Sakita Blog

1級建築士事務所Sakita Space Design主宰
崎田由紀のブログ。

令和5年度(2023年) 2級建築士学科試験 構造の解説

2023-09-19 13:51:28 | 建築士試験

令和5年度(2023年)2級建築士学科試験 構造の解説

例年ですと試験終了後1週間以内くらいに掲載していたのですが、1級の学科試験、2級の製図試験、、、と続きドタバタしてしまい、すっかり遅くなってしまいました。

7月2日に行われ、8月21日にすでに合格発表、正答発表がありましたが、まとめと解説をしたいと思います。

今年の2級建築士学科試験の結果としては、合格率35%という、過去6年の中で最も合格率の低い、難しい試験だっと言えるでしょう。特に構造と施工の難易度が高かった印象です。
構造は、力学がとても難しかったと思います。1級合格者でも2問間違えたと言っていました。しかし、一般構造、材料は過去問ベースの問題が多かったため、基準点は下がらず、13点でした。昨年令和4年の構造がとても簡単で、基準点が14点に上がってしまったので、今年は力学で締めてきた感じですが、ちょっと難しくしすぎたと思います。以下各問題の解説を行います。

 

No.1 断面1次モーメントと断面2次モーメントの複合問題 初出題 難問 正答肢 2

問題の日本語文「図心を通りX軸に平行な図心軸に関する断面二次モーメントの値として、正しいものはどれか」をしっかりと読んでいないと、図だけ見て、X軸の断面2次モーメントを求めてしまうと、5の160cm^4を選んでしまいます。
まず断面1次モーメントの問題のようにして図心軸を求め、それに対する断面2次モーメントを求める必要があります。
L型の断面は、同じ6x2の断面積の2つの長方形に分割できるので、図心軸の位置は、(3+1)/2=2でO点よりも2cm上にあることがすぐにわかります。
次が少々問題で、この図心軸に対して、2つの長方形の重心がずれています。ここからは2種類の解法があり、一つは、任意軸の断面2次モーメントの公式を使う方法。
Ix=BH^3/12+BHxy0^2
縦長の方の長方形のIx=2x6^3/12+2x6x1x1=48
横長の方の長方形のIx=6x2^3/12+6x2x1x1=16
両方を足してIx=64となります。
ただ、この公式はなるべく使わなくて良いように、重心軸の長方形に分割してやろう、と指導していたので、ここで困ってしまった方が多かったかもしれません。実はパズルで解くこともできます。その別解がこちらになります。
L型の断面を、図心の上にある2x4の長方形と、図心の下にある8x2の長方形に分けます。
2x4の長方形を図心軸に対して線対称に伸ばして、無理やり図心軸の2x8の長方形として、その半分なので1/2するという方法です。
2x4の長方形のIx=2x8^3/12x1/2=64/3
8x2の長方形のIx=8x4^3/12x1/2=192/3
両方を足してIx=64と同じ値になります。

 

No.2  せん断応力度の変形問題、荷重を求めよ 初出題 正答肢3

こちらも初出題です。今までせん断応力度を求める問題はありましたが、その変形問題は初出題です。しかし、公式が与えられていたので、曲げ応力度の変形問題を求める求め方の応用で正解できたのではないでしょうか?
τmax=1.5xQ/Aが許容せん断応力度1N/㎟を超えない、つまりイコールになる時の荷重Pを求めるわけなので、
1.5xQmax/A=1N/㎟ この式を変形して、Qmax=Ax1N/㎟/1.5
Qmax=V=1/2P、A=300x500=15x10^4を代入して P=200000N=200KN

 

No.3 単純梁の一部に等分布荷重が作用する時のMmax  初出題 正答肢4

こちらも初出題です。今まで等分布荷重が出題される時は、梁全体に作用するパターンばかりだったので、Mmax=wl^2/8の公式を覚えよ、と指導していました。しかし一部分にしか作用していないので、どこがMmaxになるのかが、みなさんわからずに、公式に入れてしまった5を選んだり、等分布の間だけの長さで公式に入れて1を選んでしまったりしたのではないでしょうか?
この問題を解くには、「Q=0のところでMmaxになる」という知識が必要でした。思えば最近の過去問で、Q=0はどこか?という問題が出題されていましたよね?それがこの問題の伏線になっていた、とも言えます。
なので、まず、Q=0の点を探します。反力は求められるでしょうから、釣り合い式、あるいは長さの比を使ってVA=8kN、VB=16kNを出します。次にQ=0の点を求めるには2つの方法があり、Q図を書いて、図形問題として求める方法と、Q=0になるX点を仮定して算式で求める方法です。
今回算式で求めると、X点の右側を取り出して、X点からB点までの距離をxとすると、
Qx=-2x+16=0となり、x=8mとわかります。X点がわかれば、
そこを回転中心にしてMx右=2x8x4-16x8=-64
よってMmax=64kN・m(下側引張)

 

No.4 単純梁系ラーメンに等分布荷重が2つ作用した場合の反力と曲げモーメント 過去発展 正答肢5

単純梁系ラーメンに集中荷重が2つ(鉛直と水平)作用した時の反力や曲げモーメント、せん断力などは過去出題があるので、等分布荷重を集中荷重に置き換えができれば、それほど難しくはないと思われますが、等分布の途中の点を聞かれているので、切断図に等分布を書き忘れると、間違えます。また左がローラーで右がピンなので、水平反力を忘れると間違えますね。何気にトラップが仕込まれているので、注意しましょう。

 

No.5 平行弦トラス 正答肢2

最近は軸力0の部材を探して、、、という問題が続いたのですが、正統派?の切断法で解く問題が出ました。3つの軸力を出さねばならないので面倒ですね。こういう時はまず、選択肢をよく観察して、どの部材から解くべきか考えましょう。AとBは引張か圧縮かがわかれば選べますが、Bに至っては4つが同じ選択肢なので、求めても正答に近付きにくいでしょう。それに比べてCは、符号も値も同じものは1と5だけで、他は全部異なるので、こういう面倒くさい問題の時は、一番答がばらけているものから出すのが得策ですね。
案の定切断法でNcを出すと+4√3/3となり、2が選べます。ただ、Cを求める時、回転中心(AとBの交点)からCまでの距離が書いていないので、三角比から距離√3mを出せるか?というのもポイントですね。

 

No.6  座屈 正答肢4

これは過去何度も出ているパターンですね。みなさんできたのではないでしょうか?ただ、座屈の問題の中では一番計算量が多い、面倒臭い問題ですよね。計算ミスに気をつけて、正答できたでしょうか?

 

No.7  荷重・外力 正答肢5

アマビエちゃんグラフの問題ですね。Rtが大きいのは第三種(軟弱)>第二種(普通)>第一種(硬質)の順番ですよね。他の選択肢も過去頻出選択肢として直前講習でやったものばかりでしたね。

 

No.8  多雪区域内の暴風時の応力の組み合わせ 正答肢2

これも直前で必ず覚えておくようにお伝えしたものですので、みなさんできたと思います。文章の「多雪区域内」「暴風時」というところにきちんとアンダーラインが引けていれば、問題ないですよね。暴風時は2つあり、G+P+Wか、G+P+0.35S+Wかのどちらかですが、後者しか選択肢にないので、2が正答となります。

 

No.9  地盤及び基礎 正答肢1

これも直前でやっていた頻出選択肢ばかりですので、大丈夫だったのではないでしょうか?あえて言えば4と5の選択肢がそれほど頻出ではなかったかもしれませんね。

 

No.10  木造部材名称 初出題 正答肢3

飛び梁ではなく、小屋筋かいの説明です。他の選択肢が過去頻出ですので、消去法で選べたのではないでしょうか?

 

No.11 木造 接合 正答肢3

4の選択肢は初出題でしたが、正答肢は過去問ですので、大丈夫だったでしょう。

 

No.12  木造 構造設計 正答肢2

1/2以下ではなく1/3以下ですね。これも直前でやったので大丈夫だったでしょう。ただ、他の選択肢(1、4)が初出題だったので、ドキッとしたかもしれませんね。

 

No.13 補強コンクリートブロック造 正答肢4

これも全て過去問ですので、大丈夫だったでしょう。
定着長さはフックなしで40d以上、フック付きで30d以上必要なので、フックがついていたとしても
30x13=390以上必要なので、300はNGですね。

 

No.14 鉄筋コンクリート構造 正答肢1

これも直前で覚えてね、と言っていた仕様規定の鉄筋比の問題なので、楽勝だったでしょう。ただ、5の選択肢は初出題でした。

 

No.15  鉄筋コンクリート構造 継手 正答肢4

これも過去問ですね。M図が書ければわかりますよね。

 

No.16  鉄骨構造 正答肢3

選択肢2と3は直前でも確認した頻出項目なので、大丈夫かと思いますが、選択肢1、4、5は初出題でしょう。4は1級建築士の問題ですね。

 

No.17  鉄骨構造 接合 正答肢3

これはどの選択肢も過去問ですので、大丈夫だったでしょう。

 

No.18 耐震設計、構造計画 正答肢1

1の選択肢は、直前でも確認した過去頻出問題なので、大丈夫かと思いますが、他の2、3、4、5の選択肢は1級の内容のものですね。冷静に1を選べたら良いのですが。
これは今後1級レベルの問題が出題される可能性があるということなのでしょうか?でも、2級建築士の設計できる規模の建築物の話というよりは、大きな建物の話なんですけどね、、、

 

No.19  既存建築物の耐震診断、耐震補強 正答肢4

5の選択肢は初出題ですが、他は過去問で、直前でも確認したので、大丈夫だったでしょう。

 

No.20  木材及び木質材料 正答肢5

5はインシュレーションボード(軟質繊維板)の説明ではなく、パーティクルボードの説明ですね。これは頻出過去問なので、大丈夫でしたでしょう。他の選択肢もみな過去問でした。

 

No.21 コンクリート 正答肢1

これはどの選択肢も頻出過去問ですので、大丈夫でしたでしょう。

 

No.22 コンクリート材料 正答肢1

これもどの選択肢も頻出過去問ですので、大丈夫でしたでしょう。

 

No.23 鋼材 正答肢2

これもどの選択肢も頻出過去問ですので、大丈夫でしたでしょう。

 

No.24 建築材料 正答肢5

3と5が初出題で、初出題が正答肢というレアケースだったので、難問でした。
スギとベイマツを比べると、引張、圧縮、曲げ、せん断、いずれの許容応力度もスギよりもベイマツの方が大きいのです。

 

No.25 建築材料 正答肢2

1の選択肢がいやらしいですね。「木毛」で「木片を」と書いてあるので、これが間違いでは?と思わせておいて、「ひも状の」なのでこれは正しいのです。明らかに引っ掛けですよね。

2の選択肢の「浴室の」というところを読み飛ばさずにチェックしていると、2が選べると思います。

 

以上、主に力学中心に解説しました。
試験元の解答番号や、合格率はこちら

 



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