぞ出るぞと言っていて先に2級で出たやつですね。埼玉という多雪区域以外で大きな被害が出たことをうけての告示ですので、3は正しい選択肢です。4の多雪区域の定義は、「積雪の初終間日数の平年値が30日以上または垂直積雪量が1m以上」の区域ですね。
No.9 木造 答2
通し柱と胴差の仕口に使う金物は「かね折金物」で、「かど金物」ではありません。「かど金物」は隅柱と土台など、引張を受ける柱と横架材の接合に使用します。
No.8やNo.9は、あれ?2級の問題かな?と思うような内容ですね。かえって1級では金物の学習などはあまりやっていなかったので、木造のお仕事をされていない方は迷ったかもしれませんが、他の3選択肢が明らかに○なので、消去法で選べたのではないでしょうか?
No.10 木造 壁量計算 答2
これも簡単ですね!壁倍率は5がMaxで5以上は5を使用するというのは1級でも2級でも基本事項ですね。
No.11 鉄筋コンクリート 配筋 答2
平成28年の問題と令和1年の問題に似ていますね。しかし片側床スラブ付き梁のあばら筋の定着のスラブがない方は135度以上(通常通り)というのは、過去問ではやっていないかも。講義ではやりましたが、、、
No.12 鉄筋コンクリート 答2
クリープを起こすのはコンクリートなので、圧縮鉄筋の負担する圧縮力を増やせば、コンクリートの負担する圧縮力が減り、コンクリートがクリープ変形しにくくなる、というのは何度もやった記憶、、、。なので、「減らす」でなく「増やす」が正しいですね。4の選択肢は初出で「フィーレンディール架構」ってなんだよ?!って思いますが、2が明らかにバツなので、大丈夫だったでしょう。
ちなみにフィーレンディール架構というのは、トラスから斜め材を抜いたような、梯子状の架構だそうです。
No.13 鉄筋コンクリート 許容応力度計算 答3
梁の上端筋はコンクリートが自重によって下に引っ張られて鉄筋の下に空隙ができがちなので、下端筋よりも付着力が劣ります。なので、「許容付着応力度」(付着に対して持ってる力)は小さい値になります。
1の選択肢は2m以下というところをきちんと読めていたかどうか。2mを超える片持ちバルコニーは鉛直震度を1.0z以上として計算する、はみなさん覚えていたはず。超えていないので割増しなくていいということですね。
2の選択肢は、釣り合い鉄筋比以下というところと短期許容曲げモーメントというところに印を付けられていたかどうか?長期はSD345もSD390も許容応力度が同じなので、変更しても許容曲げモーメントは大きくできませんが、短期は呼び名の通りに大きくなるので、許容曲げモーメントを大きくすることができるのです。ややこしポイントとして直前期にもやった記憶がありますよ!
No.14 鉄筋コンクリート 保有水平耐力 答3
柱の終局剪断耐力は、軸方向圧縮応力度が0.4Fc以下の範囲で、大きくなると大きくなる。耐力は大きくなるが、圧縮破壊しやすくなるので、靭性は低下する。
これは平成27年の問題でも○の選択肢で出題されていますね。
1の選択肢は、さらっと読むとなんのこっちゃ、と思いますが、普通はスラブは上についているので、圧縮側、スラブ筋は圧縮鉄筋として働きます。なので、終局曲げモーメントは引張鉄筋で決まるので、関係ない、ということになりますが、引張側にスラブが取り付く、つまり、片持ちスラブのような状態で、上側引張の場合、スラブ筋が引張鉄筋として働くので、終局曲げモーメントに関与する、つまりスラブ筋が多くなれば、終局曲げモーメントも大きくなる、ということで、◯。
2の選択肢のシアスパン比の問題は、終局剪断耐力の公式の中のαが、割増係数であり、αはシアスパン比が小さいほど大きくなるので、○。(テキストp170)
この辺はややこしくて難しい部分ですね。ちょっと難しかったかも。
No.15 鉄骨構造 答4
これもちょっと難しいですね。しかし1、2、3の選択肢は過去問でも出題があったので、消去法で4が選べたのではないでしょうか?
1も、言っている内容は過去問でやっている内容ですが、言い回しが新しいので、戸惑われたかもしれませんね。要は、鉄骨造の梁の使用上の支障がないことの確認とは、
規定を満足していれば確認不要(梁せいがスパンの1/15を超えていれば良い)だが、
今回は1/15以下なので、たわみがスパンの1/300以下であることを確かめたよ、ということを言っています。1/300以下という数字が出てきた方がああ!と思い当たる方が多いかも。
つまりδ≦L/300で覚えている式を、δ/L≦1/300
たわみをスパンで除した値が所定の値(1/300)以下であることを確かめた。
となるわけですね。日本語問題でした。
4は、簡単にいうと、「保有耐力横補剛したから、この梁は塑性変形能力が確保されたよ」と言っているけど、じゃあ、局部座屈の検討はいらないの?ということかと。横座屈だけでなく、局部座屈の検討もしないと、塑性変形能力が確保されたとはいいがたいので、バツ。
No.16 鉄骨造 答2
これは過去問が多いので、できたと思います。ただ、正答肢の2は、力学で覚えた公式を応用できたかどうか。
固有振動数は固有周期が長ければ少なくなる。T=2π√m/kなので、K=3EI/h^3
つまり断面2次モーメントIが小さくなる→kが小さくなる→Tが大きくなる→振動数は少なくなる。(低くなる)ので、高くなるはバツ。
No.17 鉄骨造 答1
これもちょっと難しいですね。2−4の選択肢は過去問で○と判断できるので、消去法で1が選べますが、正答肢の1がちょっとむずいです。
梁の許容応力度の計算は、λ=Lb√iy'によって決まり、λが大きいとfbは小さく、λが小さいとfbは大きくなります。同じλとするためには、iy'が大きければ、Lbを小さくできます。Lbというのが、ここでいう横補剛間隔なので、iy'が大きければ補剛数は少なくなり、iy' が小さければ補剛数は多くなります。ではiy'とはなんなのか?梁せいの1/6のところで切断した端っこの部分のy軸周りの断面2次半径になります。断面2次半径i=√I/Aなので、同じ断面積なら、断面2次モーメントが大きいと断面2次半径が大きくなります。y軸周りなので、幅が広い方が断面2次モーメントが大きくなりますよね?というわけで、
フランジの幅が広く薄いほうが、iy'が大きい→補剛数は少ない
ので、「多くなる」はバツ。
No.18 鉄骨造接合部 答4
これは過去問なので大丈夫でしょう。
4の選択肢の片側にというところにアンダーラインが入っているかどうか?片側にしか筋交が入らない時はバランスが悪いので、偏心の影響を考慮して突出部の1/2を無効とした断面積を有効断面積とするので、ボルトの穴の分を引いただけではダメですよね?
1の選択肢も過去問でよく出ますが、ややこしいところですが、「パス間温度」ときたら「さます」→規定値より小さくなるように管理、で○です。「予熱」ときたら「あっためる」→規定値より大きくなるように管理、でしたね!
No.19 地盤・基礎 答3
これは簡単でしょう。「液状化のおそれがある」ときには、基準法の表の値は使えませんね。ないときには使えます。
No.20 土質・地盤調査 答2
これも簡単ですね!圧密試験は圧密沈下に対する検討ですから、砂ではなく粘土ですね!
No.21 杭基礎 答3
杭基礎に作用する地震荷重は、通常は、上部構造からの水平力が主であるが、厚い軟弱層中の杭や、剛性が急変する層などの場合は、地盤の変位により地盤から直接受ける荷重の影響が大きくなることがある。(テキストp236)
なので、3の選択肢の「地盤の水平変位により生じる応力を考慮しなくてよい」はバツ。
古い問題では、平成20年に
「杭を軟弱地盤に計画する場合は、地震時の杭頭慣性力と地盤変位との影響を重ね合わせて設計を行う方法がある」○が出題されています。
No.22 プレストレストコンクリート構造 答4
これは簡単ですね。防錆材により被覆された緊張材=アンボンドですから、アンボンドの時はグラウト不要です。
2の選択肢の減衰特性を表す数値というのは、Fhのことなので、靭性が大きい=Fhが小さいとなります。普通のRC梁とPC梁でどちらが靭性が大きいのか?靭性が大きい=脆性破壊しにくい、ですから、引張に強くヒビが入らないPC梁の方が靭性が大きい=Fhが小さいで○ですね。
No.23 各種構造 答1
これはSRCの例の表の問題ですね。柱の短期の剪断力はSとRC「それぞれ」の部分になりますから、和ではないですね。あの表が書けたかどうか?
2の選択肢は、テキストp196に柱梁接合部の納まり図があるので、確認してください。フランジには貫通孔を開けてはならないのですが、ウェブには開けていいのでした。
No.24 免震・制振・耐震改修 答2
建物の固有周期を長くして地震力を低減するのは「免震」であり、「制振」ではないですね。
No.25 耐震設計 答3
これも簡単でしたね。
Fesは偏心率、剛性率がクリアできない時のペナルティで、クリアできていない階だけ課されるので、全階共通ではなく、階ごとに計算するのでした。
No.26 構造計画 答4
これも簡単ですね。Dsは靭性が大きいほど小さくできる係数でした。
No.27 木材 答1
弾性係数とはヤング係数のことなので、曲がりにくさ、硬さです。水分が少なると木は硬くなって曲がりにくくなり、水分が多ければ、柔らかく曲がりやすいですよね?なので、含水率が小さくなると弾性係数は大きくなります。
No.28 コンクリート 答4
これも簡単ですね!水和熱は水和反応するセメントが多い時に大きくなるので、セメントが多いと水和熱ひび割れしやすいです。また、乾燥収縮も、骨材に比べてセメントの方が粒が細かいので、伸び縮みしやすいですね。
No.29 鋼材 答3
これも簡単ですね。C種は一番いい材料で、板厚方向の絞り値の制限をクリアした材なので、板厚方向の引張に強いのでダイアフラムなど板厚方向に大きな引張がかかる部分に使用することができるのでした。
No.30 構造計画・構造設計 答1
これも直前でやりましたね!梁剛性の算定の梁というところにマークがいれられているかどうか?柱はスリットによって壁と縁が切れるので、腰壁の影響がなくなりますが、梁はくっついたままなので、影響を考慮しなくてはなりません。
今年は2級も1級も構造と法規が簡単という異例の年でした。
学科合格者が去年に比べて1457人も多いので、製図の試験が難しくなるのかも???
製図も佳境に入ってきましたね!
学科を突破された方、あと2週間、ラストスパートを頑張りましょう。
惜しくも学科を突破できなかった方、来年は合格できるように、今から過去問をおさらいしておきましょうね!
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